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1.似たもの同士
1-3.秘密の交流会
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掴んだままの腕を引きずるようにして橘は旧校舎の中へ入っていく。これ以上逃げるつもりはないようで安心しながら橘の後に続いた。数年前に新校舎が建ってから部活棟として使われているこの旧校舎は授業中に人がいることはない。橘は慣れた足取りで立て看板のない教室の前まで来た。橘が一度引き戸を引くが当然鍵は閉まっている。しかしそのままドアをガタガタと揺すり始め、数秒後にガチャン、と金属音がした。
「……手慣れすぎじゃない?」
「うっさい」
扉を開け教室の中に入る。教室の後ろ半分に追いやられた机から手近な椅子を一脚持ってきて座ると、橘も同じように座った。椅子に腰掛け俯き続ける橘になんと声を掛けたらいいものか悩んでいると、大きく深呼吸した橘が立ち上がった。
「お、俺がオタクだってこと……、秘密に、してもらえませんか」
言いながら直角に腰を曲げて懇願する橘に面食らう。もともと橘がオタクであろうがなかろうが別にどうこうするつもりなんてなかった。しかし、息をつまらせながら言う姿から事情があると察することは容易で、浅はかなことをしてしまったんだな、という実感が湧く。
「橘、顔上げて」
俺の声にゆっくりと顔を上げた橘は眉根を寄せて俺の様子をうかがうように見つめてくる。
「もし、お前がオタクだったら正直嬉しいなって思ったんだよ。急に話しかけてくれるようになったじゃん? 理由分かんなくて若干不安でさ。もしかしたらって、思ったから。でも、嫌な思いさせたよな。ごめん」
「……う、れしい?」
目を丸くして首を傾げる橘に頷き返してやると橘は顎に手を当てて何やら思案を始めた。何度か口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した末にまっすぐ視線を合わせてくる。
「俺、さ。その……いわゆる声オタ……なんだよ。好きな声優さんが出てるアニメとかゲームとかに触る感じ。で、ラジオとか聞いたり、雑誌買ってインタビュー読んだりして……みたいな」
「いいじゃん。ちなみに誰好きなん?」
「あ、え、っと……よく北見がやってるゲームのさ、このキャラの声優さん」
向けられた画面に表示されていたのは俺の推しの兄だった。このキャラは女性人気が高く、声優さんも今大人気の人だった記憶がある。先入観で女性の名前が出ると思い込んでいたから少し驚くけれど、橘が好きだという声優さんは俺も正直かなり好きだ。
「じゃあ橘このゲームやってんの?」
「ストーリーは全部追ってるよ。イベランとかはできてないけど……」
「おいマジかよ早く言えよ‼」
「……手慣れすぎじゃない?」
「うっさい」
扉を開け教室の中に入る。教室の後ろ半分に追いやられた机から手近な椅子を一脚持ってきて座ると、橘も同じように座った。椅子に腰掛け俯き続ける橘になんと声を掛けたらいいものか悩んでいると、大きく深呼吸した橘が立ち上がった。
「お、俺がオタクだってこと……、秘密に、してもらえませんか」
言いながら直角に腰を曲げて懇願する橘に面食らう。もともと橘がオタクであろうがなかろうが別にどうこうするつもりなんてなかった。しかし、息をつまらせながら言う姿から事情があると察することは容易で、浅はかなことをしてしまったんだな、という実感が湧く。
「橘、顔上げて」
俺の声にゆっくりと顔を上げた橘は眉根を寄せて俺の様子をうかがうように見つめてくる。
「もし、お前がオタクだったら正直嬉しいなって思ったんだよ。急に話しかけてくれるようになったじゃん? 理由分かんなくて若干不安でさ。もしかしたらって、思ったから。でも、嫌な思いさせたよな。ごめん」
「……う、れしい?」
目を丸くして首を傾げる橘に頷き返してやると橘は顎に手を当てて何やら思案を始めた。何度か口を開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した末にまっすぐ視線を合わせてくる。
「俺、さ。その……いわゆる声オタ……なんだよ。好きな声優さんが出てるアニメとかゲームとかに触る感じ。で、ラジオとか聞いたり、雑誌買ってインタビュー読んだりして……みたいな」
「いいじゃん。ちなみに誰好きなん?」
「あ、え、っと……よく北見がやってるゲームのさ、このキャラの声優さん」
向けられた画面に表示されていたのは俺の推しの兄だった。このキャラは女性人気が高く、声優さんも今大人気の人だった記憶がある。先入観で女性の名前が出ると思い込んでいたから少し驚くけれど、橘が好きだという声優さんは俺も正直かなり好きだ。
「じゃあ橘このゲームやってんの?」
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「おいマジかよ早く言えよ‼」
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