見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

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【第75話】帝国色

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 大陸会議当日の朝、宿のロビーに集まった俺達は午後に行われる大陸会議に向けて、最後の話し合いをしていた。各国の代表が集まる場所だから、どれだけ備えていても足りないぐらいだ。

 準備を整えた俺達は大陸会議が行われる馬鹿でかい礼拝堂を訪れた。そこでは軽鎧に身を包んだ帝国兵が扉の前で待機しており俺達の身分を確認した後、会議が行われる部屋へ案内してくれた。

 会議部屋では既に到着した各国の代表が集まっていた、その中にはヘカトンケイルの町長やジークフリートの代表アイアンさんの姿もあった。アイアンとは定期的に会っているものの、ヘカトンケイルの町長と会うのは本当に久しぶりだ。

 ヘカトンケイルの町長は俺の存在を確認すると開口一番謝ってきた。

「ガラルド君、久しぶりだね、あの時は旅の始まりを不快なものにさせてしまって本当に申し訳ない」

 確かにヘカトンケイルを旅立ったあの時、民衆の何割かがディアトイル出身の俺を叩いていた。しかし、逆に俺の事を応援してくれていた人も多くいたから俺的には不快どころか嬉しい誤算だったのだけれど、町長は凄く気にしてくれているようだ。

「町の代表とはいえ、町長一人でどうにかできるほどディアトイルへの差別意識は軽くないさ、だから謝らないでくれ。それに新聞やヒノミを経由して知ったのだが、今はヘカトンケイルを筆頭に少しずつ差別的な人間も減ってきていると聞いているし、町長達には感謝しているぐらいさ」

「そう言ってもらえて救われたよ、これからも少しずつ変えていくから、いつかまたヘカトンケイルへ遊びに来ておくれ、歓迎するよ」

「ああ、いつか必ず」

 俺と町長は固い握手を交わし、各々の席へと戻った。それから十分ほど経った頃だろうか、会議の開始時刻の少し前にモードレッド達帝国の人間が現れ、大陸会議が始まった。

 主催国である帝国が会議を進行するとのことで、モードレッドが最初に挨拶を始めた。

「各国代表の方々、今日の為に帝国まで足を運んでいただき感謝している。早速だが大陸会議を始めたいと思う。まずはモンストル大陸における食糧問題と天災についてだが――――」

 そこからは各国の代表が様々な問題について話し合った。国境問題・食糧問題・天災への対処・新しい大陸則の提案・交易路の整備などなど聞いているだけで頭がパンクしそうな難しい話を休みなく続けていた。一応俺もドライアド復興計画の中心人物だから学ばなければいけない事も多いのだが、頭が痛くなる一方だった。

 真面目な話が続いていた影響からか、途中で休憩を挟むことになったのだが、休憩時間は各国の代表がそれぞれ自国の自慢話で盛り上がっていた。本当に施政に熱心なんだなと感心するばかりだ。

 そんな中、どこかの国の長がジークフリートについての話を始めた。

「そう言えば実質的にジークフリートを統治していたビエード殿が亡くなられて、部下である帝国兵の方々もリングウォルドへお戻りになられたらしいですな。その後のジークフリートの調子はどうですかなラナンキュラ殿」

 帝国のモードレッドもいるというのにとんでもなく気まずい話題を投げてきやがった。俺達シンバード組はどう返事するのか固唾を呑んで見守っていたが、アイアンは至って冷静に言葉を返す。

「帝国が憎い訳ではないというのを前提で聞いてもらいたいのですが、ビエード殿の施政は我々ジークフリートの民に全く合いませんでした。その結果、反抗組織が出来上がりハンターを巻き込む抗争になってしまいましたが、お互い誰も人を殺めてはいません。ですので、我々が自治を取り戻した後もいざこざが起こる事は無く、平和に暮らしておりますよ。ビエード殿が事故で亡くなったのは残念ですが」

 あくまでビエードのやり方が良くなかったという言い方をしたことで帝国に角が立たずに済んだと思う、流石アイアンさんだ。そこからは休憩時間もそっちのけで各国の魔獣活性化について話し合いが始まった。

 話を聞く限りほとんどの国で魔獣が強くなっているらしく、数も増えているようだ。今後どのような対策を打っていくべきかを話し合っていると、モードレッドがおもむろに咳ばらいをした後、自身の考えを述べた。

「配下のビエードは統治に失敗したものの、それでもジークフリートから多くの兵器を生み出す事ができた。他の配下も魔獣に襲撃されていた町や村を救援し、民を帝国へ移民させることに成功し、今は帝国領内で管理ができている」

「シンバードの代表として聞かせてもらう。それはドライアドの件も入っているのか? あれは実質強制みたいなものじゃないのか?」

 モードレッドの言葉にシンが噛みついた。冷たい目でシンを睨んだモードレッドはすぐさま反論する。

大陸則たいりくそくに明記されている通り、国が国の危機を丸ごと救うような事態になった場合は相応の返礼をするなり、従属するのが規則なのだから当然の流れだろう、人聞きの悪い事を言うなよ、シン」

「だとしても町から丸ごと民衆を引っこ抜いて自領に移動させるなんておかしいだろう」

「多くの民を抱える帝国がより上質に管理し、より働きやすくして成果を出させる為に移動させたに過ぎないのだよ」

「だったら、元ドライアドの民は今も楽しく帝国領で暮らしている筈だな? 後で確認させてもらおう」

「元ドライアドの民は現在中央街で暮らしているから会わせることはできないな。中央街は帝国民しか立ち入ることができない決まりだからな」

 ああ言えばこう言うとは正にこのことで、あくまで帝国の管理・支配は正しいものだという姿勢をモードレッドは貫いている。外から見えない以上、元ドライアドの民も過酷な労働をさせられているんじゃないかと疑いたくもなる。

 しかし、シンは負けじとモードレッドに詰め寄った。

「そもそも当たり前の様にモンストル大陸の代表みたいな言い方をしている点も気に食わないな。帝国が大陸で一番大きい国なのは確かだが、帝国は管理がどうだのと言い放つだけではなく、大陸則たいりくそくを守らない事だってある。帝国の支配こそが最善手のような言い方もどうかと思うぞ」

 シンの言葉を受けて大きな溜息を吐いたモードレッドは、側近になにやら指示を出した。すると側近は壁に大きな紙を貼りつけた、紙には各国の色々な実績が明記されている。モードレッドは貼られた紙を指差し、高圧的に語り始めた。

「この数字は食糧生産、魔獣討伐数、各工業分野の生産量などを現したものだ、これを見たまえ、あらゆる数字で帝国が頂点ではないか。大陸会議に参加していない国を含めて、各地で小競り合いや戦争があり、食糧問題・天災・魔獣活性化などで困窮している現状において、あらゆる点で秀でた帝国が支配・管理するのは当然だと思わないかね?」

「ふざけるなよ、帝国リングウォルドだって大陸に数ある国の一つでしかないだろ。みんな自分の国を愛しているんだ。お前らの価値観だけで他国を帝国色に染められたらたまったもんじゃない」

「どうやら根本から考え方が違うようだな。はっきり言ってやろう、私の目標は大陸を帝国一色に染める事だ。みなが同じ規則で同じ民族となり、同じ理念を持って生きていればくだらない争いだっておきはしないだろう? 今はその準備段階だ、ビエードのような失敗事例もあるだろうが、我々は必ず成し遂げて見せる」

 モードレッドの言葉に全員が黙り込んでしまった。きっと俺達がどんな言葉を発したところでモードレッドの考えが変わる事は無いのだろう。支配する側としての絶対的な自信をまざまざと見せつけられることとなった。

 国家間は対等であるべきなのに、このままでは大陸丸ごと帝国主導になってしまう――――大事な大陸会議の場で、飲まれてしまっては未来が決まってしまうような気がした俺は、一護衛という身分を忘れ、モードレッドにたてついた。

「悪いが俺達は帝国の理想通り動くつもりはない。国とは人であり、人とは意思だ。誰かにコントロールされて幸せになれるはずがない。あんた達とやりあうつもりはないが、俺達は好きに動かさしてもらう」

「……ガラルド。今回の大陸会議の主催として言わせてもらうが、ただの護衛である君に施政を語る権利は無い。口を閉じていたまえ」

 モードレッドは冷たく言い放ったが、それが合図と言わんばかりにシンが反論の挙手をして、俺とアイコンタクトを取った。どうやらドライアド復興計画の事を伝えるようだ。帝国に押されっぱなしだった大陸会議だが、ここにきて俺たちなりの反撃が始まった。

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