98 / 459
【第98話】温かい歓迎
しおりを挟む「お~す、町長はいるか~? 邪魔するぜ~」
アイコリーが雑な挨拶とともに家と外部の境界となっている仕切り布をめくり、中へと入っていった。返事も確認できない内に入るなよと言いたかったのだが、中にいた老夫婦は特に気にせず俺達に歓迎の笑顔を向けてくれた、二人とも優しそう人だ。
一軒一軒が独立している他の町と違い、町の全てが岩を介して繋がっているからこそプライバシーが開けっ広げなのかもしれない、端にアイコリーが雑なだけかもしれないが……。
俺は町長夫婦へ笑顔を返し、自己紹介を始めた。
「はじめまして町長さんとご婦人、俺はシンバード領のドライアドから来たガラルドと言います。右にいるのがリリスで左にいるのがボビで、他にも六人程ハンターと技術者についてきてもらっています。さすがに大所帯なので家の外で待機してもらっていますが」
「おお、そうでしたか。それなら全員家に入ってくだされ、エナジーストーン内の家屋は洞穴状になっていて傍目からは大きさが分かりにくいですが、うちは大勢が入っても大丈夫ですぞ。シンバードと比べれば味に自信はありませんが、沢山の料理と酒で歓迎させてもらいますぞ」
いきなりの来訪でそこまでしてもらうのは申し訳なく一度は断ったのだが、町長は半ば強引に俺達を奥へ案内してくれた。この歓迎感はサーシャの両親を思い出して少し温かい気持ちになった。
そして俺達は楽しく飲食を共にしつつ、旅の理由とコメットサークル領であった出来事を一通り町長へ伝えた。すると町長が険しい顔で過去にエナジーストーンであった事を話してくれた。
「実は我々エナジーストーンもジークフリートのように一度帝国に支配されかけた事がありましてな。いきなりずけずけと入り込んできた帝国兵どもは奇妙な兵器と数の力で強引に町へ侵入してきましてな。『不思議なエネルギーを使う貴様らを我が帝国が厳重に管理してやる』と言って難癖をつけてきましてなぁ……」
多少手法は違うが帝国は相変わらず強引に統治権を奪おうとしたみたいだ。しかし『支配されかけた』という言葉からも帝国はエナジーストーンから手を引いたようだ。帝国なら何が何でも奪っていきそうな気がした俺は町長に一連の流れを尋ねた。
「よく帝国が諦めてくれましたね。もしかして自慢の武力で追い払ったのですか?」
「一応そうなりますかな。小さな武力衝突はあったが、こちらに利があるうえ、追い払うことのみに注力しておりましたから双方死人が出る事はありませんでした。とは言っても帝国が魔力砲とかいう兵器を沢山持ち込んで本気を出せば、我々なんて直ぐにやられてしまうと思いますがな。帝国が諦めたのは支配にメリットが感じられなかったからでしょうな」
「メリットがない? 町の中心にある発光体はともかく、細かく砕けた破片にだってエネルギーを増幅させる力があるんだから持って帰れば帝国にメリットがあるように思えますが……」
「持って帰ること自体は出来ると思いますが、破片が効果を発揮する事はないんです。破片は何故か赤褐色の大地……つまりコメットサークル領から少しでも出てしまうと途端に効果を失う性質を持っていましてな。結果持ち帰る資源はなく、闘士も手強いエナジーストーンを攻めるメリットは無いと判断して去っていったと思われます」
なるほど、確かにエリアが限定される力にはメリットを感じないかもしれない。それに農業者としては優秀で戦闘力が無い旧ドライアド民を帝国領に引っ張り込むのは容易いかもしれないが、色々と手強いエナジーストーンの人間を相手にするのは大変だろう。帝国には正直ざまぁみろという気持ちが湧いてきた。
そして、一通り帝国の話とおすすめの料理屋や名所を教えてくれた町長は最後にありがたいプレゼントをくれた。
「ガラルド君は我々と同様に帝国をよく思っていない同士であり、あの厳しい門番兄弟が認めた男じゃ。ゆっくりとしていくといいし、何なら友好の証に協力できることは何でも協力しますぞ。ワシの家の隣の洞穴は空いておるし一通り家具も揃っておるから、自分の家のように好きに使っておくれ」
「何から何までかたじけない……本当にありがとうございます!」
俺達ドライアド組は深々と頭を下げて礼を言った。そんなやりとりをしている間もずっと勢いよくタダ飯を胃に掻き込んでいたアイコリーは、うずうずした様子で俺に話しかけてきた。
「なぁなぁガラルド、もっと旅の話をしようぜ、お互い色んなところを巡ってきた者同士楽しくなると思うぞ」
「う~ん、まぁ今日はようやく長旅を終わらせることができたしゆっくり話してもいいかな。それじゃあ早速町長に貸してもらった俺達の仮住居に行って話をするか」
そして、俺達は少し埃被った洞穴住居へ足を踏み入れた。奥に進んでいくと必要最低限の家具があり、備え付けてある発光体の破片でほんのりと明るい。更に奥へ進んでいくと扉があって開いてみると、彗星の外皮にあたる部分へ出る事になった。
あまりにも景色が良すぎるベランダと言ったところだろうか、遠くにはさっき俺達が双眼鏡を構えていた丘が見える。
数時間前はエナジーストーンを双眼鏡で発見し、蜂の巣のような巨大岩に人が住んでいると驚いていた俺達だが、今は見つめていた場所でくつろぎ、非現実的な空間に順応し始めている。こんな風に色々な事があるからこそ冒険はやめられない。
「ここは本当に不思議な町だな。家から外周に行けば太陽の光が拝めて、内側へ行けば発光体の光が拝める。二つの太陽からエネルギーを貰えているからこそ、ここの人間は異様に活力があるんじゃないとか思えてくるよ」
俺の言葉を聞いたアイコリーは激しく首を縦に振りながら感慨深そうに呟いた。
「分かるぞぉ~。二つの太陽なんていう洒落た表現をしたくなるガラルドの気持ちがよく分かるぞぉ。健全な精神は健全な肉体と食事によって作られるしな。彗星が降ってきた当時はきっと人々はパニックになったと思うが、俺は素敵な贈り物だと思うよ。だから俺はマナストーンにもマナストーン・コアにも毎日手を合わせて拝んでいるぞ。あ、マナストーンは発光体の破片のことで、マナストーン・コアは町の中心にあるデカい発光体のことだ、覚えておくといい」
『マナ』というワードは国によっては魔力や妖精の力という意味で使われることもある、力が貰える石という意味でもマナストーンという名付けは中々いいと思う。
それから俺達はより詳しくお互いのことを話し始めた。正直ディアトイル出身と打ち明けることは未だに勇気のいる行動なのだが、明朗快活で裏表のなさそうなアイコリーならきっと嫌な顔はしないだろうと信じて打ち明けた。
予想通りアイコリーは俺の生まれについては特に怪訝な態度を見せる事はなかった。そして次はボビが自己紹介をする番だったのだが、そこで事件は起きた。
「俺の名前はボビ、ジークフリートで工場長をやっている。もっとも今はドライアドと手を組み、互いに技術協力し合っているから専任ではないがな」
「ジークフリートォッ? それに他国と手を組んでるだとぉっ?」
アイコリーはボビの言葉に突然声を裏返して驚いていた。一体何が彼をそこまで驚かせているのだろうか?
0
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。
ヒツキノドカ
ファンタジー
誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。
そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。
しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。
身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。
そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。
姿は美しい白髪の少女に。
伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。
最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。
ーーーーーー
ーーー
閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります!
※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!
荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。
しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。
しかし――
彼が切り捨てた仲間こそが、
実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。
事実に気づいた時にはもう遅い。
道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。
“荷物持ちがいなくなった瞬間”から、
アレクスの日常は静かに崩壊していく。
短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。
そんな彼と再び肩を並べることになったのは――
美しいのに中二が暴走する魔法使い
ノー天気で鈍感な僧侶
そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー
かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。
自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。
これは、
“間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる”
再生の物語である。
《小説家になろうにも投稿しています》
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?
さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。
僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。
そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに……
パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。
全身ケガだらけでもう助からないだろう……
諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!?
頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。
気づけば全魔法がレベル100!?
そろそろ反撃開始してもいいですか?
内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる