見捨てられた俺と追放者を集める女神さま スキルの真価を見つけだし、リベンジ果たして成りあがる

腰尾マモル

文字の大きさ
255 / 459

【第255話】イントラ

しおりを挟む


「お前らみたいなクズは死んだほうがいい、僕が殺してやる!」

 はっきりとカッツ達を殺す意思をみせるディザールとは対照的に横にいるシルフィは天使を見上げながら震えていた。

「そ、その召喚はなに? も、もしかしてスキルが発現したの?」

 どうやらディザールの生み出した天使は仲間であるシルフィも知らないようだ。恐らく窮地に追いやられ、カッツの罵言が引き金となり発現したスキルなのだろう、スキルは土壇場や集中している時に発現することが多いからだ。

 天使の詳細を尋ねたシルフィの言葉が聞こえなかったのか、それとも無視をしたのか、ディザールは無言でカッツの方へと歩いていく。

 落とし穴を抜け出したうえに、不気味な天使まで召喚したディザールに恐れをなしたカッツは尻もちをつき、唇を震わせ、青ざめた顔で命乞いを始める。

「ゆ、許してくれディザール! ほ、本当はお前が羨ましかったんだ! 圧倒的な魔術の才に加えて、優しくて強い仲間を持つお前の事が! 俺は今すぐ村長の所へ行って自首して罰を受けると約束する! だから頼む……殺さないでくれ!」

 顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら謝るカッツだったが、ディザールは冷たい目でカッツを見下ろしていた。ほとんど目の見えないディザールはカッツと目を合わせることは出来ないけれど、もし目を合わせられたらカッツは今以上の恐怖を感じていたかもしれない。

 ディザールはアスタロトとして対峙した時よりも何倍も恐ろしく冷ややかな声でカッツに言い放つ。

「カッツ、お前は僕の父さんが建てた大切な家に火を付けただけでなく、シルフィのことも傷つけた。それも肉体だけじゃなく心もな。お前が助かる要素は一つもない。僕の怒りが生み出した天使ネメシスで一気に首を刎ねてやる、じっとしていろ」

 ディザールの宣言と同時に天使ネメシスは剣を頭上に振り上げる。過去の映像を見ている俺達はこのままディザールが人殺しになるのを見届けるしかないのか……と目を背けそうになっていたその時、遠くの方から叫び声が聞こえた。

「ダメッ!」

 シルフィではない女性の叫び声は俺の聞き慣れた声リーファのものだった。叫び声にピクリと反応したディザールだったが、天使ネメシスに剣を止めろと指令を送るには時間が足りなかった。

 ネメシスはカッツ目掛けて剣を振り下ろしてしまった。カッツの首が跳ね飛ぶのを見たくなかった俺は反射で目を閉じたが、俺の耳に肉を絶つ音は届かず、代わりに金属が激しく衝突する音が鳴り響いた。

 どういう事だ? と目を開けるとそこにはネメシスの振り下ろした剣を錫杖で受け止めるリーファの姿があった。俺が神託の森でハイオークに殺されそうになった時もリリスはああやって助けてくれたことを思い出す。極限状態だというのに何だか懐かしい気持ちになった。

 剣を受け止められたディザールは目の前に一瞬にして現れたリーファの魔力に驚き、何をしたのか尋ねた。

「リーファ! どうやってあの距離を一瞬で……」

「ハァハァ……私にも何が何だか……もしかしてこれが私の後天スキルなのかも……一回飛んだだけで息が……凄く苦しいけど、ディザールが人殺しになるのを止められてよかった……」

「……そうか、瞬間移動がリーファの後天スキルなのか。先天スキルと同様にお人好しのリーファに相応しいスキルだな。だが、余計なお世話だ! カッツ達は僕がこの手で殺すと決めたんだ! 邪魔をするな!」

 リーファが初めてアイ・テレポートを会得したのはこの時だったのかと驚かされた。きっと仲間を助けたいと強く願った気持ちが後天スキルを開花させたのだろう。

 その時の俺はアイ・テレポート修得に驚くと同時にディザールの発した『先天スキル同様にお人好しのリーファに相応しいスキルだな』という言葉が引っ掛かっていた。この言い方だとリーファは既に先天スキルを使えるということになる。

 確かウンディーネはリリスをスキル鑑定した際に『リリスさんの先天スキルは何かを取り込むような記述がされている』と言っていたが、女神ではないリーファも同じ先天スキルを持っているのだろうか?

 横にいるリリスに今すぐ尋ねたいところだが、今は我慢して記憶の水晶に集中しよう。



 怒鳴りつけるディザールに対してリーファは乱れた呼吸をゆっくりと整え、説得を始める。

「一度でも怒りで人を殺しちゃうとずっと憎しみと過去に囚われ続けるよ……そうしたらもう後戻りは出来ない。この先のディザールの人生を暗いものにさせたくないの!」

「……暗いものにさせたくないだと? 何を分かった様なことを……僕の人生は目の見えなくなった六歳の頃からずっと闇の中なんだよ! 僕には今のグラドとシルフィの顔すら分からないんだ……だからずっと子供の頃のイメージのまま声だけが変わっていく二人を感じていくのは辛かった……。今だって殺してやりたいカッツの顔すら分からない……」

「それでもディザールは視覚以外の感覚で多くのものを感じ取ってきたはずだよ。ディザールがカッツさんを殺せばきっとグラドとシルフィちゃんは貴方と同じくらい悲しむし、私とシリウスだって辛いよ」

「明後日にはここを発つリーファが何を言ってるんだ。僕がどうなったって大陸北に帰る頃には忘れているだろ?」

 リーファの懸命な説得もむなしくディザールは吐き捨てるように呟く。しかし、リーファはディザールを責めもしなければ落ち込むこともなく、優しい声色で宣言する。

「だったら私がどれだけディザールの事を大切に思っているか証明してあげる」

「証明? 一体どういうこ――――なっ!」

 ディザールは話の途中で驚きの声を発する。それはリーファが突然両手をディザールの側頭部に添えて、まるで熱でも測るかのようにおでこを合わせたからだ。

 二人がおでこを合わせると同時にリーファとディザールの左目が光りだし、数秒後に光が収まるとディザールは自分の手のひらを顔の前に動かし、声を震わせて囁いた。

「目が……いや、左目が、僕の左目が見える! リーファお前まさかスキル『イントラ』を?」

「うん、どうしてもディザールに今の私とシルフィちゃん、そして恐怖で怯えるカッツさんの顔を見てもらいたかったから、頑張っちゃった、えへへ」

「だけど、そうしたらリーファの左目はもう……」

「私がディザールの事を大切な仲間だと思ってるって証明したかったからね。まぁ本当は『イントラ』を使わずに薬や医術で治す方法を見つけたかったけど、それは今後ゆっくりと探す事にするよ。それよりもどう? 私やシルフィちゃんが本気で心配しているって表情からも分かるでしょ? それにほら、嫉妬と恐怖で震えるカッツさんの顔を見て。貴方が手を血で染める価値があるとは思えないでしょ? 虐める側もまた弱き者なのだから」

「……ああ、ようやく分かったよ。僕は思っていた以上に恵まれていたらしい」

 リーファの優しさに泣き崩れるディザールを見て、俺は泣きそうになった。今初めて見たリーファの先天スキルは恐らく肉体状態の交換もしくは譲渡だと思う。

 一応俺がリリスに尋ねると、フィアが映像を一時停止し、リリスが先天スキル『イントラ』の詳細を語り始めた。

「私の先天スキル『イントラ』は自分の状態を相手に移したり、逆に貰ったりできる能力です。私のご先祖様はもっと強力にイントラを使いこなしていたらしく、受け取った病気などを自らの体内で浄化することで自分の体に異常が出ないように出来ていたらしいのですが、私は未熟なのでそのまま交換する形になってしまうんです、使いにくい能力ですよね」

 ウンディーネさんがリリスのスキル鑑定をした時に『何かを取り込むような記述がされている』と言っていた意味がようやく理解できた。イントラは確かに『取り込む』に該当するスキルと言えるだろう。

 仲間想いで自己犠牲的なところのあるリリス・リーファらしい能力だと思えたけれどイントラは先天スキルだから、リリス個人の性格よりも血筋によるところが大きそうだ。俺は今の率直な気持ちをリリスに伝える。

「先天スキルまで献身的で人助けに特化したものだとはな。きっとリリスやフィアさんの優しいところは大昔から受け継がれてきた教育と血筋によるところもあるんだろうな、立派な家系だよほんとに」

 俺が褒めるとフィアさんもリリスも手を後頭部に添えて顔を赤くしながら俯いてしまった。まさか見た目だけではなく仕草まで似ているとは流石は姉妹だ。

「フィ、フィアちゃん、早く映像を再開して!」

 恥ずかしくなったリリスは慌てて話を逸らしている、こんなリリスを見るのもたまにはいいものだ。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

処理中です...