魔術師見習いの成長譚

☆タク☆

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【本編】第1章 始まりと出会い

第3話

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???「《コンヒューズエレメント》!」
???「《アバランシュ》!」

上空から魔法の詠唱と同時に地上でひるみ、声をあげるモンスター。
目を少しずつ開けると、目の前に2人の男女がいた。
男性の方はモンスターと敵対し、女性の方はこちらへ駆け寄ってくる。

???「ライトくん、大丈夫!?怪我は?」

聞き覚えのある優しい声、ふんわりとした匂い、柑子色こうじいろの髪、花の髪飾り、宝石のような綺麗な目、リズだ。

ライト「どうして…ここに?」

リズ「何言ってるの!みんなでこのフィールドをクリアするんでしょ?ちょっと待ってて。」

リズは立ち上がり、両手をライトの方へ向け、

リズ「《グラセ》」

魔法を唱えると麻痺効果がなくなり、右手の傷も癒えていた。

リズ「どう?立てる?」

リズの回復魔法のおかげで右手の痛みもなくなり、万全状態だった。

ライト「あぁ、悪い。これなら戦える。」

俺はすぐさま立ち上がり、リズと一緒に来た男性に加勢する。
リズも一緒に戦った。

???「こいつ、なかなか手強いぞ。さっきから何度も攻撃を繰り返してるが、全く効いてる様子がないんだ。」

ライト「でも3人で協力すれば…!」

???「協力って言ってもどうする?一方的に魔法を放っても勝機はあるのか?」

それもそうだ。
いくら3人が同時に攻撃したところでダメージを与えることが出来るのか。
それにまだ魔法のコントロールも未熟な3人だ。
それぞれの魔法同士が接触したりしたら意味がない。

ライト「いや、もしかしたら…。」

リズ「何かいい手があるの?」

ライト「確実性はないが、よりダメージを大きく与えられる方法がある。」

???「それはなんだ?とにかく打開の発端にでもなりそうなら言ってみろ。」

ライト「コンボ技だ。」

それは何の変哲もないただの一般的な知識を基に考えた魔法と魔法のコンボ攻撃だった。

ライト「2人がここに来た時に使った技、どちらも水属性魔法だよね?」

ライトは魔法学園に合格し魔術師になる為に、魔法と属性に関してはよく勉強していた。

ライト「もし2人が水属性の魔法を使えるのなら、俺にいい考えがある。」

???「何をする気だ?」

ライト「2人の水属性魔法と、俺の雷属性魔法を組み合わせて、あのモンスターを感電させる。このモンスター強いから、感電させても倒せるかはわからないけど、この場を打開する策に繋がる気がするから試す価値はあると思う。」

このモンスターは真正面から立ち向かっても勝機は弱いと考えたが、この3人が協力出来ればなるとかなる気がしていた。
もちろん確証はない。
お互いがお互い出会ったばかりの3人だ、上手く息が合う保証もない。
ただ、何故かそう思えた。
それは他の2人もそうだったのかもしれない。
2人はすぐに受け入れてくれた。

リズ「わかった。それで私たちは何をすればいいの?」

ライト「簡単だ。出来るだけ多い量で、あのモンスターにぶっかけるように水の魔法を使ってほしい。」

???「そのくらいお安い御用だ。行くぞ!」

リズ「《アクアライン》!」
???「《ヘイル》!」

2人は詠唱するとモンスター目掛けて大量の水が押し寄せ、辺りは水浸しになった。

ライト「2人とも、木に登れ!」

合図と共に3人は木の上へ登り、

ライト「《エレキゲイザー》ッ!」

ライトが詠唱した刹那──
辺り一帯の水に雷属性魔法の電気が伝導し、モンスターは感電した。

──グオオオォォォ!

ライトが放った雷攻撃魔法はモンスターを目掛けて勢い良く放たれ、水分を浴びたモンスターとその周辺は焼かれた。
モンスターは黒く焼き焦げ、それ以降動くことはなかった。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


ライト「はぁ…はぁ…。やったのか?」

???「あぁ、恐らく。さっきまでの強大なマナを感じなくなった。」

ライト達3人は木の上に立っていた。

ライト(最初から木の上登ればよかったな。)

木の上に登れば楼閣が見えるため、それで方向がある程度把握出来たと思い後悔したが、そんなことしても仕方がない。

???「にしても、お前結構やるじゃん。属性を生かした攻撃を思いつくなんてよ。」

ほんとに、このフィールドに来てからやけに冷静に判断が出来てる気がする。

ライト「そんな、どうってことないよ。えっと…。」

ライトが言おうとしたことを察したのか、その男性は口を開く。

ベガ「あぁ、悪ぃ。まだ紹介してなかったな。俺はベガだ、よろしく。」

ベガと名乗ったその男は、体格は少し小柄な感じとは裏腹に、体つきが良く、顔も男らしい。

ライト「ベガだな、俺はライト。助けてくれてありがとう。」

ライトは手を差し伸べて感謝を言う。
ベガはそれに応えるように手を握り、

ベガ「礼はいらねぇよ。俺たちは同じクラスメイト…いや、仲間なんだ。助け合いなんて当たり前だろ?」

と、力強い言葉をくれた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


リズ「これからとりあえず、あの楼閣に向かうんだよね?」

リズが問いかけてくる。

ライト「あぁ、そうだな。もしかしたらもう誰かいるかもしれないし。」

そう言ってライト達3人は、楼閣に向かって走った。
果てしなく続く長い森をひたすら走り、途中で出くわしたモンスターは手分けして倒して進む。
明らかに1人の時よりも戦力は大きく、誰かが居てくれるだけで頼もしく感じられる。
それはベガやリズも例外ではなかった。

ライト「そういえば、2人はどうして一緒に?」

ふと気になった。
恐らく全員がバラバラになったと考えていたが、助けに来た時点で2人は一緒だった。

リズ「ライトくんを迎えに行く途中でモンスターに襲われちゃって。強さはそこまででもなかったんだけど量が凄くてね。」

リズに続いてベガが話す。

ベガ「そこで俺がこいつを見かけて共闘したってわけ。その後、『森で待ってる人がいる』って言うもんだからそのままついてきたんだ。」

ライト(俺を迎えるためにモンスターに襲われたと思うとなんか凄い申し訳ないな。)

心の片隅に罪悪感を抱きつつ、その話を聞いていた。
それにしてもこの森は本当にどうなっているのか不思議で仕方がなかった。
全く森を抜ける気配がないのだ。

ライト「なぁ、2人は森に入ってから俺のところまで結構距離あったのか?」

ベガ「まぁな。でも、もう抜けていいと思うんだが。」

それなりに距離はあったそうだが、もう抜けてもいいと思えるほどの距離にはなってるらしい。
だが、今まで通り景色が変わることはない。

リズ「ねぇ、これどういうこと?もう一度木の上登って確認する?」

確かに、木の上に登れば楼閣が見えた。
視界はよく、かなり奥の方まで見通せるほどだ。

ベガ「じゃあ俺が登って確認してやるよ。ちょっと待っ──」

ベガがこちらに背を向け木に触れた瞬間、ライトは森の奥から凄まじい気配を察知した。

ライト「ベガ、だめだ!こっちにきて伏せろ!」

直後──。
轟音と共に一筋の光線が頭上を貫いた。
伏せてなかったら一発アウトかのようなその光線を放った張本人が目の前に現れる。

ライト「おいおい、まじかよ…。」

リズ「嘘、でしょ…。」

ベガ「ちっ…クソが。」

そこにいた3人が絶句してしまっていた。
3人の目の前に現れたその姿には見覚えがあった。
皮膚の表面は黒く焼かれ、焦げた独特の異臭を放ち、四足歩行で、目は赤く、鋭い爪。
長い牙の先端には赤い血がついている。
ライトの血だ。
そう、ライト達の前に現れたのは…。

──グオオオォォォ!

先程のモンスターだった。
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