正義という名の魔術師

Curren

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【本編】第4章 捲土重来

第15話

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エンリ(参ったな。)

エンリは様子を伺いながらライトの周辺を走っていた。
しかし、全く動かないライトは完全にと言っていいほどそれを対策してしまっている。

エンリ(さっきの攻撃を避けられたもまぐれじゃないみたい。ライトくんも、あの時と違う。)

エンリはライトと公式に一戦交えたことがあるが、あの時とは比べ物にならない。
具体的な戦闘の強さはまだ見れてないが、動じずに立ち振る舞うその風格は歴然として違っていた。

エンリ(いつまでもこうしてはいられない。僕は僕の戦闘をするだけでいいんだ。)

エンリ「《エアショック》!」

エンリは攻撃を仕掛ける。
その攻撃はライトから見て左後方、例え意識を周囲に巡らせていても瞬時に反応出来るはずがない。
そう思っていたが。

ライト「予想通り。」

エンリ「!!」

ライトはその攻撃を避けた。
いや、正確には避けた訳ではない。
最初から来ると分かっていたようなタイミングで上空へ跳んだ。

エンリ(嘘…。)

そして、透明化した状態のエンリを魔法の出処でどころから予測し、腕を握ったのだ。

ライト「逃がさないよ、エンリくん。」

そう呟いたライトに視線を向ける。
その顔は、普段のライトと違って見えた。
まるでその目の奥にもう1人のライトがいるように。
ライトという人間の概念そのものを具現化したような、言わば本性こころ
その時のライトの姿は、桁違いの実力と経験を持った魔術師を見た感覚だった。

ライト「《ブリッツストーム》!」

エンリ「っ!」

ライトの攻撃はエンリに命中したことで異能シノニムが解除され、姿を現したエンリは宙へ放たれた。
エンリは体勢を整えライトに反撃を試みたが、先程までいた地面には姿が見当たらなかった。

エンリ(ライトくんはどこに?)

その周囲を見渡してもライトの姿は見当たらない。
というよりもほとんどが木で覆われていたため、確認がしにくかった。

エンリ(!! 違う、上──)

エンリは気づくのが遅かった。
飛ばされた方向、エンリの上空からマナが集結するのを感じた。
上空に目を向けるとそこにはライトがいて、巨大な球を生成していた。
そして、ライトの右目は赤く光っていた。

エンリ(えっ。)

ライト「《雷鳴球》!」

襲い来るその大きな球は、それ以上に威圧的で大きく感じられた。

エンリ(はは、自信ないって言ってたのに。)

苦笑いを浮かべ、エンリはライトの強さを改めて実感した。

エンリ(本当に、凄いなぁ。)


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


リズ「2人ともお疲れ様!」

ベガ「だいぶ良かったじゃねえか。」

2人はフィールドから転移先のエリアへ戻った。

ライト「自分が1番驚いてるよ。」

立ち回りもフィールドの把握力も技の練度も全てが今までと大きく違っていた。
しかし、これを自分の実力だと思えなかった。
不思議なくらいに身体が勝手に動いたように、特にこうしようああしようと考えを巡らせた結果の行動ではなかったからだ。

ベガ「それにしても隠してたなんてもったいぶりやがって。」

エンリ「ね、僕もビックリしたよ。」

ベガとエンリは言う。
リズは様子からして知っていたような感じだった。

ライト「? なんのこと?」

しかし、当の本人は気づいていない。

ベガ「お、おいおい。誤魔化す必要はないだろ。」

エンリ「異能シノニムが発現してたよ。」

ライト「えっ…何言って───。」

そんな実感は更々なかったが、3人の反応を見るに冗談を言っているように思えない。
確かに打とうと思ったら自然とマナの流れを生み出せてすんなりと《雷鳴球》を放てたような。

ライト「え、マジ?」

エンリ「気づいてなかったの?」

ライト「う、うん。全く。」

リズ「少なくとも昨日のボス戦の時には発現してたよ。」

ライト「……。」

本当に驚いた。
まさかこんなにもあっさり扱えるようになると思ってもみなかった。

ライト「でも、俺もやれたんだな。」

ベガ「先を越されちまったな。」

リズ「おめでとう、ライトくん!」

まだ実感は持てないが、異能シノニムが発現し、また1つ成長を遂げれた気がする。
それは2週間後の行事でも大きな自信に繋がった。

ベガ「それに、お前いつの間にあんな身のこなしが出来るようになってたんだな。」

ライト「ああ、ちょっとな。」

これでもまだ実際のところ満足していない。
しかし、かなり成長できていることは実感していた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


『ちょっと、どういうことよ?』

耳元で荒々しく声が響く。
代表者を本格的に決定する為に学園にいなかった生徒全員に連絡をして、自主練習を取り組んでいた時だった。
いきなり通信魔法が届いたかと思えばこの始末だ。
アギトは正直ため息をついてしまいたい程だったが、なんとかその気持ちを堪える。

アギト「どういうことも何も、全員で話し合って出した答えですが。何か不満な点でもありましたか?」

素直に思ったことを返す。
通信が届いたのはリディアからで、代表者のことだとすぐに想像がついた。

リディア『あるに決まってるでしょ、ソラやオペラはまだわかってもアギトもいなければ私もいないじゃない。一体どういうこと?』

アギト「ですから、全員で話し合った結果がこれです。」

リディア『はぁ、あなたと話してると頭が痛くなってくるわ。』

吐き捨てるようにリディアは呟いた。
アギトはそんなリディアに対しても特に何も感じない。
彼女とは施設時代から関わりがある。
この態度にはもう慣れていた。

リディア『とりあえず百歩譲って私たちが代表者に選ばれてないのはいいとするわ。けれど、私が納得出来ないのはなんであの子がいるの?』

あの子、それが誰のことを指してるかはすぐに分かった。

アギト「ライトくんのことですか?」

リディア『ええそうよ。他2人はまだ認めてやってもいいけれど、あの子が代表者だなんて私は反対よ。』

彼女がそういう理由も容易に想像出来る。
実際、言わないだけでそう思ってる生徒も他に居るはずだ。
ライトが代表者として選ばれたのは、正直圧倒的な強さがあるとかそういったものではないのも確かである。
それでもアギトは、ライトを推薦した。
ソラが同じ考えだったのもソラ自身ライトに感じたものが何かあったのだろう。
ソラとライトは、1vs1の行事で対戦していたからこそ、そう思えた。

リディア『あなただって、この行事勝ちに行かないといけないんじゃないの?』

アギト「……。」

アギトは言葉に詰まった。
今回の行事がどれだけ重要なものかはアギト自身が1番よく分かっている。
もし父親から認めて貰えなければ今後どうなるかなど一切検討もつかない。
ならば自分が代表者となり自分の手で勝利を掴めば解決する話だ。
それに父親はそう望んでいるだろう。
しかし、アギトの中には揺るがない心がある。
勝ちたい願望もあれば、勝たなければならないという使命もある。
それでいても、父親の言いなりになって自分の本心を捨てたくはないのだ。
だからこそアギトは代表者を引き受けなかった。
自分の考え、そして自分のやり方で勝利を掴み、父親にそれを証明するとそう考えた。

リディア『あなた、思ってた以上に頭が固いのね。そんなに代表者になりたくないのなら、彼の枠に私を入れれば済む──』

アギト「…いい加減にしてください。」

淡々とした声を遮るように小さな声が響く。
本当は言いたくなかったのだろう。
その小さな声を放ったアギトははっきりと口にせず、口をごもらせた。
冷たい、けれども情熱的な熱さも感じられるその小さな声は、リディアの心に少しだけ響いた。
その理由は至って単純で、アギトがそのような言葉を口にした声を今までに聞いたことがなかったからだ。

アギト「…っ……。」

それ以降何かを口にすることはなかったが、面と顔を合わせていない通信魔法でも何かを言いたげに堪えた悔しさを感じた。

リディア『そう、彼が代表者なのは冗談やお遊びじゃなく「勝ちに行く為」と。彼に何か吹き込まれたりでもしたのかしら。普段のあなたなら迷わず勝てるメンバーを選べたでしょうに。』

まるで嘲笑われた感覚だった。
言い方を変えればリディアはライトを格下で戦力にならないと完全に無礼なめている。

リディア『わかったわ。私は納得した訳ではないけれど、とりあえずこの3人ってことにしておいていいわ。ただ、提出期限は5日後。それまでは提出せずに考えておく事ね。「勝つ為に何が必要か」、あなたなら良い応えを聞かせてくれると期待してるわ。』

そう言って通信魔法は途絶えた。

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