祓っていいとも!

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
17 / 29
第1章

第4話(4)コードネームはサイレンス

しおりを挟む
「さあ、一緒に戦おう!」

「えっと……」

「さあ!」

「う、う~ん……」

「ともに!」

「い、いや……」

「行こう!」

「嫌です!」

「ええっ⁉」

 わたしの大声による拒否に、ノリタカさんは困惑する。わたしは頭を下げる。

「い、いや、すみません、いきなり大声なんか出しちゃって……」

「そ、それは別に構わないけれど、嫌なの?」

「いや、嫌でしょ、それは……」

「何故かな?」

 ノリタカさんは不思議そうに首を傾げる。

「何故って……」

「いいかい? 君は適性の高いスペースポリスマンなんだよ?」

「いや、そう言われてもですね……」

 わたしは困り顔で鼻の頭をポリポリと搔く。

「なかなかなれるものじゃないよ、スペースポリスマンというものには……」

「なんと言いますか……」

「ん?」

「いや、なんでもないです……」

 わたしは右手を左右に振る。

「なんでもないということはないだろう」

「ええっと……」

「言いたいことは遠慮しないではっきりと言うべきだよ」

「いや……」

「……分かった」

「え?」

「テンションがイマイチ上がらないんだね?」

「は?」

 わたしは首を傾げる。

「あれが欲しいんだね?」

「あ、あれ?」

「ああ」

「あれとは?」

「コードネームさ!」

「はあ?」

「俺としたことがまったくもって迂闊だったよ……そうだよな、コードネームが無ければ、気合も入らないってものだよな……」

「え、ええっと……」

「ちょっと待ってくれないか……」

 ノリタカさんが右手をわたしの目の前に突き出す。

「は、はい……?」

「……」

「………」

 時間にして十数秒。

「よし、決めた!」

「え、ええ?」

「とっておきのコードネームだ!」

「今、ちょっと考えただけですよね⁉」

「それでは発表するぞ! ダン! ドゥルルルルルルルルルル……」

「ド、ドラムロールを口で表現⁉」

「ルルルルルルルルルル……ダン! 君のコードネームは……」

「…………」

 わたしは一応だが息を呑む。

「……『サイレンス=シズカ』だ!」

「お断りします」

 わたしは即座に頭を下げる。

「そ、即答⁉」

「そりゃあそうですよ……却下です」

「な、何故だい……?」

「何故って、どこの競走馬ですか……大体、わたしの名前の静香から取ったんでしょうけど、サイレンスって……意味が重複しちゃっているし……」

「ダ、ダメ出し⁉」

「それはダメ出しもしますよ……」

「そ、そんな……」

「……愕然とされていますね」

「そ、それは愕然ともするだろう……」

「……………」

 エイリアンがゆっくりと――ニュルニュルと――こちらに近づいてくる。

「エ、エイリアンが接近してきていますよ!」

「……せっかく共に戦えると思ったのに」

 ノリタカさんはがっくりとうなだれている。

「………………」

「ノリタカさん!」

「……!」

「……デストロイ=ノリタカだ!」

「!」

 エイリアンが襲いかかってきたが、ノリタカさんは視線を逸らしたまま、強烈な裏拳をエイリアンに叩き込む。エイリアンは後方に思いっきり吹っ飛ばされる。

「つ、強い……! な、なんというパワー……!」

「それはそうだよ、なんといっても時代を先取るニューパワーだからね……」

「は、はあ……」

「君も手伝ってくれれば良いのだけれど……」

 ノリタカさんが残念そうな表情でわたしを見つめてくる。雨に打たれた子犬の様だ。

「い、いや! 別に手伝わなくても十分だと思いますけど⁉」

 わたしは困惑する。あなた一人だけでも全然大丈夫なんじゃないかな……。

「…………………」

「あ、エイリアンが体勢を立て直した!」

「……!」

「ま、また近づいてきていますよ! さっきまでより速い!」

「……‼」

「と、飛びかかってきました!」

「しつこい!」

「‼」

 ノリタカさんが腰のホルダーから銃を抜き放って素早く発砲する。銃撃を受けたエイリアンの体が四散する。わたしはあっけに取られてしまう。

「じゅ、銃……?」

「スペースポリスマンに支給される光線銃さ。俺用にチューンアップしている……こいつをまともに食らったら、どんなエイリアンもひとたまりもない……」

「………!」

「おわっ⁉」

 四散したエイリアンが四体に再生して、ノリタカさんを襲う。伸びた足がノリタカさんの手足を締め付ける。

「キスアンドクライ=ノリタカさん!」

「デストロイ=ノリタカだよ。どういう間違いだい? ちぃっ、油断した……」

「さ、再生した?」

「再生・分裂能力持ちか……なかなかレアな存在だね……」

「ノリタカさん、大丈夫! ……ではないですよね」

「手足の自由を奪われてしまった……サイレンス、ここは君に任せるとするよ」

「ま、任せるって……?」

「スペースポリスマンとしての初任務だ」

「そ、そんなこと言われても……」

「このままだと、俺がやられる。そうなると次のターゲットは君や周囲の人々だ……」

「! ……戦うしかないということですか……」

「ああ、そうだ」

「し、しかし、一体どうすれば⁉」

「空に向かって右手をかざすんだ!」

「こ、こうですか⁉ うん⁉」

 空から赤色のレーザーがわたしに向かって降り注ぎ、わたしの体を包み込む。

「スペースステーションが君に装備と能力を授けた! やれるはずだ! やってみろ!」

「ア、アバウトな指示⁉ ……ええいっ! ああっ⁉」

 わたしが力を込めて右手を振ると、大きな岩が四つ生じ、エイリアンを叩き潰す。

「………‼」

 四体のエイリアンが霧消する。

「……倒せた?」

「自然の力を借りるタイプか……あの岩……『花崗岩』だな。岩は処理班に片付けておいてもらおう。サイレンス=シズカ、初任務ご苦労さん、この調子でこれからも頼むよ」

 手足の自由が戻ったノリタカさんが機器を活用して分析し、連絡を取ってから、戸惑っているわたしに向かって、右手の親指をビシっとサムズアップする。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...