37 / 50
第1笑
9本目(4)ちょっと振り返ってみる
しおりを挟む
「……そんなことがここ数日あったんですよ」
「……ちょっと待って。どういうこと?」
笑美が司に問う。
「どういうことと言いますと?」
「順を追って説明してくれる?」
「ええっと、屋代先輩と因島くんとオースティンが語彙力勝負を始めたんですよ」
「語彙力って日本語?」
「ええ、それはもちろん」
司が頷く。
「そんなん、屋代先輩の圧勝やんけ。まあ、そもそもどうやって勝ち負けをつけんのかよく分からんけれども」
「いや、これがどうしてなかなか……」
「違ったんか?」
「良い勝負だったんですよ」
「ほう……」
「母国語ではないということを差し引いても、オースティンの勝ちで良いんじゃないかな」
「へえ、それは意外やな……」
笑美が腕を組む。
「そうだったんですよ」
「それで?」
「ん?」
「次はなんやったっけ?」
「ああ……江田先輩と倉橋くんとエタンが筋力勝負を始めたんですよ」
「筋力勝負?」
「いや、厳密に言うと、筋肉勝負だったかな?」
「どっちでもええわ」
「大事なことかなと思って」
「大事ちゃうよ。で? 何をしたん? 大体想像はつくけれども……」
「それがですね……」
司が急に小声になる。笑美が耳をすませる。
「え? なに?」
「三人がおもむろに制服を脱ぎだして、各々の筋肉を比較し合ったんですよ」
「うん、おおむね予想通りやったわ」
笑美が頷く。
「最終的には勝負そっちのけでお互いの筋肉についてああだこうだと品評会みたいになってしまって……」
「部室で何をしとんねん……」
笑美が目を細める。
「最終的には和やかな雰囲気で終わったから良かったですけど」
「妙な雰囲気にならんで良かったな」
「え?」
「いや、なんでもない……」
「ああ、そうですか……」
「って、あれやな……」
「はい?」
「倉橋くん、その組み合わせに馴染んでたんか?」
「ああ、それが意外と……」
「へえ、分からんもんやな……」
司が右手の人差し指を立てる。
「ひとつ収穫というか、発見がありまして……」
「発見?」
「はい」
「何よ?」
「倉橋くん、ツッコミ適性がありそうですね」
「う~ん、それはどうかな?」
笑美が首を傾げる。
「え、ダメですか?」
「ダメとは言わんけど、その組み合わせやったら、自然と誰かがツッコミに回ってしまうっていうのもあるんとちゃうんか?」
「ああ、そういう考え方もありますね……」
「せや、決めつけるのは早計やで」
「肝に銘じておきます……」
「で?」
「え、なんですか?」
「その次よ。なんやったっけ?」
「ああ、能美兄弟と厳島さんと小豆さんとマリサの五人で女子力勝負をしようということになりまして……」
「どうしてそうなったんや……」
「さあ……?」
「結果は? これも大体想像つくけれども」
「えっと、小豆さんの勝ちっぽい雰囲気になりましたね」
「そ、それはちょっと意外な展開やな」
「僕もそう思いました。でも女子力っていうのも結構曖昧ですからね」
「まあ、それはあるな……」
「その後はしばらくガールズトークに花を咲かせていました」
「ふ~ん……」
「楽しそうでしたよ」
「……それでさ」
「ええ」
「君はその横でひたすらネタ作りに勤しんでいたと……」
「そうです」
「いや、もっと存在感出せや!」
「えっ⁉」
声を上げた笑美に対し、司が驚く。
「無視されているみたいで、他人事でもなんや悲しくなってくるやろ……」
「いや、あえてそっとしておいてくれたんだと思いますよ」
「そうなん?」
「ええ、お陰でネタ作りに集中出来ました」
「絡めや!」
「ええっ⁉」
「そんなん絡みに行った方がネタ作りのヒントに繋がるやろ!」
「そうですかね?」
「絶対そうやって! 筋肉品評会なんて滅多に遭遇出来へんで⁉」
「そう言われると……」
「まったくそういう気は起きなかったんか?」
「いえ、起こらなかったと言えば、嘘になりますね……」
「ほ~ん……」
笑美が笑みを浮かべる。司が首を傾げる。
「え、なんですか?」
「いいや、なんでもあらへんよ……」
「いや、気になるじゃないですか……ん?」
スピーカーからチャイムが鳴る。
「うん? チャイム?」
「これは校内放送ですね、なんだろう?」
「……お笑い研究サークルの細羽司くんと凸込笑美さん、至急生徒会室までお越しください。くり返します……」
「え? いきなり何やねん……」
笑美が不思議そうに首を捻る。
「……ちょっと待って。どういうこと?」
笑美が司に問う。
「どういうことと言いますと?」
「順を追って説明してくれる?」
「ええっと、屋代先輩と因島くんとオースティンが語彙力勝負を始めたんですよ」
「語彙力って日本語?」
「ええ、それはもちろん」
司が頷く。
「そんなん、屋代先輩の圧勝やんけ。まあ、そもそもどうやって勝ち負けをつけんのかよく分からんけれども」
「いや、これがどうしてなかなか……」
「違ったんか?」
「良い勝負だったんですよ」
「ほう……」
「母国語ではないということを差し引いても、オースティンの勝ちで良いんじゃないかな」
「へえ、それは意外やな……」
笑美が腕を組む。
「そうだったんですよ」
「それで?」
「ん?」
「次はなんやったっけ?」
「ああ……江田先輩と倉橋くんとエタンが筋力勝負を始めたんですよ」
「筋力勝負?」
「いや、厳密に言うと、筋肉勝負だったかな?」
「どっちでもええわ」
「大事なことかなと思って」
「大事ちゃうよ。で? 何をしたん? 大体想像はつくけれども……」
「それがですね……」
司が急に小声になる。笑美が耳をすませる。
「え? なに?」
「三人がおもむろに制服を脱ぎだして、各々の筋肉を比較し合ったんですよ」
「うん、おおむね予想通りやったわ」
笑美が頷く。
「最終的には勝負そっちのけでお互いの筋肉についてああだこうだと品評会みたいになってしまって……」
「部室で何をしとんねん……」
笑美が目を細める。
「最終的には和やかな雰囲気で終わったから良かったですけど」
「妙な雰囲気にならんで良かったな」
「え?」
「いや、なんでもない……」
「ああ、そうですか……」
「って、あれやな……」
「はい?」
「倉橋くん、その組み合わせに馴染んでたんか?」
「ああ、それが意外と……」
「へえ、分からんもんやな……」
司が右手の人差し指を立てる。
「ひとつ収穫というか、発見がありまして……」
「発見?」
「はい」
「何よ?」
「倉橋くん、ツッコミ適性がありそうですね」
「う~ん、それはどうかな?」
笑美が首を傾げる。
「え、ダメですか?」
「ダメとは言わんけど、その組み合わせやったら、自然と誰かがツッコミに回ってしまうっていうのもあるんとちゃうんか?」
「ああ、そういう考え方もありますね……」
「せや、決めつけるのは早計やで」
「肝に銘じておきます……」
「で?」
「え、なんですか?」
「その次よ。なんやったっけ?」
「ああ、能美兄弟と厳島さんと小豆さんとマリサの五人で女子力勝負をしようということになりまして……」
「どうしてそうなったんや……」
「さあ……?」
「結果は? これも大体想像つくけれども」
「えっと、小豆さんの勝ちっぽい雰囲気になりましたね」
「そ、それはちょっと意外な展開やな」
「僕もそう思いました。でも女子力っていうのも結構曖昧ですからね」
「まあ、それはあるな……」
「その後はしばらくガールズトークに花を咲かせていました」
「ふ~ん……」
「楽しそうでしたよ」
「……それでさ」
「ええ」
「君はその横でひたすらネタ作りに勤しんでいたと……」
「そうです」
「いや、もっと存在感出せや!」
「えっ⁉」
声を上げた笑美に対し、司が驚く。
「無視されているみたいで、他人事でもなんや悲しくなってくるやろ……」
「いや、あえてそっとしておいてくれたんだと思いますよ」
「そうなん?」
「ええ、お陰でネタ作りに集中出来ました」
「絡めや!」
「ええっ⁉」
「そんなん絡みに行った方がネタ作りのヒントに繋がるやろ!」
「そうですかね?」
「絶対そうやって! 筋肉品評会なんて滅多に遭遇出来へんで⁉」
「そう言われると……」
「まったくそういう気は起きなかったんか?」
「いえ、起こらなかったと言えば、嘘になりますね……」
「ほ~ん……」
笑美が笑みを浮かべる。司が首を傾げる。
「え、なんですか?」
「いいや、なんでもあらへんよ……」
「いや、気になるじゃないですか……ん?」
スピーカーからチャイムが鳴る。
「うん? チャイム?」
「これは校内放送ですね、なんだろう?」
「……お笑い研究サークルの細羽司くんと凸込笑美さん、至急生徒会室までお越しください。くり返します……」
「え? いきなり何やねん……」
笑美が不思議そうに首を捻る。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【3月中ーー完結!!】
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
二十年の裏切りの果て、その事実だけを抱え、離縁状を置いて家を出た。
そこで待っていたのは、凍てつく絶望――。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と縋られても、
死の淵を彷徨った私には、裏切ったあなたを許す力など残っていない。
「でも、子供たちの心だけは、
必ず取り戻す」
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔い、歪な愛でもいいと手を伸ばした彼女が辿り着いた先。
それは、「歪で、完全な幸福」か、それとも――。
これは、"石"に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる