【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
6 / 50
第一章

第2話(1)旅立ち

しおりを挟む
                  2

「いやはや驚きました……」

 老人が呟く。タイヘイが苦笑する。

「爺さん、昨日からそればっかりだな」

「いや、例えば人と獣の、人と妖、人と機のハーフというのはありますが、それぞれの流れを受け継ぐ方がいるとは……」

「やっぱり珍しいか?」

「相当珍しいかと」

「ふ~ん……」

「記憶の方は……?」

 老人が聞きづらそうに尋ねる。タイヘイが頭をかく。

「いや~それが曖昧なんだよな……」

「ふむ……恐らくはこの四国のご出身かと思われますが……」

「それすらはっきりしないんだよな……」

「まあ、そういったものは何かの拍子に思い出すことがあるかもしれませんからな……」

「そうなのか?」

「専門家ではないので、はっきりとそうだとは言えませんが……」

「希望はあるってことだな」

「そうです」

「そうか……それにしても、この集落に受け入れてもらえて良かったな」

 タイヘイが周囲を見回す。

「はい。ただ、心配事がありまして……」

「うん?」

「我々の集落同様、ここも狙われるのではないかと……」

「ああ、その辺は手を打ってある」

「手ですか?」

「後で説明するよ」

「はあ……」

「それよりもだ、昨日は結局バタバタして聞けなかったんだが……」

「なんでしょうか?」

「国を造る為の道筋ってやつだよ」

「ああ……」

「だいぶか細いみたいだけどな」

 タイヘイが苦笑を浮かべる。

「いえ、それがそうでもしれないかもしれません……」

「ん?」

「可能性はわずかかもしれませんが高まったかと……」

「ほう、なぜそう思う?」

「あなたという存在です」

「俺?」

 タイヘイは自らを指差す。

「ええ、ヒトとケモノとアヤカシとキカイの流れを受け継ぐあなたという稀有な存在は、新たな時代の象徴たりえるかもしれません」

「大げさだろう」

「とはいえ、ご自身でもなにか運命めいたものを感じておられるのでしょう?」

「まあな」

 老人の問いにタイヘイは頷く。老人は話を続ける。

「ですから、あなたが旗頭となるのです」

「旗頭?」

「言ってしまえば、勢力を持つということですな」

「それは……簡単に行くかね?」

「もちろん、困難を伴うでしょう。ただ……」

「ただ?」

「あなたの強さならあるいは……」

「結局ものを言うのはこれか」

 タイヘイは力こぶを作ってみせる。

「ええ、ですがもちろん、話し合いなど平和的な手段で済めば、それに越したことはないのですけれども……」

「う、うん、まあ、それはそうだな……」

 タイヘイは深々と頷く。

「……」

 老人がじっとタイヘイを見つめる。

「そ、そうなるように努力するよ」

「それは良かった。いや、あなたの身を案じておるのです」

「多分無理そうだけどな……」

 タイヘイが小声で呟く。老人が首を傾げる。

「なにか?」

「い、いや、なんでもない! それより勢力を持つって、具体的にはどうすれば良いんだ?」

「この辺りの集落群とその周辺は、四つの国の勢力がそこまで及んでいない、緩衝地帯ということは申し上げましたな?」

「ああ、聞いた」

「四つの国に対して不満を持っている者もそれなりの数がいるのです」

「へえ……っていうことは……つまり」

「ええ、その連中を一つに束ねることが出来れば……」

「四つの国にも対抗出来るだけの勢力が出来上がるってことか」

「はい」

「なるほどな」

「ですが、いずれも一筋縄ではいかない連中です……」

「国を相手しようってんだ、多少荒っぽい方が頼りになる」

「ふむ、そういう考え方もありますな」

「で? そいつらとはどこに行けば会える?」

「この集落を中心に考えれば……南西の森、北東の林、南東の山です」

「ほう……」

「簡単ではありますが、地図を用意しました。赤い点がこの集落、青く塗ってある辺りが、その連中がいると思われる場所です」

 老人が紙をタイヘイに渡す。タイヘイが礼を言う。

「ありがてえ、早速向かってみるぜ!」

「ご無事をお祈りしております……あの、それで……」

「うん?」

「打ってある手というのは?」

「ああ、それな……」

「…………」

 出発の準備を整えたタイヘイが語りかける。

「俺は少しここを留守にするが、この集落になにかあれば、お前ら……分かっているな?」

「は、はい!」

 豚頭たちがビシっと整列する。

「しっかり警備を頼むぜ……お前らもありがとうな」

「ふん……」

「任せたぜ、イノサル」

「イノマルだ!」

「情けない話ですが、亜人連合に戻っても居場所はないでしょうから……」

「よろしくな、シカモ」

「シカオです……」

「制裁を受ける可能性もあるからね……とりあえずはここに身を寄せるとするわ」

「お願いするぜ、ミボウジン」

「フジンよ!」

「それじゃあ行くか!」

 タイヘイが勢いよく走り出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...