【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
42 / 50
第一章

第11話(1)お眼鏡違い

しおりを挟む
                  11

「……ふっ、やはり貴女という人は聡明だ……」

 ひと呼吸置いてから、ムツキが笑う。

「ムツキ、否定しないのですね……」

「ああ、眼鏡のつるうんぬんは実はかまをかけていたとか? 残念ながら、僕にもそれほどの余裕があるわけではないのですよ」

 ムツキが肩をすくめる。

「そ、そんな……」

 カンナが信じられないといった表情になる。ムツキがそれを見て首を傾げる。

「? そこまでショックを受けることですか?」

「そ、それは受けるでしょう!」

「何故?」

「何故って、貴方はわたくしにとっては家庭教師または師匠のような存在……!」

「そこです」

 ムツキが右手の人差し指を立てる。

「え?」

「何故王女の教育係に僕が任命されたのかご存知ですか?」

「そ、それは、貴方が周囲に比べてひときわ優秀だから……」

「そう、僕は努力に努力を重ねた……群を抜くためにね。それは何故でしょうか?」

「な、何故?」

「そうです、何故でしょう?」

「……分かりません」

 カンナが首を左右に振る。ムツキは笑みを浮かべながらため息をつく。

「はあ……好いていたというわりには、僕のことに関してはそれほど興味があったというわけではないようですね」

「そ、そんな……」

「よくある憧れの一種に過ぎなかったのでしょう。それを好意だと勘違いした……」

「そんなことはありません!」

 カンナが声を上げる。ムツキが手を挙げてそれをなだめる。

「まあ、それは別にどうでも良いのです」

「良くはありません!」

「それよりも」

「それよりも?」

「……僕の血筋については特にお調べになっていないようですね」

「血筋?」

 首を傾げるカンナを見て、ムツキが再度ため息をつく。

「……王女のまわりも大分うかつというか……いや、僕がすっかり舐められていたということでしょうか……まあ、そのように振る舞った部分もありますが……」

「話が見えません」

「……僕も王家の血を引く者なのですよ」

「!」

 ムツキの言葉を聞いてカンナが驚く。

「とは言っても、大分遡らなければなりませんが……四国が現在に近い状態に分かたれた辺りまでですね……そう、この『愛の国』が成立した頃です」

「……」

「王宮内の権力闘争に敗れた僕の先祖は、王家自体から追放された……ご丁寧に――当然と言えば当然なのですが――その存在は記録の類からほぼ抹消されております」

「な、なんと……」

「……とは言っても、聡明な貴女ならばある程度調べれば分かる、察しがつくことだと思ったのですが……やはり僕に対してそれほどの興味関心が無かったということですね」

「そ、そんなことは……!」

「いえ、別にショックなどは受けておりません。それは大した問題ではありませんから……そんなことよりもあらためて……」

 ムツキが眼鏡の蔓を触りながら話す。

「あらためて?」

「……この国を僕のものにさせて頂きます」

「! な、なにを⁉」

「今申し上げたように、僕も王家の血を引く者……この国を治める資格は有している」

「し、資格があるからと言って……」

「ん?」

「国民がいきなりの話に納得するでしょうか?」

「まあ、血筋の話はあくまでおまけのようなものです」

「おまけ?」

「……国民からたいへん人気のある貴女の師匠的な存在ということで、僕自身も大分崇敬を集めています。権力移行は存外スムーズに進むことでしょう。これは貴女に感謝しなければならないかもしれませんね」

 ムツキが微笑む。カンナが俯きがちに呟く。

「それならば……」

「はい?」

「わたくしをこのままにしておくわけにはいかないでしょう!」

 カンナが顔を上げ、薙刀を構える。

「ふむ、それは確かにそうですね……」

 ムツキが腕を組んで頷く。カンナがさらに声を上げる。

「投降なさい!」

「? 何故そうなるのです?」

「貴方と争いたくはありません!」

「その口ぶり……争った結果が既に見えているようですね」

 笑みを浮かべるムツキに対し、カンナが薙刀の切っ先を向ける。

「貴方もよく知っての通りです! 今やわたくしの薙刀の腕前は貴方の武芸を遥かに凌駕した、してしまった!」

「……これ以上は無駄な抵抗だと」

「そういうことです!」

「ふむ……」

 ムツキがカンナにゆっくりと近づく。カンナが戸惑い気味に声を上げる。

「む、向かってくるのなら容赦はしませんよ!」

「ほう……」

「素手の貴方に何が出来るというのです!」

「……こういうことが出来ます」

「がはっ⁉」

 ムツキが右手を掲げると、衝撃波のようなものが発生し、カンナが壁にめり込む。

「僕の本領はこちらですよ? 武芸など僕に言わせれば児戯のようなものです」

「ぐっ……!」

 壁から床に落ちたカンナが尻餅をつく。ムツキが淡々と呟く。

「……薙刀を手放さないのは感心すべきところでしょうか。もっともその体勢では満足に振れないと思いますがね」

「ちょ、超能力……?」

「そういう俗っぽい言い方はあまり好きではありませんね。僕は神官の血を汲む者でもあります。言うなればこれは神力です」

「神力……」

 ムツキが三度ため息をつく。

「貴女が聡明だというのはどうやら僕のお眼鏡違いだったのかもしれませんね。僕のこの力に全く気が付かないとは……眼鏡のレンズ、交換しましょうかね……」

 ムツキがわざとらしく眼鏡を外す。カンナが呟く。

「……眼鏡をかけていた方が良かったですよ」

「何? うおっ⁉」

 カンナが薙刀を横向けにかざす。薙刀が光る。その眩しさにムツキがたじろいだ隙に、カンナはすっと立ち上がり、薙刀を構えて叫ぶ。

「もう一度言います! ムツキ! 投降なさい!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...