【第一章完】四国?五国で良いんじゃね?

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第12話(2)足癖と酒癖

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「は、速さ特化だと……?」

 タイヘイが起き上がる。フンミが感心する。

「へえ、まだ起き上がるかい?」

「あ、ああ……」

 タイヘイがゆっくりと立ち上がる。

「タイヘイ殿!」

 カンナが声を上げる。

「ふん!」

「む!」

「遅えよ!」

「がはっ!」

 フンミが距離を詰めてきたことに対し、ガードを固めようとするタイヘイだったが、そのスピードに反応が追いつかず、攻撃を食らってしまう。

「はっ、どうした?」

「くっ……」

「おらおらっ!」

「ぐうっ……!」

 フンミが連続攻撃をかける。タイヘイはついていくことが出来ない。

「おらあっ!」

「ぐはっ!」

 フンミの拳を受け、タイヘイが再び倒れ込む。フンミが鼻で笑う。

「はん、こんなもんか……」

「ぐっ……」

 タイヘイが再び立ち上がる。フンミが肩をすくめる。

「そのまま寝ていた方が良かったんじゃねえか?」

「酒は一人で飲んでもつまらねえだろう?」

「お前さんじゃあ、酒の肴にならねえよ」

「へっ、そうかい……」

「そうだよ」

「その割には……」

「あん?」

「とどめをさせていないな」

「……」

「何故だか分かるか?」

「……なんだよ?」

「速さに特化するあまり、一撃一撃の重さが軽いんだよ」

「ああん?」

「もっとしっかりと叩き込んでこいよ……!」

 タイヘイが自らの胸をドンと叩く。

「特別武術師範の俺に対して指導とは……随分と傲慢だな」

「これは余裕ってやつだよ」

「お望み通り、叩きこんでやるよ!」

 フンミがタイヘイに迫る。

「はっ!」

「ぬおっ! なっ⁉」

 フンミが転倒する。何事かと自らの脚を確認してみると、切り傷がある。次いでタイヘイに視線を移すと、両手が鋭い刃と化したタイヘイが立っていた。

「ちっ、仕留めきれなかったか……」

「な、なんだ、その姿は⁉」

 舌打ちするタイヘイに対し、フンミが問う。

「これか? かまいたちだ」

「かまいたち?」

「簡単に言うと、風を操る妖怪みたいなもんだ」

「妖怪だと?」

「ああ、そうだ」

「人と獣のハーフじゃねえのか、てめえは?」

「え?」

「え?じゃねえよ、『妖』の流れも汲むとは聞いてねえぞ!」

「そりゃあ、言ってねえからなあ」

 タイヘイはわざとらしく大げさに両手を広げる。

「ちっ……俺を誘いやがったな?」

「ん?」

「しらばっくれんな、俺の動きを直線的に限定させて斬撃を放った……そうだろう?」

「……まあ、それくらい気付くか……」

「タイヘイ殿! そう簡単に手の内を明かしてしまっては……!」

「まあまあ、心配すんな、姫さん」

 カンナに対し、タイヘイは片手を挙げる。

「しかし……!」

「ちょうど良いハンデさ」

「! ハンデだと? 舐めやがって……!」

「お、怒ったか?」

「ふざけんなよ!」

「おっと⁉」

 タイヘイの前からフンミの姿が消えたようになる。フンミが叫ぶ。

「依然として、俺の速さを捉え切れていないことには変わりはない! 対して、俺はお前のその刃だか、鎌だかの軌道はもう見た! 終わりだ!」

「……よっと!」

「! ぐ、ぐはっ……!」

 タイヘイの後ろに回り込んだフンミだが、斬撃を食らって仰向けに倒れる。片足を刃に変えて、後ろに軽く上げたタイヘイが笑う。

「……手の内は明かしたが、足の内は明かしてなかったんだな、これが」

「あ、足も変化するのかよ……」

「どうやらそうみてえだ」

「くそが……」

 フンミがゆっくりと立ち上がる。振り返ったタイヘイが首を傾げる。

「攻撃が浅かったか? だけど、もう動かない方が良いんじゃねえか?」

「ふん、まだだ……!」

 フンミがひょうたんを取り、酒を飲む。タイヘイが顔をしかめる。

「うわっ……傷に染みるぜ?」

「ヒック! 余計な心配だよ!」

 フンミが両手を広げてポーズを取る。タイヘイが首を捻る。

「……虫か?」

「違えよ! 鳥だ!」

「鳥?」

「はっ!」

「むっ⁉」

 飛ぶように舞い上がったフンミがタイヘイの斜め上に接近する。

「そらそらっ!」

「ごはっ⁉」

 フンミの蹴りを食らったタイヘイが後方に吹っ飛ぶ。

「ふん……」

「と、飛んでいる⁉」

 カンナが驚く。フンミが空中に浮かんでいるからである。タイヘイが半身を起こす。

「くぞっ、酒癖が悪いな……」

「そう褒められると……照れるな」

「褒めてねえよ!」

「そうか? まあ、技量特化の『朱雀の型』……とくと味わえ」

 フンミが空中に浮いたまま両手を翼のように大きく広げ、あらためて構えを取る。
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