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第1集
第3話(2)硬派な作品
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「あ……」
「えっと……」
「いや失礼、こちらの話です……」
私は口を抑える。
「こちらの話?」
「羨ましいと思って……」
「う、羨ましい?」
「い、いえ、お名前をお伺いしても?」
「あ、マルガリータです」
「お住まいはどちらに?」
「北の洞窟です」
「……はい、確認しました。えっと、マルガリータさんは……」
「はい」
「ス、スライムの方ですか?」
「そうです」
そう、目の前にいる方は液状の形をしたスライムなのだ。まさかスライムの方が、小説家を目指しているとは……。
「えっと……」
「話しづらいですか?」
「い、いや、まあなんというか……はい」
私は苦笑交じりで返答する。
「ちょっとお待ちください……」
「?」
「……よいしょ」
「!」
私は驚いた。マルガリータさんが人間のような形態になったからである。顔もついている。目鼻立ちも整っている。口もある。その口から言葉が発せられる。
「お待たせしました」
「い、いえ……」
「移動などは通常態などが便利なもので、ついそのままで来てしまいました……」
「そ、そうなのですか……」
「すみません」
「い、いえ、こちらこそすみません」
私とマルガリータさんは同時に頭を下げる。
「……」
「あ、どうぞお座り下さい。あっと、その前に……」
席に着く前に私は名刺をマルガリータさんに渡す。
「モリ=ペガサスさんですか……」
「ええ、モリとお呼び下さい」
「……モリさんはニッポンからの転移者っていうのは本当ですか?」
「ああ、そうです」
隠してもしょうがないことだと思い、私は素直に頷く。
「すごい……。ボク、転移者の方、初めて見ました」
マルガリータさんは目をキラキラと輝かせてこちらを見てくる。
「そ、そうですか……しかし、マルガリータさんの……」
「マルで良いですよ」
「え?」
「みんなそう呼びますから」
「は、はあ……マルさんのお住まいの方にも私のことが知られているのですか?」
「ええ、もう結構な噂になっていますよ、カクヤマ書房さんにそういう編集さんがいるって」
「そ、そうなのですか……で、あればですね……ごほん」
私は咳払いをひとつ入れる。マルさんが首を傾げる。
「?」
「ここがカクカワ書店ではなく、カクヤマ書房だということはご存知なのですね?」
「ええ、それはもちろんです」
もはや毎回のことになりつつあるが、後で知らなかったと言われても困るので、このことはきちんと確認しておかなければならない。
「では、マルさんは我が社のレーベルから小説を出版することになっても構わないということですね?」
「はい。原稿を送り間違ったのはこちらのミスですから。こうしてお声がけいただいたのも一つの縁なのかなと思いまして」
「ふむ、そうですか……」
「はい」
前向きなのはこちらとしてもありがたい。私はマルさんの送ってきた原稿を取り出して、机の上に置く。
「それでは早速ですが、打ち合わせを始めましょう」
「お願いします」
マルさんが再び頭を下げる。
「原稿を読ませて頂いたのですが……」
「はい……」
「率直に言って……」
「は、はい……」
「読み応えがありました」
「ほ、本当ですか?」
「ええ」
「よ、良かった……」
マルさんが胸をなでおろす。
「ただですね……」
「は、はい、なんでしょう?」
「なんと言いますか……」
「…………」
「う~ん……」
「……言ってください」
沈黙に痺れを切らしたマルさんが話しの続きを促してくる。私は口を開く。
「気になる点がいくつかありまして……」
「はい」
「まず一つ目は……」
「一つ目は?」
「ちょっと長いですね」
「長い?」
「文量が多いとも言い換えられます。ボリュームがたっぷり過ぎますね」
「ボ、ボリュームが多い……」
「二つ目は……」
「二つ目は?」
「言い回しや使っている語句などがやや難解ですね」
「あ、ああ……」
「もう少し分かりやすい言葉に変換しないと、読者の方がついてこられないと思います」
「そ、そうですか……」
「三つ目ですが……」
「け、結構多いですね」
「ご安心ください、これで最後です」
「あ、そうですか……」
「むしろこの一点に集約されるのですが……」
「集約される?」
「作品全体があまりにも硬派過ぎます」
「こ、硬派⁉」
「はい、硬過ぎます」
著者の方は柔らかそうなのに、と言いかけてやめた。セクハラになる可能性がある。
「えっと……」
「いや失礼、こちらの話です……」
私は口を抑える。
「こちらの話?」
「羨ましいと思って……」
「う、羨ましい?」
「い、いえ、お名前をお伺いしても?」
「あ、マルガリータです」
「お住まいはどちらに?」
「北の洞窟です」
「……はい、確認しました。えっと、マルガリータさんは……」
「はい」
「ス、スライムの方ですか?」
「そうです」
そう、目の前にいる方は液状の形をしたスライムなのだ。まさかスライムの方が、小説家を目指しているとは……。
「えっと……」
「話しづらいですか?」
「い、いや、まあなんというか……はい」
私は苦笑交じりで返答する。
「ちょっとお待ちください……」
「?」
「……よいしょ」
「!」
私は驚いた。マルガリータさんが人間のような形態になったからである。顔もついている。目鼻立ちも整っている。口もある。その口から言葉が発せられる。
「お待たせしました」
「い、いえ……」
「移動などは通常態などが便利なもので、ついそのままで来てしまいました……」
「そ、そうなのですか……」
「すみません」
「い、いえ、こちらこそすみません」
私とマルガリータさんは同時に頭を下げる。
「……」
「あ、どうぞお座り下さい。あっと、その前に……」
席に着く前に私は名刺をマルガリータさんに渡す。
「モリ=ペガサスさんですか……」
「ええ、モリとお呼び下さい」
「……モリさんはニッポンからの転移者っていうのは本当ですか?」
「ああ、そうです」
隠してもしょうがないことだと思い、私は素直に頷く。
「すごい……。ボク、転移者の方、初めて見ました」
マルガリータさんは目をキラキラと輝かせてこちらを見てくる。
「そ、そうですか……しかし、マルガリータさんの……」
「マルで良いですよ」
「え?」
「みんなそう呼びますから」
「は、はあ……マルさんのお住まいの方にも私のことが知られているのですか?」
「ええ、もう結構な噂になっていますよ、カクヤマ書房さんにそういう編集さんがいるって」
「そ、そうなのですか……で、あればですね……ごほん」
私は咳払いをひとつ入れる。マルさんが首を傾げる。
「?」
「ここがカクカワ書店ではなく、カクヤマ書房だということはご存知なのですね?」
「ええ、それはもちろんです」
もはや毎回のことになりつつあるが、後で知らなかったと言われても困るので、このことはきちんと確認しておかなければならない。
「では、マルさんは我が社のレーベルから小説を出版することになっても構わないということですね?」
「はい。原稿を送り間違ったのはこちらのミスですから。こうしてお声がけいただいたのも一つの縁なのかなと思いまして」
「ふむ、そうですか……」
「はい」
前向きなのはこちらとしてもありがたい。私はマルさんの送ってきた原稿を取り出して、机の上に置く。
「それでは早速ですが、打ち合わせを始めましょう」
「お願いします」
マルさんが再び頭を下げる。
「原稿を読ませて頂いたのですが……」
「はい……」
「率直に言って……」
「は、はい……」
「読み応えがありました」
「ほ、本当ですか?」
「ええ」
「よ、良かった……」
マルさんが胸をなでおろす。
「ただですね……」
「は、はい、なんでしょう?」
「なんと言いますか……」
「…………」
「う~ん……」
「……言ってください」
沈黙に痺れを切らしたマルさんが話しの続きを促してくる。私は口を開く。
「気になる点がいくつかありまして……」
「はい」
「まず一つ目は……」
「一つ目は?」
「ちょっと長いですね」
「長い?」
「文量が多いとも言い換えられます。ボリュームがたっぷり過ぎますね」
「ボ、ボリュームが多い……」
「二つ目は……」
「二つ目は?」
「言い回しや使っている語句などがやや難解ですね」
「あ、ああ……」
「もう少し分かりやすい言葉に変換しないと、読者の方がついてこられないと思います」
「そ、そうですか……」
「三つ目ですが……」
「け、結構多いですね」
「ご安心ください、これで最後です」
「あ、そうですか……」
「むしろこの一点に集約されるのですが……」
「集約される?」
「作品全体があまりにも硬派過ぎます」
「こ、硬派⁉」
「はい、硬過ぎます」
著者の方は柔らかそうなのに、と言いかけてやめた。セクハラになる可能性がある。
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