17 / 50
第1集
第4話(4)人魚の異文化交流
しおりを挟む
「どうかしましたか?」
「ヨハンナさん……」
「はい?」
「この際なのですが……」
「はあ……」
「ジャンルを変えてみてはいかがでしょうか?」
「ええっ⁉」
私の提案にヨハンナさんが驚く。
「婚約破棄ものも一つのジャンルとして確立されてはいますが……読者層が限られます」
「限られる?」
「ええ、どうしても女性が主体になってしまいます」
「そ、それでもワタクシは別に構わないのですが……」
「それはもったいないです」
「もったいない?」
「ええ、せっかくのテンポの良い読みやすい文章をお書きになることが出来るのです。もっと幅広い読者を獲得出来るジャンルに挑戦してみるべきだと思います」
「そうは言いましても……」
ヨハンナさんが困ったような表情になる。
「……ダメですか?」
「例えばどんなジャンルですか?」
「そうですね……」
私は腕を組む。
「……」
「ひとつキーワードになりそうなのが……」
私は右手の人差し指を立てる。
「キーワード?」
「ええ」
「なんですか?」
「『異文化コミュニケーション』です」
「!」
「異なる文化と触れあうことによって感じること……いわゆるカルチャーショックを書いてみると面白いのではないでしょうか」
「カルチャーショック……」
「そうです」
「そ、その場合、主役は人魚ということですか?」
「そうなります。ヨハンナさんにしか書けないものです」
「ワタクシにしか書けないこと……」
「いかがでしょうか?」
「興味は湧いてきました」
「そうですか」
「で、ですが……」
「はい?」
「カルチャーショックとは例えば何でしょうか?」
「まあ、分かりやすく言えば、『食』でしょうか」
「しょ、食ですか?」
「はい」
「ふむ……」
ヨハンナさんが顎に手を当てて考え込む。私はハッとする。
「も、もしかして、ヨハンナさん……」
「え?」
「ベ、ベジタリアンだったりしますか?」
「いいえ?」
ヨハンナさんは首を振る。
「あ、そ、そうですか……」
「お魚さんとかは食べませんが……」
「お肉は?」
「全然オッケーです」
ヨハンナさんが右手の親指をグッと立てる。私は戸惑う。
「オ、オッケーですか……」
「はい、むしろウエルカムです」
「そ、そうですか……」
何かイメージが違うな……。いや、こちらが勝手なイメージを抱いていただけだが。ヨハンナさんが首を傾げる。
「何か問題が?」
「い、いえ、大丈夫です」
「それで?」
「は、はい……例えば『人魚のグルメ』、これはインパクトあると思うのです」
「グルメですか……」
「ええ、幅広い層に訴求出来るはずです」
「なるほど……」
「もちろん、それはあくまでも一要素としておいて他の要素を押し出すことも出来るかなと思います」
「他の要素?」
「たとえば……『衣』ですね」
「衣……着るものですか?」
「はい、人魚の方が異なる種族の衣装を着てみるというのは、女性層に受けるかと」
「確かにファッション好きは多いですからね……」
ヨハンナさんが頷く。私は畳みかける。
「衣食とくれば『住』もありですね」
「住ですか……」
「はい、人魚の方による物件探しというのもなかなか興味深いです」
「ふむ……」
ヨハンナさんが腕を組む。
「ピンときませんか?」
「いや、面白そうではあると思います。ですが……」
「ですが?」
「お話にこう……起伏が足りないかなと」
「なるほど、起伏……」
「す、すみません、素人魚が知ったようなことを……」
ヨハンナさんが恐縮する。
「いえ、おっしゃりたいことは分かります」
「そ、そうですか……」
「……起伏を作るポイント、ありますよ……」
「ほ、本当ですか⁉」
「……サメです」
「サ、サメ……?」
「おぼろげなのですが、私の元いた世界では、困ったらサメというような具合で多くの創作物にサメが出ていました」
「こ、困ったらサメ⁉」
「ええ、サメを出せばパニックものとしての要素も出せます」
「た、確かに、でも……」
「でも?」
「中には荒っぽい、手の付けられないサメさんもいますが、基本的にワタクシたちはサメさんたちとも仲良くやっているのですが……」
「……まあ、悪役というわけではなく、一つのアクセントとして用いるとか」
「アクセント……うん、とりあえず異文化交流を一つの軸に据えて書いてみます」
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。打ち合わせはどうにかうまくいったようだ。
「ヨハンナさん……」
「はい?」
「この際なのですが……」
「はあ……」
「ジャンルを変えてみてはいかがでしょうか?」
「ええっ⁉」
私の提案にヨハンナさんが驚く。
「婚約破棄ものも一つのジャンルとして確立されてはいますが……読者層が限られます」
「限られる?」
「ええ、どうしても女性が主体になってしまいます」
「そ、それでもワタクシは別に構わないのですが……」
「それはもったいないです」
「もったいない?」
「ええ、せっかくのテンポの良い読みやすい文章をお書きになることが出来るのです。もっと幅広い読者を獲得出来るジャンルに挑戦してみるべきだと思います」
「そうは言いましても……」
ヨハンナさんが困ったような表情になる。
「……ダメですか?」
「例えばどんなジャンルですか?」
「そうですね……」
私は腕を組む。
「……」
「ひとつキーワードになりそうなのが……」
私は右手の人差し指を立てる。
「キーワード?」
「ええ」
「なんですか?」
「『異文化コミュニケーション』です」
「!」
「異なる文化と触れあうことによって感じること……いわゆるカルチャーショックを書いてみると面白いのではないでしょうか」
「カルチャーショック……」
「そうです」
「そ、その場合、主役は人魚ということですか?」
「そうなります。ヨハンナさんにしか書けないものです」
「ワタクシにしか書けないこと……」
「いかがでしょうか?」
「興味は湧いてきました」
「そうですか」
「で、ですが……」
「はい?」
「カルチャーショックとは例えば何でしょうか?」
「まあ、分かりやすく言えば、『食』でしょうか」
「しょ、食ですか?」
「はい」
「ふむ……」
ヨハンナさんが顎に手を当てて考え込む。私はハッとする。
「も、もしかして、ヨハンナさん……」
「え?」
「ベ、ベジタリアンだったりしますか?」
「いいえ?」
ヨハンナさんは首を振る。
「あ、そ、そうですか……」
「お魚さんとかは食べませんが……」
「お肉は?」
「全然オッケーです」
ヨハンナさんが右手の親指をグッと立てる。私は戸惑う。
「オ、オッケーですか……」
「はい、むしろウエルカムです」
「そ、そうですか……」
何かイメージが違うな……。いや、こちらが勝手なイメージを抱いていただけだが。ヨハンナさんが首を傾げる。
「何か問題が?」
「い、いえ、大丈夫です」
「それで?」
「は、はい……例えば『人魚のグルメ』、これはインパクトあると思うのです」
「グルメですか……」
「ええ、幅広い層に訴求出来るはずです」
「なるほど……」
「もちろん、それはあくまでも一要素としておいて他の要素を押し出すことも出来るかなと思います」
「他の要素?」
「たとえば……『衣』ですね」
「衣……着るものですか?」
「はい、人魚の方が異なる種族の衣装を着てみるというのは、女性層に受けるかと」
「確かにファッション好きは多いですからね……」
ヨハンナさんが頷く。私は畳みかける。
「衣食とくれば『住』もありですね」
「住ですか……」
「はい、人魚の方による物件探しというのもなかなか興味深いです」
「ふむ……」
ヨハンナさんが腕を組む。
「ピンときませんか?」
「いや、面白そうではあると思います。ですが……」
「ですが?」
「お話にこう……起伏が足りないかなと」
「なるほど、起伏……」
「す、すみません、素人魚が知ったようなことを……」
ヨハンナさんが恐縮する。
「いえ、おっしゃりたいことは分かります」
「そ、そうですか……」
「……起伏を作るポイント、ありますよ……」
「ほ、本当ですか⁉」
「……サメです」
「サ、サメ……?」
「おぼろげなのですが、私の元いた世界では、困ったらサメというような具合で多くの創作物にサメが出ていました」
「こ、困ったらサメ⁉」
「ええ、サメを出せばパニックものとしての要素も出せます」
「た、確かに、でも……」
「でも?」
「中には荒っぽい、手の付けられないサメさんもいますが、基本的にワタクシたちはサメさんたちとも仲良くやっているのですが……」
「……まあ、悪役というわけではなく、一つのアクセントとして用いるとか」
「アクセント……うん、とりあえず異文化交流を一つの軸に据えて書いてみます」
「よろしくお願いします」
私は頭を下げる。打ち合わせはどうにかうまくいったようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる