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第1集
第7話(2)身の危険を感じる
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「は、はあ?」
女性は露骨に困惑する。
「あ、す、すみません。初めまして……」
「あ、ああ……」
「大変失礼しました、どうぞおかけ下さい……」
私は席に座るように促す。
「うむ……」
「お名前をお伺いしても?」
「クラウディアという……」
「えっと……お住まいはどちらに?」
「詳細は言えないのだが……」
「え?」
「魔王城だ」
「ま、魔王城⁉」
「ああ、我は魔族だからな」
クラウディアさんは背中の黒い翼を軽くはためかせる。
「な、なるほど……」
「それで問題ないか?」
「は、はい、問題ないです……」
「それは結構……」
場所がよく分からないのは問題なのだが、魔王の城について細かく問い質したら、冗談抜きで身の危険だ、命がいくつあっても足りないだろう。
「……えっと、クラウディアさんは……」
「うむ」
「魔族の方ということで……」
「ああ、この翼と……」
クラウディアさんが頭を指差す。両耳の上あたりから立派な二本の角が折れ曲がって生えている。艶のある綺麗な黒髪とは対照的に白い角だ。
「角ですね」
「ああ、魔族の特徴だ」
「サキュバスの方の角とはちょっと違うのですね」
「サキュバスも広義的には魔族だが、我々とは微妙に違う」
「微妙に?」
「角の生え方や翼の大きさなどだ」
「ああ、なるほど……」
私は頷いて、クラウディアさんを見る。美しい、整った顔立ちをしている。
「……なにか?」
「い、いえ、なにも!」
「そうか。それならば良いのだが……」
「あ、そうだ……失礼をしました、順序が逆になってしまいました……」
席に着く前に私は名刺をクラウディアさんに渡す。
「モリ=ペガサスというのか……」
「ええ、モリとお呼び下さい」
「……ひとつ聞いてもいいか?」
「はい、どうぞ」
「……モリはニッポンからの転移者というのは本当なのか?」
「ああ、はい」
すっかり慣れた質問なので、私はあっさり頷く。
「ふむ……なんというか……」
「なんというか?」
「貴様のような転移者は初めて見たな」
「そ、そうですか?」
「ああ、はっきり言ってあまり強さを感じない」
「そ、そうですか……魔族の方にも知られているとは、なんとも畏れ多いことです……」
「うむ、なかなかな噂になっている、カクヤマ書房にそういう編集がいると。魔王城でもよく話題に上がる」
「そ、そうなんですか……」
「ああ」
魔王城で話題になるのはあまり歓迎したくないことだ。
「な、なるほど……で、あればですね……もう一点確認なのですが」
私は指を一本立てる。クラウディアさんが首を傾げる。
「?」
「ここがカクカワ書店ではなく、カクヤマ書房だということはご承知なのですね?」
「ああ、もちろんだ」
もはや毎回恒例のこととなりつつあるが、後で知らなかったと言われても、こちらとしても困ってしまうので、このことに関してはきちんと確認をとっておかなければならない。冗談抜きで命に関わりそうなことだからだ。私は重ねて尋ねる。
「……それでは、クラウディアさんは我が社のレーベルから小説を出版することになっても構わないということですね?」
「うむ。原稿を間違えて送ってしまったのはこちらの手違いなのだからな。それにこうして声をかけてもらったのもいわゆる一つの縁というやつなのではとも思ってな」
「因縁じゃないことを祈ります……」
「うん?」
「い、いえ、何でもありません……」
「ああ」
ポジティブに考えてくれているのはこちらとしても実にありがたいことだ。しかしちょっと待てよ?こちらの返信はどうやって魔王城に届いたのだろうか?気になったが、あまり詮索しない方が身のためだろう……。私はクラウディアさんの送ってきてくれた原稿を取り出して、机の上に置く。
「……それでは早速ですが、打ち合わせを始めさせていただきます」
「うむ、よろしく頼む」
クラウディアさんが腕を組んで背もたれにドカッと寄りかかる。とても打ち合わせに相応しい態度とは思えないが……それを指摘したら、大変なことになりそうなので、私は気にしないことにする。
「ええっと、原稿を読ませて頂いたのですが……」
「……」
「う~ん、なんと言いましょうか……」
「む?」
「えっとですね……」
「……気にするな、率直な批評を頼む」
「は、はい……」
そうは言われても。こちらが気圧されてしまう。
「………」
「お、面白かったです」
「本当か?」
「は、はい……」
「それはなにより……」
クラウディアさんがほっとしたように笑みを浮かべる。
「ただしかし……」
「しかし?」
「う~ん、これはなんと言ったら良いのでしょうか……」
「……どうぞ、気兼ねなく言ってくれ」
クラウディアさんが話の続きを促してくる。
「……それでは、はっきり申し上げますが……」
「ああ」
「これではウケないと思います」
「なっ⁉」
クラウディアさんは驚く。
女性は露骨に困惑する。
「あ、す、すみません。初めまして……」
「あ、ああ……」
「大変失礼しました、どうぞおかけ下さい……」
私は席に座るように促す。
「うむ……」
「お名前をお伺いしても?」
「クラウディアという……」
「えっと……お住まいはどちらに?」
「詳細は言えないのだが……」
「え?」
「魔王城だ」
「ま、魔王城⁉」
「ああ、我は魔族だからな」
クラウディアさんは背中の黒い翼を軽くはためかせる。
「な、なるほど……」
「それで問題ないか?」
「は、はい、問題ないです……」
「それは結構……」
場所がよく分からないのは問題なのだが、魔王の城について細かく問い質したら、冗談抜きで身の危険だ、命がいくつあっても足りないだろう。
「……えっと、クラウディアさんは……」
「うむ」
「魔族の方ということで……」
「ああ、この翼と……」
クラウディアさんが頭を指差す。両耳の上あたりから立派な二本の角が折れ曲がって生えている。艶のある綺麗な黒髪とは対照的に白い角だ。
「角ですね」
「ああ、魔族の特徴だ」
「サキュバスの方の角とはちょっと違うのですね」
「サキュバスも広義的には魔族だが、我々とは微妙に違う」
「微妙に?」
「角の生え方や翼の大きさなどだ」
「ああ、なるほど……」
私は頷いて、クラウディアさんを見る。美しい、整った顔立ちをしている。
「……なにか?」
「い、いえ、なにも!」
「そうか。それならば良いのだが……」
「あ、そうだ……失礼をしました、順序が逆になってしまいました……」
席に着く前に私は名刺をクラウディアさんに渡す。
「モリ=ペガサスというのか……」
「ええ、モリとお呼び下さい」
「……ひとつ聞いてもいいか?」
「はい、どうぞ」
「……モリはニッポンからの転移者というのは本当なのか?」
「ああ、はい」
すっかり慣れた質問なので、私はあっさり頷く。
「ふむ……なんというか……」
「なんというか?」
「貴様のような転移者は初めて見たな」
「そ、そうですか?」
「ああ、はっきり言ってあまり強さを感じない」
「そ、そうですか……魔族の方にも知られているとは、なんとも畏れ多いことです……」
「うむ、なかなかな噂になっている、カクヤマ書房にそういう編集がいると。魔王城でもよく話題に上がる」
「そ、そうなんですか……」
「ああ」
魔王城で話題になるのはあまり歓迎したくないことだ。
「な、なるほど……で、あればですね……もう一点確認なのですが」
私は指を一本立てる。クラウディアさんが首を傾げる。
「?」
「ここがカクカワ書店ではなく、カクヤマ書房だということはご承知なのですね?」
「ああ、もちろんだ」
もはや毎回恒例のこととなりつつあるが、後で知らなかったと言われても、こちらとしても困ってしまうので、このことに関してはきちんと確認をとっておかなければならない。冗談抜きで命に関わりそうなことだからだ。私は重ねて尋ねる。
「……それでは、クラウディアさんは我が社のレーベルから小説を出版することになっても構わないということですね?」
「うむ。原稿を間違えて送ってしまったのはこちらの手違いなのだからな。それにこうして声をかけてもらったのもいわゆる一つの縁というやつなのではとも思ってな」
「因縁じゃないことを祈ります……」
「うん?」
「い、いえ、何でもありません……」
「ああ」
ポジティブに考えてくれているのはこちらとしても実にありがたいことだ。しかしちょっと待てよ?こちらの返信はどうやって魔王城に届いたのだろうか?気になったが、あまり詮索しない方が身のためだろう……。私はクラウディアさんの送ってきてくれた原稿を取り出して、机の上に置く。
「……それでは早速ですが、打ち合わせを始めさせていただきます」
「うむ、よろしく頼む」
クラウディアさんが腕を組んで背もたれにドカッと寄りかかる。とても打ち合わせに相応しい態度とは思えないが……それを指摘したら、大変なことになりそうなので、私は気にしないことにする。
「ええっと、原稿を読ませて頂いたのですが……」
「……」
「う~ん、なんと言いましょうか……」
「む?」
「えっとですね……」
「……気にするな、率直な批評を頼む」
「は、はい……」
そうは言われても。こちらが気圧されてしまう。
「………」
「お、面白かったです」
「本当か?」
「は、はい……」
「それはなにより……」
クラウディアさんがほっとしたように笑みを浮かべる。
「ただしかし……」
「しかし?」
「う~ん、これはなんと言ったら良いのでしょうか……」
「……どうぞ、気兼ねなく言ってくれ」
クラウディアさんが話の続きを促してくる。
「……それでは、はっきり申し上げますが……」
「ああ」
「これではウケないと思います」
「なっ⁉」
クラウディアさんは驚く。
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