【第1章完】スキル【編集】を駆使して異世界の方々に小説家になってもらおう!

阿弥陀乃トンマージ

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第1集

第7話(4)魔族の裏話

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「どうかしたか?」

 クラウディアさんが頭を抑える私に尋ねる。

「い、いえ、なんでもありません……」

 私は手を左右に振る。

「それにしても……我ながら良く出来た原稿だと思ったのだが……」

 クラウディアさんが俯く。

「今のお話……」

「うん?」

 私の呟きにクラウディアさんが反応する。

「人がある程度元気でないと魔族の方が困るというお話です」

「ああ」

「新鮮な驚きでした」

「そうか?」

 クラウディアさんが首を捻る。

「……それなんですよ」

「え?」

「視点をちょっと変えてみるんです」

「視点を変える?」

「はい」

「……ひょっとして、それが捻るということか?」

「ええ、そうです」

 私は頷く。

「ふむ、視点を変えるか……」

 クラウディアさんが顎をさする。

「……」

「どうすれば良いのだ?」

 私はクラウディアさんの原稿を手に取る。

「……このストーリーは魔王側の視点ですよね?」

「ああ、そうだな」

「それをちょっと変えるんです」

「どうやってだ?」

「魔王や魔王の側近ではなく、もっと下の身分の方を主人公にするんです」

「! 下の身分だと?」

「そうです、中間管理職とでも言いましょうか」

「その者を主人公にしてどうなる?」

「勇者が魔王城に攻めてきたときはどうされますか?」

「迎撃するな」

「その場合魔王様はどうされているのですか? 奥で休まれたままですか?」

「いや、一応魔王の間に出てきてもらうな……」

「そうなんですね」

「勇者パーティーの強さにもよるがな」

「しかし、わざわざ出てきていただくということは……」

「ん?」

「勇者にも頑張ってもらわないといけませんよね? 最下層で全滅したなんて拍子抜けもいいとこです」

「ま、まあ、それはそうだな……」

「そこです!」

「な、なにがだ⁉」

 私の言葉にクラウディアさんが戸惑う。

「勇者にはある程度頑張ってもらわないと困る……魔王様のお目にかかれる程度には……」

「……どういうことだ?」

「そこまでの導線作りを書いてみてはいかがでしょう?」

「ど、導線だと?」

「はい、そうです」

「た、例えば?」

「……魔王城には簡単にはたどり着けないんですよね?」

「あ、ああ……」

「しかし、たどり着いてもらわなければお話にならない……」

「そ、そうだな……」

「よって、それとなくヒントを散りばめておく……」

「そ、それとなくヒントってなんだ⁉」

「それはこれまでのご経験を生かして頂いて……」

「経験……」

 クラウディアさんが首を傾げる。

「なにかしらあるのではないでしょうか?」

「……まあ、思い当たる節は……ないことはないな」

「それは良かった。経験という言葉で思い付いたのですが……」

「なんだ?」

「勇者たちは経験を積み……いわゆる『経験値稼ぎ』ということをしながら、魔王城に向かってくると思うんですが……」

「ああ、何やらそんなことをやっているな……」

「勇者たちの遭遇するモンスターの配置も重要です」

「うむ……」

 クラウディアさんが頷く。

「いきなり強力なモンスターと戦わせたら、勇者パーティーが全滅してしまいます」

「そうだな。あとは基本的には要所の守備を固めるという意味で強力なモンスターを配置するようにしている」

「モンスターの扱いにも苦慮されているのでは?」

「生き物だからな、そうそう思う通りには動いてくれん」

「そのあたりの話も盛り込んでみてはいかがでしょうか?」

「ふむ……」

「さらに……」

「まだあるのか?」

「はい、あります」

「なんだ?」

「宝箱……アイテムです」

「ああ、それか……」

「妙なことに勇者たちに都合の良いものが置いてありますよね?」

「外れも混ぜているがな」

「そうなんですね」

「まあな」

「そういった設置の話でも掘り下げると色々あるんじゃないでしょうか?」

「中身が逆になっていったり、空だったりな……」

「あれはどういうことなんですか?」

「大体発注ミスか業者の手違いだな」

「ぎょ、業者がいるんですか?」

「ああ、あまり大きな声では言えないが」

「はあ……」

「腹立つこともあるな」

「腹立つこと?」

「せっかく置いたのに、それに気が付かないで通り過ぎる時だ」

「ああ、なるほど……」

「まったく、設置費用もタダではないというのに……」

 クラウディアさんが顔をしかめる。私は改めて問う。

「……イケるんじゃないでしょうか? そういった導線作りの際の苦労話……」

「ふむ……まあ、正直その手のネタならば事欠かん……その方向で書いてみるか……」

「よろしくお願いします」

 私は頭を下げる。打ち合わせはなんとかかんとかどうにかこうにかうまくいったようだ。
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