31 / 50
第1集
第8話(2)思わぬ顔合わせ
しおりを挟む
「……」
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………」
「……………………」
今、七人の作家志望者、私が担当している方々が顔を揃えている。エルフのルーシーさん、獣人のアンジェラさん、スライムのマルガリータさん、人魚のヨハンナさん、サキュバスのヘレンさん、騎士のザビーネさん、魔族のクラウディアさんだ。しかし、皆黙っている。私は沈黙に耐え切れず、口を開く。
「え、えっと……」
「モリ殿」
「は、はい?」
「これはどういうことか?」
ザビーネさんが刺すような口調で尋ねてくる。
「えっと……いわゆる一つのダブル……どころではないですね、セプタプルブッキングをしてしまいまして……」
私はハンカチを取り出して汗を拭う。
「何故にしてこうなった?」
「ついうっかりと言いますか……」
「ついうっかりというレベルか?」
ザビーネさんの眼光が鋭いものになる。
「お、おっしゃる通りでございます……」
私は頭を下げる。
「ひどいわ! アタシの他にも女がいたなんて……!」
「ヘレン殿、くだらない冗談は慎んで頂きたい……」
「あらま、場を和まそうと思ったのだけれど……」
ヘレンさんがペロっと舌を出す。
「別に他に担当する者がいてもなにも不思議ではない……だが!」
「は、はい……!」
「この扱いはあまりにも雑なのではないだろうか?」
「ま、まったくもって、おっしゃる通りでございます……申し訳ございません……」
私は頭を下げる。
「まあまあ、モリさんも色々とお疲れだったのですよ」
「ル、ルーシーさん……」
ルーシーさんが助け舟を出してくれる。なんて優しい……ひょっとしてこれが女神という存在だろうか?
「ニッポンジンは異世界でも人一倍責任感の強い国民だと聞いたことがあります」
ルーシーさんは自分の尖った耳に手を当てる。ザビーネさんが腕を組んで頷く。
「ふむ……」
「ここはニッポンジンらしいケジメをつけてくれると思います」
「……ん?」
流れが変わったな。
「……というわけでモリさんには『セップク』をしてもらいましょう!」
「ええっ⁉」
「それは自分も聞いたことがある……」
ザビーネさんが頷く。ルーシーさんが優しい笑顔を浮かべる。
「では、それで手打ちということで……」
「……方々、異存はないか?」
ザビーネさんが皆を見回す。
「よく分かんないけど、オレはそれで良いっすよ」
「ボクも異議なしです」
「ワタクシもそれで構いません」
アンジェラさん、マルガリータさん、ヨハンナさんが頷く。
「アタシもそれで良くってよ」
ヘレンさんがウインクする。
「どちらでも良い……」
クラウディアさんが頬杖を突きながら答える。ザビーネさんが頷く。
「……賛成多数だな、では……」
「モリさん、そこんとこよろしくお願いします♪」
ルーシーさんが右手の親指をグッと立てる。私は慌てて立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「え?」
「流石に命だけは勘弁して下さい!」
「ええ?」
「本当にこの度は私の不手際でございました! 申し訳ございません!」
私は頭を下げる。
「優しくしているようで脅すとは……ルーシーさん、綺麗な顔して怖いっすね……」
「いやいや、アンジェラさん、ワタシはそのようなつもりでは……」
ルーシーさんが手を左右に振る。
「これもエルフ千年の叡智ってやつですか……」
「マルガリータさん、ワタシはそんなに生きておりませんよ!」
ルーシーさんが声を上げる。
「セップクって何なのかしら?」
「……さあ?」
ヨハンナさんの問いにルーシーさんが首を傾げる。
「分かっていないことやらせようとしたの? 恐ろしい娘……」
「いや、恐ろしいって!」
ヘレンさんの言葉にルーシーさんが不服そうにする。
「……とにかく、申し訳ございませんでした!」
私は再度頭を下げる。ザビーネさんが口を開く。
「まあ、よく分からんが、それほど反省しているようならば許してやってもいいと思うのだが……方々、いかがだろうか?」
「待った」
「……なにか?」
ザビーネさんがクラウディアさんに視線を向ける。
「貴様が何故この場を仕切っている?」
「……仕切っているつもりは毛頭ないが」
「そういう態度が気に食わん」
「なんだと?」
ザビーネさんがややムッとする。
「虫だかなんだか知らんが……」
「騎士だ」
「どうでもいい」
「ふん、魔族はロクに発音も出来んのか?」
「なに?」
今度はクラウディアさんがムッとする。
「やるか?」
ザビーネさんが鞘に手をかける。クラウディアさんがそれを見て呟く。
「……ほう、覚悟があるのか?」
「ああ」
「おおっ! 騎士対魔族っすね! これは熱い!」
「ア、アンジェラさん、無邪気に煽らないで……」
ルーシーさんが慌てる。私も慌てる。
「止めてください、なんでもしますから!」
「……ほう?」
クラウディアさんが悪そうな笑みを浮かべる。魔族の面目躍如だ。
「………」
「…………」
「……………」
「………………」
「…………………」
「……………………」
今、七人の作家志望者、私が担当している方々が顔を揃えている。エルフのルーシーさん、獣人のアンジェラさん、スライムのマルガリータさん、人魚のヨハンナさん、サキュバスのヘレンさん、騎士のザビーネさん、魔族のクラウディアさんだ。しかし、皆黙っている。私は沈黙に耐え切れず、口を開く。
「え、えっと……」
「モリ殿」
「は、はい?」
「これはどういうことか?」
ザビーネさんが刺すような口調で尋ねてくる。
「えっと……いわゆる一つのダブル……どころではないですね、セプタプルブッキングをしてしまいまして……」
私はハンカチを取り出して汗を拭う。
「何故にしてこうなった?」
「ついうっかりと言いますか……」
「ついうっかりというレベルか?」
ザビーネさんの眼光が鋭いものになる。
「お、おっしゃる通りでございます……」
私は頭を下げる。
「ひどいわ! アタシの他にも女がいたなんて……!」
「ヘレン殿、くだらない冗談は慎んで頂きたい……」
「あらま、場を和まそうと思ったのだけれど……」
ヘレンさんがペロっと舌を出す。
「別に他に担当する者がいてもなにも不思議ではない……だが!」
「は、はい……!」
「この扱いはあまりにも雑なのではないだろうか?」
「ま、まったくもって、おっしゃる通りでございます……申し訳ございません……」
私は頭を下げる。
「まあまあ、モリさんも色々とお疲れだったのですよ」
「ル、ルーシーさん……」
ルーシーさんが助け舟を出してくれる。なんて優しい……ひょっとしてこれが女神という存在だろうか?
「ニッポンジンは異世界でも人一倍責任感の強い国民だと聞いたことがあります」
ルーシーさんは自分の尖った耳に手を当てる。ザビーネさんが腕を組んで頷く。
「ふむ……」
「ここはニッポンジンらしいケジメをつけてくれると思います」
「……ん?」
流れが変わったな。
「……というわけでモリさんには『セップク』をしてもらいましょう!」
「ええっ⁉」
「それは自分も聞いたことがある……」
ザビーネさんが頷く。ルーシーさんが優しい笑顔を浮かべる。
「では、それで手打ちということで……」
「……方々、異存はないか?」
ザビーネさんが皆を見回す。
「よく分かんないけど、オレはそれで良いっすよ」
「ボクも異議なしです」
「ワタクシもそれで構いません」
アンジェラさん、マルガリータさん、ヨハンナさんが頷く。
「アタシもそれで良くってよ」
ヘレンさんがウインクする。
「どちらでも良い……」
クラウディアさんが頬杖を突きながら答える。ザビーネさんが頷く。
「……賛成多数だな、では……」
「モリさん、そこんとこよろしくお願いします♪」
ルーシーさんが右手の親指をグッと立てる。私は慌てて立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「え?」
「流石に命だけは勘弁して下さい!」
「ええ?」
「本当にこの度は私の不手際でございました! 申し訳ございません!」
私は頭を下げる。
「優しくしているようで脅すとは……ルーシーさん、綺麗な顔して怖いっすね……」
「いやいや、アンジェラさん、ワタシはそのようなつもりでは……」
ルーシーさんが手を左右に振る。
「これもエルフ千年の叡智ってやつですか……」
「マルガリータさん、ワタシはそんなに生きておりませんよ!」
ルーシーさんが声を上げる。
「セップクって何なのかしら?」
「……さあ?」
ヨハンナさんの問いにルーシーさんが首を傾げる。
「分かっていないことやらせようとしたの? 恐ろしい娘……」
「いや、恐ろしいって!」
ヘレンさんの言葉にルーシーさんが不服そうにする。
「……とにかく、申し訳ございませんでした!」
私は再度頭を下げる。ザビーネさんが口を開く。
「まあ、よく分からんが、それほど反省しているようならば許してやってもいいと思うのだが……方々、いかがだろうか?」
「待った」
「……なにか?」
ザビーネさんがクラウディアさんに視線を向ける。
「貴様が何故この場を仕切っている?」
「……仕切っているつもりは毛頭ないが」
「そういう態度が気に食わん」
「なんだと?」
ザビーネさんがややムッとする。
「虫だかなんだか知らんが……」
「騎士だ」
「どうでもいい」
「ふん、魔族はロクに発音も出来んのか?」
「なに?」
今度はクラウディアさんがムッとする。
「やるか?」
ザビーネさんが鞘に手をかける。クラウディアさんがそれを見て呟く。
「……ほう、覚悟があるのか?」
「ああ」
「おおっ! 騎士対魔族っすね! これは熱い!」
「ア、アンジェラさん、無邪気に煽らないで……」
ルーシーさんが慌てる。私も慌てる。
「止めてください、なんでもしますから!」
「……ほう?」
クラウディアさんが悪そうな笑みを浮かべる。魔族の面目躍如だ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる