令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
10 / 51
第一章

第3話(1) おばちゃんではない

しおりを挟む
                  3

「先日の報告書出してきたか?」

「ええ、もちろん」

 平成は向かいのデスクに座る令和に声をかける。令和は頷く。

「書き直せって言われただろう?」

「いいえ」

「何⁉ そ、そんなはずは……」

「……平成さん、まさか……」

「突き返された」

 一枚の紙の角を指で弾きながら平成が笑う。令和が呆れる。

「なにを突き返されることがあるんですか……」

「『ナウマンゾウ食べた、美味しかったです』って書いたんだけどな~」

「それは突き返されるのも止むを得ないですね。小学生でももっとまともな報告書を提出しますよ……」

 令和が片手で頭を抑える。

「そうかい? インパクトを重視してみたんだけどな~」

「インパクトはそんなに求めていないと思いますよ。あったこと、起こったこと、そして学んだことをきちんと報告さえすれば……」

「……学んだことあったかい?」

「ありましたよ、沢山!」

「正直『リアル一狩り』で記憶がほとんど吹っ飛んだんだけどな~」

 平成が天を仰ぐ。令和も苦笑気味に頷く。

「それについては同意する部分も多少ありますが……」

「そうでしょ⁉ じゃあ俺の報告書でも問題はないはずなんだけどな~」

「レポート一枚でその内容ではなかなか納得出来ないのかと……」

「それじゃあ何かい? ナウマンゾウの鼻にかぶりついた俺の心情を事細かに書き記した方が良かったのかい?」

「まず『食レポ』から離れた方が無難かと思います」

 平成の問いに令和が淡々と答える。平成は再び天を仰ぐ。

「困ったな……俺から『食レポ』を取ったら何も残らねえ……」

「い、いや、そんなことはないでしょう⁉」

 平成の言葉に令和が驚く。平成が視線を令和に向けて笑みを浮かべる。

「まあ、バディの内、片方が提出しているなら問題ないか……よし!」

「ど、どうしたのですか? いきなり立ち上がって……」

「さっさと次の挨拶まわりに行こうぜ」

「ええっ⁉」

 平成が令和を時管局から連れ出す。とある場所に出る。

「さてと……」

「良いのですか?」

「それよりも挨拶回りをとっと済ませた方が良いだろう?」

「それはそうかもしれませんが……」

「この辺りだと思うが……」

「また神出鬼没な方ですか?」

「そんなことはないぞ、ほら見ろ」

「え? あ……」

 平成の指し示した先に住居がいくつか見える。

「集落だ。『ムラ』と言った方がいいかな」

「ムラ……」

「基本的に定住生活を営んでいるからな」

「あ、どなたかこちらにやって来ますね……」

 平成たちのもとに女性が近づいてくる。顔立ちは輪郭が四角く、太い眉で目はぱっちりとした二重まぶた。耳たぶが大きくて鼻は広く、唇が厚い。髪型は上にまとめ、赤色のかんざしを着けているのが印象的である。女性はふっと微笑み、平成に語りかける。

「誰かと思ったら平成くんじゃないの。今日はどうしたの?」

「ああ、新しい時代の挨拶に付き添いで来ました」

「新しい時代?」

「初めまして、令和と申します」

 令和は頭を下げる。女性は頷く。

「そういえば話は聞いていたわ。初めまして、時管局古代課所属の『縄文(じょうもん)』です」

「縄文さん……」

 令和はまじまじと縄文と名乗った女性のことを見つめる。半袖の上着と短いズボンを身に着けている。縄文が笑う。

「何? そんなに珍しい恰好をしているかしら?」

「い、いえ、すみません……それは麻ですか?」

「ええ、手で縫って作ったのよ」

「そんな目の細かい布を手縫いで⁉」

「そうよ、もちろん縫針を使ってだけど。シカの角で作ったものよ、日本最古の針かしら」

「日本最古の針……」

「ちなみに俺は日本最高額のアプリ重課金者だ」

「平成さんはちょっと黙っていて下さい」

 令和は平成に冷たい視線を向ける。

「冷たいな。この辺は暖かい気温だというのに」

「確かに旧石器さんの所よりは過ごしやすいです。気温が安定して定住が進んだのですね」

「ああ、旧石器くんのところに比べれば、そこまで過酷な環境じゃないわね」

 令和の言葉に縄文は笑みを浮かべる。令和は顎に手を当てて呟く。

「おしゃれをする余裕も生まれたということですね……」

「おしゃれ?」

「首飾りだけでなく、耳飾りやブレスレット、さらに足飾りまで……」

「まあ、生活を送る上でテンションは自分で盛り上げないとね」

「首飾りの綺麗な玉はなんですか?」

「これはヒスイの玉よ」

「ヒスイですか」

「そうよ、メイドイン姫川よ」

「姫川?」

「新潟県の姫川でとれたヒスイを加工した玉が全国に広まったようだ。他にもヒスイの産地はあったが、なぜかそればかり出土する」

 首を傾げる令和に平成が説明する。令和が感心する。

「そこのヒスイじゃないと駄目だったのですかね……その耳飾りは?」

「これは玦状耳飾(けつじょうみみかざり)よ。石で作ったもので耳たぶに穴を開けてさしこむの」

「現代で言うピアスですか……ブレスレットは石ではありませんね?」

「ああ、これは貝殻で作ったものよ」

「貝殻ですか?」

「縄文さんたちは狩猟だけじゃなく、漁労も行っていたからな」

「ふむ……む」

 平成の言葉に頷いた令和の腹の虫が鳴る。縄文が笑う。

「お腹が空いているの? うちで何か食べていく?」

「い、いえ、挨拶に伺っただけですから……」

「遠慮しないで、あ、これ食べる?」

 縄文は腰に下げたポシェットからクルミを一つ取り出して令和に渡す。

「あ、ありがとうございます……」

「『はい、飴ちゃん』って渡してくる大阪のおばちゃんみてえだな……」

「おばちゃん……?」

「い、いえ! 縄文さんは数千年、一万年経っても綺麗なお姉さんです!」

「よろしい、それじゃあうちに行きましょうか」

「年齢の話には敏感なんだよな……」

 先頭に立って歩き出す縄文の背中を見ながら、平成はぼやく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー

黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた! あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。 さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。 この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。 さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

大和型重装甲空母

ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を12隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。 表紙はNavalArtというゲームの画像で、動画投稿者の大和桜花さんに作っていただきました

処理中です...