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第一章
第3話(3) 飲み過ぎ注意
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「いや、例えばね、こんな感じで手が届かない背中のかゆいところに届くみたいな……」
縄文がL字型の土器を取り出して、背中を掻いてみせる。
「なんで本当にあるのですか……何かの失敗作ですか?」
「こうやって床の隅に置けば直角感を出せるというか……」
「無理矢理用途を見出そうとしなくても良いですから」
「む……手厳しいわね」
令和の冷淡な突っ込みに縄文は唇を尖らせる。
「……縄文さん、それ良かったらもらえませんか?」
「え? いいけど……」
「やった! L字型土器ゲットだぜ!」
「子供ですか」
土器を片手にはしゃぐ平成に令和は呆れる。縄文が笑いながら言う。
「それじゃあご飯にしましょうか」
縄文は手際よく肉を石器で手ごろな大きさに切る。令和が尋ねる。
「その石器は黒曜石ですね」
「そうよ、切れ味が良いの」
「その肉は?」
「イノシシよ」
「狩りで獲ったのですね」
「そう……まず石器に、干貝に水を加えて出汁にして……そこに切り分けた肉とキノコや山菜、山芋などを入れて……火をおこして煮込む!」
「鍋料理か!」
「さながら『縄文鍋』ね」
平成の反応に縄文は笑顔を浮かべる。令和が答える。
「季節に合わせて、煮込むものを変えたりするのですか?」
「鋭いわね、令和ちゃん。そうよ、シカ肉を使ったり、鳥や魚だったり……鮫を食べたりするなんてこともあるわね」
「鮫ですか……」
縄文の言葉に令和は驚く。平成が問う。
「鮫も獲ったんですか?」
「そうよ、銛でグサッと一突きよ」
「ワ、ワイルドだな……」
「ちなみに世界最古の鮫の被害者とされているのは三千年前の縄文人よ」
「そこからあの世界的巨匠は名作映画のヒントを得たのか……」
「それは関係ないと思います」
平成の呟きを令和が否定する。
「……どうかしら?」
「美味しいです」
「旨いです」
「それは良かったわ」
令和と平成の言葉に令和が満足そうに頷く。平成が言い辛そうに口を開く。
「ただ……」
「うん?」
「鍋にはやっぱり酒が欲しいかなって、無理ですよね……」
「お酒? あるわよ」
「ええ?」
縄文の答えに平成が驚く。
「ブドウ酒だけど良いかしら?」
「か、構いません」
「構います。平成さん、仕事中ですよ」
令和が嗜める。
「まあまあ、そう言わずに……こんな機会なかなかないぞ。何年ものですか?」
「大体……六千年前かしらね」
「ほら! 六千年もののワインなんて普通は飲めないぞ」
「はい、どうぞ♪」
「い、頂きます……うむ、悠久のロマンを感じさせる味だな」
「どんな味ですか……」
「令和ちゃんも飲んでみろよ」
「私は結構です」
「そう堅いこと言うなって、縄文さん、お願いします」
「……一口だけでもどうかしら?」
縄文が酒器を差し出す。
「……せっかくですから頂きます」
「どうぞ♪」
「二人して彼に憧れていたから~辛いけど、オッケー、ワインで乾杯♪」
「別に失恋したわけではないですから……ふむ」
よく分からないメロディーを口ずさむ平成を令和は冷ややかに見つめながら酒を飲む。
「どうよ、古代に思いを馳せられただろう?」
「馳せるもにゃにも……実際、今、わたひたちは古代にいましゅからね……」
「ん?」
「旨い! もう一ぴゃい!」
令和は真っ赤な顔で声を上げながら寝転がってしまう。
(令和よ……)
(うん……?)
(起きろ、令和よ……)
(だ、誰ですか? どこから声が……?)
(今、お前の脳内に直接語りかけている……)
(迷惑なのでやめてください……それじゃあ、お休みなさい)
令和は開こうとした目を再び閉じる。声の主が慌てる。
(ね、寝るな!)
(なんですか? せっかく良い気分なのに……)
令和が目を開くと、そこには小さな黒いシルエットが見える。
(これを機会にお前に伝えておきたいことがある……)
(何もこんなときじゃなくても……)
(今でなくては駄目なのだ)
(ええ……?)
(遠いところからのメッセージをお前に伝えよう……)
(遠いところ?)
(そうだ)
(……太古の昔とかですか、それとも宇宙からとか?)
(……そうとも言えるし、そうでもないとも言える)
(いや、どういうことですか)
(細かいことはこの際良いだろう)
(良くないですよ)
(とにかく新たな時代となったお前に伝える……)
(はあ……)
(平和とはただ享受するものではない……築き上げていくものだ)
(うむ……?)
(それがこの平和な時代に造られた私の伝えたいことだ……それではさらばだ)
(はい? 造られた? ちょ、ちょっと待って下さい! あ!)
黒いシルエットが消えたかと思うと、周囲が明るくなり、別の声が聞こえてくる。
「お、起きたか、令和ちゃん」
「……え?」
目を覚ました令和を平成と縄文が覗き込む。
「まさかワイン一杯で酔って寝ちまうとはな」
「ごめんなさいね、無理に飲ませちゃって」
「? ……うわっ⁉ ええ……」
令和は驚く。自分が遮光器土偶を抱えて眠っていたからである。
縄文がL字型の土器を取り出して、背中を掻いてみせる。
「なんで本当にあるのですか……何かの失敗作ですか?」
「こうやって床の隅に置けば直角感を出せるというか……」
「無理矢理用途を見出そうとしなくても良いですから」
「む……手厳しいわね」
令和の冷淡な突っ込みに縄文は唇を尖らせる。
「……縄文さん、それ良かったらもらえませんか?」
「え? いいけど……」
「やった! L字型土器ゲットだぜ!」
「子供ですか」
土器を片手にはしゃぐ平成に令和は呆れる。縄文が笑いながら言う。
「それじゃあご飯にしましょうか」
縄文は手際よく肉を石器で手ごろな大きさに切る。令和が尋ねる。
「その石器は黒曜石ですね」
「そうよ、切れ味が良いの」
「その肉は?」
「イノシシよ」
「狩りで獲ったのですね」
「そう……まず石器に、干貝に水を加えて出汁にして……そこに切り分けた肉とキノコや山菜、山芋などを入れて……火をおこして煮込む!」
「鍋料理か!」
「さながら『縄文鍋』ね」
平成の反応に縄文は笑顔を浮かべる。令和が答える。
「季節に合わせて、煮込むものを変えたりするのですか?」
「鋭いわね、令和ちゃん。そうよ、シカ肉を使ったり、鳥や魚だったり……鮫を食べたりするなんてこともあるわね」
「鮫ですか……」
縄文の言葉に令和は驚く。平成が問う。
「鮫も獲ったんですか?」
「そうよ、銛でグサッと一突きよ」
「ワ、ワイルドだな……」
「ちなみに世界最古の鮫の被害者とされているのは三千年前の縄文人よ」
「そこからあの世界的巨匠は名作映画のヒントを得たのか……」
「それは関係ないと思います」
平成の呟きを令和が否定する。
「……どうかしら?」
「美味しいです」
「旨いです」
「それは良かったわ」
令和と平成の言葉に令和が満足そうに頷く。平成が言い辛そうに口を開く。
「ただ……」
「うん?」
「鍋にはやっぱり酒が欲しいかなって、無理ですよね……」
「お酒? あるわよ」
「ええ?」
縄文の答えに平成が驚く。
「ブドウ酒だけど良いかしら?」
「か、構いません」
「構います。平成さん、仕事中ですよ」
令和が嗜める。
「まあまあ、そう言わずに……こんな機会なかなかないぞ。何年ものですか?」
「大体……六千年前かしらね」
「ほら! 六千年もののワインなんて普通は飲めないぞ」
「はい、どうぞ♪」
「い、頂きます……うむ、悠久のロマンを感じさせる味だな」
「どんな味ですか……」
「令和ちゃんも飲んでみろよ」
「私は結構です」
「そう堅いこと言うなって、縄文さん、お願いします」
「……一口だけでもどうかしら?」
縄文が酒器を差し出す。
「……せっかくですから頂きます」
「どうぞ♪」
「二人して彼に憧れていたから~辛いけど、オッケー、ワインで乾杯♪」
「別に失恋したわけではないですから……ふむ」
よく分からないメロディーを口ずさむ平成を令和は冷ややかに見つめながら酒を飲む。
「どうよ、古代に思いを馳せられただろう?」
「馳せるもにゃにも……実際、今、わたひたちは古代にいましゅからね……」
「ん?」
「旨い! もう一ぴゃい!」
令和は真っ赤な顔で声を上げながら寝転がってしまう。
(令和よ……)
(うん……?)
(起きろ、令和よ……)
(だ、誰ですか? どこから声が……?)
(今、お前の脳内に直接語りかけている……)
(迷惑なのでやめてください……それじゃあ、お休みなさい)
令和は開こうとした目を再び閉じる。声の主が慌てる。
(ね、寝るな!)
(なんですか? せっかく良い気分なのに……)
令和が目を開くと、そこには小さな黒いシルエットが見える。
(これを機会にお前に伝えておきたいことがある……)
(何もこんなときじゃなくても……)
(今でなくては駄目なのだ)
(ええ……?)
(遠いところからのメッセージをお前に伝えよう……)
(遠いところ?)
(そうだ)
(……太古の昔とかですか、それとも宇宙からとか?)
(……そうとも言えるし、そうでもないとも言える)
(いや、どういうことですか)
(細かいことはこの際良いだろう)
(良くないですよ)
(とにかく新たな時代となったお前に伝える……)
(はあ……)
(平和とはただ享受するものではない……築き上げていくものだ)
(うむ……?)
(それがこの平和な時代に造られた私の伝えたいことだ……それではさらばだ)
(はい? 造られた? ちょ、ちょっと待って下さい! あ!)
黒いシルエットが消えたかと思うと、周囲が明るくなり、別の声が聞こえてくる。
「お、起きたか、令和ちゃん」
「……え?」
目を覚ました令和を平成と縄文が覗き込む。
「まさかワイン一杯で酔って寝ちまうとはな」
「ごめんなさいね、無理に飲ませちゃって」
「? ……うわっ⁉ ええ……」
令和は驚く。自分が遮光器土偶を抱えて眠っていたからである。
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