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第一章
第5話(1) 古墳? いいえ大和です
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「……」
令和が自らのデスクに座り、勾玉を手にとって眺める。
「お、それ、もらったのか?」
戻ってきた平成が、令和の向かいに座りながら声をかける。
「ええ……余りをいくつかですが、交換で」
「交換?」
「縄文さんに頂いたポシェットの予備の方を弥生さんが気に入られたので、それでは、ということで交換させてもらいました」
「物々交換とはなんとも……らしいといえばらしいか」
平成は笑みを浮かべる。
「それにしても……あの真白な時代と思われる方は誰だったのでしょうか?」
「さあね」
「さあねって……課長はなにかおっしゃっていましたか?」
「何も……っていうかその辺のややこしそうなことは報告していないしな」
「ええっ⁉」
「高床住居に招かれて、料理をご馳走になったところまでに留めたよ」
「そ、それでは、バディである私の提出した報告書と整合性が取れないではないですか! 場合によっては……」
「令和ちゃんの報告書の後半部分は壮大なフィクションと受け取られるかもしれないな」
平成が声を上げて笑う。令和が慌てて立ち上がる。
「こ、困ります! もう一度私の方から補足を……」
「ああ、待った待った、課長も忙しいんだ、大丈夫だ。別に査定等には響かねえよ」
「……本当ですか?」
「……ああ」
「そうですか……」
令和が再び座る。平成が小声で呟く。
「俺の勘が正しければ、あれは……いや、全ては憶測の域を出ないな……」
「……何かおっしゃいました?」
「い、いいや、なんでもない。それより準備は出来たかい?」
「準備ですか?」
「ああ、本日も引き続き、時代の先輩方に挨拶に伺わなきゃな」
「時管局に顔を出してくれると助かるのですが……」
「その辺は各々の事情も絡んでくるからな、よほどのことがなければリモートでも良いし」
「そういうところだけ現代的なのですね……」
令和は軽くため息をつき、平成の後に続いて、現代課の部屋を出る。
「……よし!」
「なにがよし!なのですか……」
「おっと、令和ちゃん、ちょっと静かにしていてくれ」
平成と令和は茂みに身を隠している。平成は指を差す。
「あそこにねずみ取り器を置いた」
「それは見えますよ、弥生さんからもらったのですか?」
「いいや、案の定、家に在庫が多数あった……せっかくなので有効活用したいと思ってな」
「せっかくって……」
「さあて、何が引っかかるかな?」
「それはねずみに決まっているでしょう……」
「分かんねえぞ? 未知の生物が引っかかったらどうする? 軽くパニックになるかもな」
「歴史に残る大発見ですが……こんなことをしている場合ではないのでは?」
「まあ、しばらく様子を見てみよう」
「しばらくって……」
令和は呆れた様子で頬杖をつく。そこからしばらくの時間が経過するが、一向に引っかかる様子はない。平成が首を傾げる。
「おかしいな、こんなはずでは……」
「だから、もう行きましょうよ……本当にこんなことをしているヒマは……⁉」
そこに罠が作動した音がする。平成が声を上げる。
「かかった!」
「ええっ⁉」
「行くぞ!」
平成が茂みから飛び出す。令和もそれに続く。
「こ、これは……⁉」
令和が驚く。そこにはねずみや未知なる生物ではなく、長い髪の毛を真ん中でわけ、左右の耳の横で輪にして、その中心を紐でくくった特徴的な髪型をした男性が引っかかっていたからである。平成が叫ぶ。
「この髪型は角髪(みずら)! 珍しいねずみだな!」
「いや、絶対ねずみではないでしょう!」
「ううっ……」
髪の毛が罠に引っかかった男性が苦しそうな声を上げる。令和が慌てる。
「だ、大丈夫ですか⁉」
「あ、あんまり大丈夫ではあらへんな……」
「は、外しますね!」
令和が罠を外すと、男性はゆっくりと立ち上がる。その顔を見た平成が頷く。
「ああ、誰かと思えば……」
「平成くんの仕業かいな……」
「いや~どうもすみません」
平成は後頭部をさする。令和が尋ねる。
「お知り合いですか?」
「こちらが今日、ご挨拶しようと思っていた方だよ。時管局古代課の『古墳(こふん)』さ……」
「『大和(やまと)』やで!」
「えっ……?」
男性の言葉に令和が戸惑う。平成が言い直す。
「こちら、古墳さ……」
「大和や!」
「古……」
「大和!」
「何なんすか⁉ 貴方は古墳さんでしょう! ちゃんと後輩に紹介させて下さいよ!」
「後輩?」
「初めまして、令和です」
令和が丁寧に頭を下げる。男性が少し落ち着きを取り戻す。
「ああ、噂の新しい時代か、わは大和という、以後よろしく頼むで」
「は、はい!」
「いやいや、どさくさまぎれに名前を変えないで下さいよ!」
「昔は大和やったやん! ええかげんなこと言うな!」
「時管局のお偉いさん方の方針も曖昧な部分が多いということは認めます。ただ、考古学上の時代区分ということで、貴方は『古墳』と決まりました!」
「いつ決まったんや、わは不承知やで!」
「最近の研究結果が進んだことも影響しています」
「進むなや! 大和ってかっこ良かったのに……! 古墳って! 古い墳って!」
「古墳が盛んに造られた時代を指すわけですから、分かりやすい名称かと……」
「そ、そんなん納得いかんわ!」
令和の説明を聞いて古墳がその場から走り去っていく。令和が再び戸惑う。
「ああ……きちんとご挨拶も出来ていないのに……どうしますか? 平成さん?」
「……大丈夫だ、足跡を見ろ」
「え……こ、これは⁉」
令和が再び驚く。古墳の足跡の形が『前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)』だったからである。
「……」
令和が自らのデスクに座り、勾玉を手にとって眺める。
「お、それ、もらったのか?」
戻ってきた平成が、令和の向かいに座りながら声をかける。
「ええ……余りをいくつかですが、交換で」
「交換?」
「縄文さんに頂いたポシェットの予備の方を弥生さんが気に入られたので、それでは、ということで交換させてもらいました」
「物々交換とはなんとも……らしいといえばらしいか」
平成は笑みを浮かべる。
「それにしても……あの真白な時代と思われる方は誰だったのでしょうか?」
「さあね」
「さあねって……課長はなにかおっしゃっていましたか?」
「何も……っていうかその辺のややこしそうなことは報告していないしな」
「ええっ⁉」
「高床住居に招かれて、料理をご馳走になったところまでに留めたよ」
「そ、それでは、バディである私の提出した報告書と整合性が取れないではないですか! 場合によっては……」
「令和ちゃんの報告書の後半部分は壮大なフィクションと受け取られるかもしれないな」
平成が声を上げて笑う。令和が慌てて立ち上がる。
「こ、困ります! もう一度私の方から補足を……」
「ああ、待った待った、課長も忙しいんだ、大丈夫だ。別に査定等には響かねえよ」
「……本当ですか?」
「……ああ」
「そうですか……」
令和が再び座る。平成が小声で呟く。
「俺の勘が正しければ、あれは……いや、全ては憶測の域を出ないな……」
「……何かおっしゃいました?」
「い、いいや、なんでもない。それより準備は出来たかい?」
「準備ですか?」
「ああ、本日も引き続き、時代の先輩方に挨拶に伺わなきゃな」
「時管局に顔を出してくれると助かるのですが……」
「その辺は各々の事情も絡んでくるからな、よほどのことがなければリモートでも良いし」
「そういうところだけ現代的なのですね……」
令和は軽くため息をつき、平成の後に続いて、現代課の部屋を出る。
「……よし!」
「なにがよし!なのですか……」
「おっと、令和ちゃん、ちょっと静かにしていてくれ」
平成と令和は茂みに身を隠している。平成は指を差す。
「あそこにねずみ取り器を置いた」
「それは見えますよ、弥生さんからもらったのですか?」
「いいや、案の定、家に在庫が多数あった……せっかくなので有効活用したいと思ってな」
「せっかくって……」
「さあて、何が引っかかるかな?」
「それはねずみに決まっているでしょう……」
「分かんねえぞ? 未知の生物が引っかかったらどうする? 軽くパニックになるかもな」
「歴史に残る大発見ですが……こんなことをしている場合ではないのでは?」
「まあ、しばらく様子を見てみよう」
「しばらくって……」
令和は呆れた様子で頬杖をつく。そこからしばらくの時間が経過するが、一向に引っかかる様子はない。平成が首を傾げる。
「おかしいな、こんなはずでは……」
「だから、もう行きましょうよ……本当にこんなことをしているヒマは……⁉」
そこに罠が作動した音がする。平成が声を上げる。
「かかった!」
「ええっ⁉」
「行くぞ!」
平成が茂みから飛び出す。令和もそれに続く。
「こ、これは……⁉」
令和が驚く。そこにはねずみや未知なる生物ではなく、長い髪の毛を真ん中でわけ、左右の耳の横で輪にして、その中心を紐でくくった特徴的な髪型をした男性が引っかかっていたからである。平成が叫ぶ。
「この髪型は角髪(みずら)! 珍しいねずみだな!」
「いや、絶対ねずみではないでしょう!」
「ううっ……」
髪の毛が罠に引っかかった男性が苦しそうな声を上げる。令和が慌てる。
「だ、大丈夫ですか⁉」
「あ、あんまり大丈夫ではあらへんな……」
「は、外しますね!」
令和が罠を外すと、男性はゆっくりと立ち上がる。その顔を見た平成が頷く。
「ああ、誰かと思えば……」
「平成くんの仕業かいな……」
「いや~どうもすみません」
平成は後頭部をさする。令和が尋ねる。
「お知り合いですか?」
「こちらが今日、ご挨拶しようと思っていた方だよ。時管局古代課の『古墳(こふん)』さ……」
「『大和(やまと)』やで!」
「えっ……?」
男性の言葉に令和が戸惑う。平成が言い直す。
「こちら、古墳さ……」
「大和や!」
「古……」
「大和!」
「何なんすか⁉ 貴方は古墳さんでしょう! ちゃんと後輩に紹介させて下さいよ!」
「後輩?」
「初めまして、令和です」
令和が丁寧に頭を下げる。男性が少し落ち着きを取り戻す。
「ああ、噂の新しい時代か、わは大和という、以後よろしく頼むで」
「は、はい!」
「いやいや、どさくさまぎれに名前を変えないで下さいよ!」
「昔は大和やったやん! ええかげんなこと言うな!」
「時管局のお偉いさん方の方針も曖昧な部分が多いということは認めます。ただ、考古学上の時代区分ということで、貴方は『古墳』と決まりました!」
「いつ決まったんや、わは不承知やで!」
「最近の研究結果が進んだことも影響しています」
「進むなや! 大和ってかっこ良かったのに……! 古墳って! 古い墳って!」
「古墳が盛んに造られた時代を指すわけですから、分かりやすい名称かと……」
「そ、そんなん納得いかんわ!」
令和の説明を聞いて古墳がその場から走り去っていく。令和が再び戸惑う。
「ああ……きちんとご挨拶も出来ていないのに……どうしますか? 平成さん?」
「……大丈夫だ、足跡を見ろ」
「え……こ、これは⁉」
令和が再び驚く。古墳の足跡の形が『前方後円墳(ぜんぽうこうえんふん)』だったからである。
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