令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
34 / 51
第一章

第9話(1) 御所の北面にて

しおりを挟む
                  9

「報告書を提出してきました……」

「ご苦労さん」

 平成は自分のデスクに戻ってきた令和に声をかける。

「先日のご挨拶は平和に終わって良かったですね」

「牛車が突如として暴走でもするかと思ったけどな」

 平成が笑う。

「平城京で鹿が暴れて、平安京では牛が暴れたら……もはや笑い事ではないですよ」

「冗談だよ」

「冗談では済ませられることではありません……」

 令和が冷たい視線を向ける。平成は話題を変える。

「そ、そういや、平安さんたちから何かもらってなかったか?」

「平安さんからはこの『檜扇(ひおうぎ)』という木製の扇を……」

「へえ、結構立派な……木の板を折り畳んだものか」

「ここから紙を用いた扇子に発展するのでしょうね」

「国風さんからはなにをもらったんだい?」

「平成さんに渡してくれと」

「俺に?」

「ええ」

「な、なんだよ……奥ゆかしいな国風さんも……あの場でばっと渡してもらえればそれで良いのに……」

 平成は若干戸惑いながらも満更でもない表情を浮かべる。令和が取り出す。

「……こちらです」

「『国風文化 恋文 書き方』って検索しなくちゃいけないな……あんまり返事が遅くなるとマズいんだよな?」

 平成は片手で情報端末を忙しく操作し、もう片方の手ではヘアースタイルのチェックに余念がない。令和はため息をつく。

「……平成さんにはこちらです」

 令和が箱を空けると、そこには白い球体が入っている。平成が尋ねる。

「……なんだいこれは?」

「『蹴鞠(けまり)』で用いる鞠ですね。平成さんはスポーツ……特に4年に1度、サッカーが全世界で盛り上がっているということを強調してお話されていたではないですか。ならばと……」

「『鞠はトモダチ、怖くないよ!』ってか……いや、それにしてもだな……」

 平成は肩を落とす。令和が首を傾げる。

「そんなにマズかったでしょうか?」

「うーん……マズいってわけでもないが……」

「どちらも『ギザ10』複数枚で購入することが出来たのです」

「ええっ⁉ マジか?」

「マジです。お二方とも10円玉のデザインを大層気に入っておられたので……」

 平成の問いに令和は冷静に答える。

「そう考えると、安い買い物かもしれないな……令和ちゃんやるな~」

「お褒めに預かり光栄です。それで……」

 少し胸を張った令和だが、気持ちを取り直し、平成に問う。

「課長にも確認させて頂きましたが、そろそろ次のステップに移行する頃合いだろうとのお話だったのですが……」

「え?」

「え? じゃないですよ、誤魔化さないで下さいよ」

 平成は頭を掻いて小声で呟く。

「ちっ、課長め、『スケジュールは一任する』とか言ってなかったか?」

「平成さん!」

 令和は目をキラキラとさせて平成を見つめる。

「……まあ、先方への挨拶を兼ねても進められねえことはねえか……」

「平成さん?」

 令和が首を傾げる。

「……動き易い恰好に着替えてきた方が良いぜ」

「? それはどういう意味ですか?」

「言葉通りだよ、良いから着替えてきな」

「は、はい……」

 令和は服装を着替えてくる。

「……」

「お、お待たせしました」

 令和が薄い紅梅色のジャージと白いスニーカーに身を包んで現れる。

「来たか……」

「へ、平成さん、着替えていないじゃないですか」

「靴はスニーカーにしたさ」

 平成は片足を上げて令和に見せる。

「そ、それにしても……」

「まあ、いいからいいから、そろそろ行くぞ」

「は、はい……」

 平成が部屋を出ると、令和は首を傾げながらその後に続く。

「着いたぞ」

「こ、ここは?」

「院の御所だ。平安時代は後期に入ると藤原氏主導の摂関政治から『院政(いんせい)』へと移り変わる」

「院政……まだ幼年の天皇を先代の天皇である『上皇』あるいは『院』として政治的に補佐するという仕組みですね」

 令和が呟きながら頷く。

「そう、『後三条天皇』がその基礎を築き、その子『白河天皇』が1086年から院政を開始する」

「11世紀末ですね」

「白河上皇は平安京の南の鳥羽の地に『院庁(いんのちょう)』を置き、院の政務機関として、近親者や下級貴族を積極的に登用した」

「『院近臣(いんのきんしん)』ですね」

「また平安京内の、自身の御所の警護に『北面(ほくめん)の武士(ぶし)』を設け、『武士』を起用する」

「武士……」

「8世紀半ばの墾田永年私財法により、中央貴族や大寺社または地方の有力豪族が積極的な土地の開墾を進め、それぞれが大規模な土地の私有を始める……『荘園(しょうえん)』の成立だ」

「荘園……」

「荘園というものの管理体制も時代を経るごとに変質する。11世紀に入ると、地方の土地開発層が租税免除を主目的として、中央の有力者に土地を寄進する動きが出てくる」

「『寄進地系荘園』ですね。そして収入の見返りに、領主としてその土地の管理を正式に任されることになる」

「そうだ、領主たちは紛争にも対応出来るように武装化を進め、各地で『武士団』が形成されるようになる。武士の成立だ。もちろんそれが全てではないが、流れの一つだな」

「……平成さん、熱でもあります? 珍しく真面目ですけど……」

「平熱だ……真面目に語っちゃ悪いかよ」

「……院は寄進地系荘園を経済力の基盤とし、武士の登用で軍事力も確保したと……ん?」

「『頼』だ!」

「いいや、『盛』だな……」

「頼られるんだぞ⁉ 文字通りこんなに頼もしいことはない!」

「盛るんだぞ? こんなに盛り上がることはない……」

「あの方たちは……?」

 令和が視線を向けた先には二人の若い男性がよく分からない言い争いをしている。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

豊臣徳川両家政務会議録
〜天下のことをだいたい決める会〜

cozy0802
歴史・時代
会議系、歴史回避コメディ。 豊臣と徳川が“なぜか共存している”少し不思議な戦国時代。 そこでは定期的に、「天下のことをだいたい決める会」という政務会議が開かれている。 議長は淀殿。補佐は徳川秀忠殿。参考意見は豊臣秀次様。 そして私は――記録係、小早川秀秋。 議題はいつも重大。 しかし結論はだいたい、 「高度な政治的判断により現状維持」。 関ヶ原の到着時期の差異も、言いにくい史実も、 すべて会議の議事録として“やさしく処理”されていく。 これは、歴史が動きそうで動かない、 両家政務会議の史実回避コメディである。 だが―― この均衡がいつまで続くのかは、誰も知らない。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...