令和ちゃんと平成くん~新たな時代、創りあげます~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章

第12話(2) 時代を超えたクラファン

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「来てくれたわね……」

「も、もしや縄文さんが?」

「ええ、救援要請を送っておいたわ」

 令和の問いに縄文が頷く。天平が笑う。

「時代の大大大先輩に呼ばれたら駆け付けなきゃね~」

「……心なしか大を強調していない? なにか引っかかる物言いね……」

「え? いや、大の字は付けて間違いないでしょう……痛っ⁉」

「……奈良と天平、お手伝いに参上いたしました」

 奈良が恭しく頭を下げる。

「な、奈良姉さま! 足を踏んだでしょう⁉」

「お願いだから余計なことは言わないで頂戴……」

 奈良は天平に小声で囁く。縄文が首を傾げる。

「なにか?」

「いえ、なんでもありません……」

「時代がいくら増えようと同じこと……空っぽになってしまえ!」

 空が手を掲げると、青い人影たちが再び令和たちに迫る。弥生が慌てる。

「うわっ! また来る⁉」

「まずは弥生を優先的に狙うのよ!」

「なんでそうなるのよ⁉ きゃっ⁉ し、しまった……」

 その場から距離を取ろうとした弥生がつまずいてしまう。そこに影が殺到する。

「はっ!」

 奈良が剣を振るい、弥生に迫る影を薙ぎ払う。令和が目を丸くする。

「奈良さん、剣の心得があったのですね……」

「大して自慢出来るものでもないですが……」

 令和の呟きに奈良が刀身を撫でながら答える。

「その剣は?」

「『水龍剣(すいりゅうけん)』よ。後の時代で言うね」

 奈良の代わりに天平が得意げに話す。令和が首を傾げる。

「後の時代ですか?」

「元々正倉院に納められていた刀身を明治天皇が気に入り、当時の職人に拵えさせた立派な水龍文金具から水龍剣という号が付いたのよ。千年がかりで完成した刀剣ね」

「なんとも壮大な話ですが……」

「うん? なにか気になるところが?」

 天平が令和に対し視線を向ける。

「その立派な拵えが付いていないようなのですが……」

「あ、ああ、それは……」

 天平が言葉を濁しながら後頭部をさする。奈良が呟く。

「……やや扱いづらいので、外させて頂きました」

「ええっ⁉ 良いのですか⁉」

「良いか悪いかで言えば、あまりよくはないかもしれませんね……面倒な、いや詳細な説明は天平、貴女に任せました」

「今、面倒って言ったよね? はあ……元々聖武天皇の佩いていたと伝わる刀なの。その頃は拵えなどなかったけど……」

「……紛れもなく正倉院の宝物のひとつということですね」

「そういうこと……で、よろしいのですね、奈良姉さま?」

「ええ、レプリカをレンタルさせていただいている形ですが」

「……それも申請を通してですか」

「そうです」

「随分と柔軟ですね、正倉院……」

「私たち時代の無理を大分聞いてくれています」

「ただ……刀では影を少し払っただけのようです」

「ふむ……」

「はっきりいってあまり効果がないかと……」

 令和の物言いに天平が慌てる。

「ちょ、ちょっと、正直に言いすぎじゃないの⁉」

「それはまあ……そういう性格なもので」

 天平の言葉に令和が申し訳なさそうに答える。奈良はふっと笑う。

「ならば戦い方を変える必要性がありそうね……天平!」

「はい!」

 奈良の声に応じ、天平が翳を投げ込む。

「えっ⁉ 長い柄の団扇?」

「ふっ……」

 刀を納めた奈良が飛んできた翳を両手で器用に操る。令和が感心すると同時に首を捻る。

「使い方がお上手なのは先日拝見しましたが、それでどうやって……?」

「……こうするのです!」

「⁉」

 奈良は翳を振り回しはじめ、あたりに風を巻き起こす。風はさほど大きくはないが、6つほど、塊のようなものがあっという間に出来上がった。令和が戸惑う。

「ど、どうする気ですか⁉」

「こうするのです! 『南都六襲』!」

「ええっ⁉」

 奈良は自らの前に展開した風の塊を順に翳で押し出し、影に向かって突っ込ませた。

「くっ⁉ かわせ!」

 空の指示に従い、いくつかの影は回避行動を取ったものの、約3分の1の影は奈良が巻き起こした風によって霧消させられた。令和も驚く。

「こ、これは……?」

「『南都六襲』の力です」

「い、いやちょっと待って下さい!」

 令和の言葉に奈良は首を傾げる。

「なにか?」

「い、いえ、私の知っているのは仏教経典の研究を行う『南都六宗(なんとろくしゅう)』ですが⁉」

「……たまたま同じような名称だったのでしょう」

「そんなたまたまがありますか⁉」

「あるでしょう」

「『鑑真和上(がんじんわじょう)』が日本に伝えた『律宗(りっしゅう)』とか!」

「『サンジくん』の繰り出した『ジューシュート』?」

「暴力コックさんが相手のほほを蹴る技を誰がわざわざ伝えに来るのですか⁉ それでは『法相宗(ほっそうしゅう)』は⁉ 『西遊記』で有名な三蔵法師のお弟子さんが日本に広めた宗派です!」

「『フランシェシュート』?」

「なぜ腹への強い回し蹴り⁉ ってか、海賊漫画に随分とお詳しいですね⁉」

 令和が困惑する。天平が口を開く。

「法相宗の総本山の一つ、興福寺は後世になると僧兵や大和武士などを多数擁し、独自の軍事勢力を築きあげていたからね……あながち奈良姉さまも解釈外れじゃないんじゃない?」

「い、いや、大分外れていると思いますけど⁉」

「まあまあ、そのあたりの話はともかくとして……追い打ちをかけるなら今よ」

 天平が令和を落ち着かせるように言い聞かす。令和はハッとする。

「た、確かに!」

「ここは私に任せて……」

 天平は懐から木簡を取り出す。令和が声を上げる。

「木簡なら私も持っています! 援護させていただきます!」

「いや、ここは私だけにやらせて! かなり危険な術よ!」

 いつもとは感じの違う天平の厳しい声色に令和がたじろぐ。

「わ、分かりました……お任せします」

「聞き分けの良い娘ね……それではいくわよ!」

 天平が木簡に筆を走らせると、天平の頭に煙がもくもくと立ち込めて、鹿の角が生えた。

「ええっ⁉」

「『鹿頭突き』!」

「⁉」

 天平が頭を突き出しながら突進し、角の攻撃を食らった影は次々と霧消していく。

「どうよ! 令和ちゃん!」

「て、天平さん、ど、どうって⁉ どうしたのですか、その頭?」

「鹿ちゃんの角をお借りしたのよ」

「鹿は神聖な生き物ではなかったのですか⁉ そのような用い方をしても良いのですか?」

「まあ……緊急事態だから、ドンマイ♪」

 天平は令和に向かって満面の笑みを見せる。

「ドンマイですまないような気もしますが、影も大分減りましたし、結果オーライですね!」

「ちっ、奴らを黙らせろ!」

 空が手を掲げると、残りの青い影が令和たちを囲む。奈良が剣に手をやるが、令和が叫ぶ。

「お待ち下さい! 刀剣ではやはり効果がないと思われます!」

「ではどうするのですか⁉」

「……影には光です!」

「光⁉」

「ええ、例えば大仏さまの眩い輝きを以って影を覆いつくすのです!」

「う~ん……」

「天平さん! 無理なのですか⁉」

「『行基(ぎょうき)』さんに勧進を行ってもらっているけど、まだ予算が足りないのよ!」

「こ、建立から始めないといけないのですか⁉ な、ならば、『クラウドファンディング』!」

 令和がタブレットを手際よく操作すると、あっという間に大仏建立予算が集まる。

「‼ こ、これならば、奈良姉さま!」

「ええ! 大仏さま! 希望の光を照らしてください!」

 奈良と天平が大仏を召喚する。その大きな光は残りの影を霧消するに十分だった。

「こ、これで勝ったと思わないで!」

「なに⁉」

 空が両手を掲げると、巨大な青い影が数体現れる。人型ではなく、巨大なものである。

「この巨大な影なら覆いつくせないでしょう!」

「……まるで妖やな」

「妖を退治するというのならば私たちの出番でしょう」

「平安さん! 国風さん!」

 色鮮やかな装束に身を包んだ平安と国風が駆け付ける。
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