私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~

阿弥陀乃トンマージ

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第一章 JK将軍誕生

魂の三本勝負~心の巻~

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 そしてとうとう勝負の当日を迎えた。

「さあ! いよいよ始まります! 体育会名物、『魂の三本勝負』! 過去数多の挑戦者たちが散ってきたこの勝負! 体育会の高く、そして厚き壁を越えられる猛者は果たして現れるのでしょうか⁉」

「放送部の人、ノリノリだね……」

「観衆も大分集まっていますわ……」

 小霧の言葉通り、グラウンドの周辺には、多くの生徒が詰めかけていた。

「皆お祭りごとが好きですからね」

「そう言って、伊達仁が喧伝したのではないか?」

 景元の問いに、爽はフッと微笑んだ。

「半分はそうですね。もう半分は体育会の皆さんによるものだと思いますが」

 グラウンド中央正面の指揮台に上がった体育会会長、青臨大和がマイクを片手に大声で話し出した。

「お集まりの諸君! 本日は体育会名物、『魂の三本勝負』を見に来てくれて誠にありがとう! 体育会会長として感謝感激の極みである!」

 大和の言葉に観客が大いに沸く。

「そして恐れ知らずの参加者ご一同! 我々は手加減など出来ぬ性分ゆえ、怪我などなされぬ様、努々お気をつけを!」

「け、怪我って一体どんな種目をさせる気なんですの……?」

 小霧が不安げな声を上げる。

「前置きはこの辺にして! 早速第一の種目を発表しよう!」

 大和が指揮台の下に控えていた生徒から巻物を受け取り、その巻物を勢いよく開いて種目名を高らかに叫んだ。

「第一の種目は……『心の双六』!」

「す、双六?」

「ルールは至極簡単だ! グラウンドに広げられた双六シートの上で双六を行ってもらう! 止まったマス目に様々な精神力を試されるお題が提示される! そのお題をクリアすれば、次のサイコロを振る権利を得る。逆に言えばお題をクリアせねば、サイコロは振ることは出来ない! 従来の双六と異なるのは、スピードも問われるということだ!」

「ふむ……」

「ということは……」

「つまり……」

「「「体力自慢を揃えた意味が無い!」」」

 他の三つの陣営が愕然とする中、将愉会側はにわかに活気づいた。

「こ、これは……なんだかイケそうな気がしてきましたわ!」

「頼むよ、さぎりん!」

「ほほほっ! 大船に乗ったつもりでご覧遊ばせ!」

「提示されたお題に挑むのは、各チーム一人で構わない。クリアすればチームごと先に進める。尚、我々体育会はハンデとして、武枝書記一人で戦う!」

 大和の言葉を受け、武枝クロエがゆっくりと前に進み出てきた。

「各自サイコロは持ったな? それでは……『心の双六』、始め!」

 大和の掛け声とともに笛が吹かれた。各チーム、両手で持つ位の大きいサイコロを振る。将愉会は小霧が早速6の目を出した。

「よし! 幸先良いスタートですわ!」

 司会者兼審判員が指示を出す。

「では、将愉会チーム、6マス進んで下さい!」

 小霧たちが6マス進み、マス目に書かれたお題を読み上げる。

「何々? 『黒歴史に耐えきったら先に進める、そうでなければ振り出しへ』?」

「どなたがお題に挑みますか?」

「よく分かりませんが、わたくしが参りますわ!」

「では、高島津選手失礼して……」

「?」

「『クシュン! 嫌だな、また花粉の季節……ああ、どうせならくしゃみをするごとにあの御方との距離、縮まれば良いのに……』」

「どわあっ⁉」

 小霧が突如として大声を上げる。

「そ、それはわたくしの中二の頃の自作ポエム! 捨てた筈なのにどうして⁉」

「あ~耐え切れなかった! どうぞ振り出しへお戻り下さい!」

「ええっ⁉ こ、心の双六ってそういうことですの⁉」

 すると、体育会も6の目を出した。クロエは小霧たちと入れ替わるような形で同じマスに止まった。

「では、武枝選手、よろしいですね?」

「どうぞ」

「『雨が降り続ける季節、傘をさしても意味なんてない……だって、私のこのズブ濡れの心には傘はさせないもの……』」

「……」

「な、なんと武枝選手、黒歴史に耐えきった!」

 観衆が沸く。クロエは早速次のサイコロを振る。葵が驚く。

「な、なんて精神力!」

「あれが武枝書記の特技、『風林火山・山の構え』だ!」

「うわっ! びっくりした! いつの間に!」

 隣に立っていた大和に葵は再び驚く。爽が呟く。

「成程……『動かざること山の如し』というわけですね」

「そういうことだ!」

「いや、どういうこと⁉」

 とにもかくにも、双六は進んでいった。



「ぐおっ辛え!」

 弾七が思わずむせた。

「おおっと! 橙谷選手! 激辛巨大最中に苦戦しているようだ!」

「いや、普通大食いかと思うだろ!」

「完食を諦めるならば、3マス戻ることになります!」

「た、食べりゃあいいんだろ、食べりゃあ!」

 弾七は半ばやけくそ気味に最中を口の中に突っ込んだ。

「か、辛え……」

 弾七は涙目になりながらもなんとか完食した。

「やりましたわ! さあ、サイコロを振りましょう!」



「……ふふふっ!」

「ああっと! 涼紫選手! 体全体くすぐりの刑で笑ってしまった! 将愉会チーム、4マス戻ることになります!」

「ああっ!」

「なにをやってんだよ!」

 小霧が落胆し、弾七が獅源に詰め寄る。

「いやね先生……そりゃ人間あんな所をくすぐられたら、笑い声の一つも出ますって」

「言い訳すんなよ! 『絶対くすぐりがらない人間』の芝居をやれよ!」

「そんな無茶な、どんな芝居ですか……」

「と、とにかく、気を取り直して、またサイコロを振りますわよ!」



「キィ~~~」

「きゃっ⁉」

「うおっ⁉」

「こ、これはこれは……」

 あまりの音に小霧と弾七は耳を塞ぎ、獅源は顔をしかめた。黒板を爪で引っ掻いた音を間近で聞かされたからである。しかし、一超は平然としていた。

「藍袋座選手、微動だにせず! 将愉会チーム、お題クリアです!」

「や、やった!」

「よく平気ですね? 眉一つ動かさず……」

 獅源の問いに一超は微笑みながら答えた。

「不快な音 心地変えれば 味があり」

「成程、気持ちの持ちようですか……見習いたいものです」

「さあ、急ぎましょう!」



「『心の双六』、第一位は……二年は組‼ 5ポイント獲得!」

「よっしゃー‼ 見たかー!」

 飛虎が渾身のガッツポーズを見せる。

「第二位は二年ろ組‼ 4ポイント獲得!」

「ふふふ……く、黒歴史? 何それ、美味しいの? ですわ……」

「お嬢様! お見事な精神力でした!」

 崩れ落ちそうな八千代を憂が支える。

「第三位は二年い組‼ 3ポイント獲得!」

「まあ、悪くはない滑り出しだな」

「殿が足を引っ張らなければもう少し上に行けましたが……」

「絹代、何か言ったか?」

「いいえ、何も」

「第四位は体育会‼ 2ポイント獲得!」

「すみません。油断して足元を掬われました……」

「冷静な敗因分析、見事! なんのなんの、あと二本で挽回可能!」

 肩を落とすクロエを大和が励ます。

「そして、第五位は将愉会‼ 1ポイント獲得!」

「ぐ……まったく不甲斐ない出来で申し訳ありませんわ……」

「先生が最中をもうちょっと早く食べられればねえ……」

「いや、そういうお前さんこそ何もしてねえだろ!」

「仲間割れ 恥の上塗り 無様かな」

「ま、まあ、皆落ち着いて……大丈夫! あとの二本で取り返すよ!」

 葵は力強く宣言した。
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