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第二章 いざ江の島へ
テスト終わりの食堂
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漆
「あ~テストしんどかった~」
夕食を終えた葵は机の上に突っ伏す。爽がたしなめる。
「葵様、はしたないですよ」
「さすがに疲れたよ……」
「周りの目もありますから……」
「分かったよ……」
葵はさっと姿勢を正す。爽はふっと笑う。
「……一日丸々テストは確かに大変でしたね」
「そうだよ、昨日は午前中に『豪華プレゼント争奪! スイカ割り・2on2』、午後には『豪華賞品争奪! ビーチバレー大会』に参加して体中筋肉痛なんだよ~」
「……どちらもレクリエーションではないですか。しかもプレゼントや商品に思いきりつられてしまっている……」
「それがどうしてなかなかハードだったんだよ! スイカ割り・2оn2は風圧で吹っ飛ばされるし、ビーチバレーはボールが破裂するし! そりゃあ豪華な景品も出るよ!」
身振り手振りで熱弁する葵に対し、爽はやや首を傾げる。
「色々と突っ込みたいところはあるのですが……まずスイカ割り・2on2とは一体なんなのでしょうか?」
「あれ、割り2を知らない?」
「知らないものの略称を言われても……」
「二組のペアが同時に一つのスイカを狙い、相手のペアの様々な妨害をかわしつつ、先にスイカを割った方が勝者の種目だよ」
「何故スイカ割りでそんな殺伐としそうなことをしなくてはならないのですか……」
「う~ん、そこにスイカがあるからじゃない?」
「哲学的なことをおっしゃられても……」
「それは冗談。尾成さん発案の企画だってさ」
「ああ、そうなのでしたか、道理で……天才と呼ばれるような方の考えることは凡人にはよく理解が出来ませんね……」
葵の言葉に爽は目を細める。
「最終的には四組が激しく入り乱れるバトルロイヤルになったよ」
「どうしてそうなったのですか。2оn2はどこに行ったのです」
「さあ? その場のノリじゃない?」
「どんなノリですか……」
葵の発言に爽はただ困惑する。
「とにかく、思った以上に体力を消耗しちゃってちょっと筋肉痛になっちゃった次の日にテストはなかなか厳しいって話だよ」
「今日テストが行われること自体は決まっていたものですから……大変恐れ多いですがご自身のスケジュール調整に問題があったと言わざるを得ませんね」
「それにしても一日中テストとは……」
葵が顔をしかめる。爽が眼鏡の縁を触りながら呟く。
「勉学は学生の本分ですから」
「先生みたいなことを言うね」
爽の呟きに対し、葵が苦笑する。
「一日どころか、この約一週間の合宿ほとんど丸々補修やテストだという方々もいますから、その方々に比べればレクリエーションに複数参加出来るだけ恵まれています。もちろん、葵様が日々の学業にしっかりと励まれていたからですが」
「そう言われるとマシな方なんだ」
爽の説明を聞き、葵は笑顔を浮かべる。そこからやや離れた席に金銀と将司が座っている。葵たちの様子を見つめつつ、将司が金銀に話しかける。
「金銀お嬢様、テスト大変でしたね……」
「そう? 仮眠が取れて、それなりに有意義な時間でしたわ」
「か、仮眠ですか?」
「ええ、どの科目も五分くらいで解き終わりましたから」
「ええっ⁉」
「そんなに驚くことかしら?」
「け、結構難しい問題もあったと思うのですが……」
「あれくらい私にかかればお茶の子さいさいですわ」
「……数字を書いた鉛筆を転がして、出た目を記入したんですか?」
「……それってマークシート方式とかでやることでしょう? 私は仮にマークシート方式でも、そんな運任せみたいなことは致しませんわ」
金銀が将司に冷ややかな視線を向ける。将司が頭を下げる。
「し、失礼しました」
「それは良いとして……昨日のビーチバレー大会はどうだったのですか?」
「参加者は皆体操服姿だったので、女子生徒の水着姿を期待したギャラリーの男子生徒たちはがっかりしていました」
「……そんなことは聞いておりません」
金銀が将司に対し更に冷ややかな視線を向ける。将司が再び頭を下げる。
「す、すみません」
「私が聞きたいのは黒が塗り潰せた件です」
「あくまでも偶然の産物ですが、黒駆と上様の関係には若干のひびが入りました」
「ビーチバレーというのは二人一組で行うものですよね? プレーの面で何らかの衝突でもあったのですか?」
「いえ、二人はそれぞれ別の相手とペアを組んでいました」
「え?」
「黒駆は西東イザベラという女子生徒と、上様は高尾さんと組まれていました」
「ちょっと待って。どなたですか高尾さんって?」
「用務員の方です」
「用務員さん?」
「なかなか鋭い動きを見せていらっしゃいましたよ。これが動画です」
将司は金銀に端末を見せる。動画を見た金銀が首を傾げる。
「この方、只者とは思えませんわ……この方の経歴は分かる?」
「え? い、いえ、そこまでは……」
「……まあ良いです。計画に支障はないでしょう」
「すぐに調べますか?」
「いえ、それには及びません。とにかく、厄介な黒をこの段階で塗り潰せたのは幸いですわ。正直どうしたものかと頭を悩ましていましたから」
「それはなによりです」
「どうやら風はこちらに吹いているようですわね」
腕を組んで頷く金銀に対し、将司が尋ねる。
「金銀お嬢様、次の一手は?」
「……彼らは?」
「いつでも準備は出来ています」
「それは結構」
将司の答えに金銀は満足そうに頷く。将司が重ねて尋ねる。
「ということは次の一手は計画通りですか?」
「ええ、彼らを呼んで頂戴」
「かしこまりました……」
将司が端末を操作する。金銀が答えを待つ。
「……」
「……すぐにこちらに参ります」
「さて、一気に攻勢をかけるとしますか……」
金銀が葵を遠目に見つめながら、不敵な笑みを浮かべる。
「あ~テストしんどかった~」
夕食を終えた葵は机の上に突っ伏す。爽がたしなめる。
「葵様、はしたないですよ」
「さすがに疲れたよ……」
「周りの目もありますから……」
「分かったよ……」
葵はさっと姿勢を正す。爽はふっと笑う。
「……一日丸々テストは確かに大変でしたね」
「そうだよ、昨日は午前中に『豪華プレゼント争奪! スイカ割り・2on2』、午後には『豪華賞品争奪! ビーチバレー大会』に参加して体中筋肉痛なんだよ~」
「……どちらもレクリエーションではないですか。しかもプレゼントや商品に思いきりつられてしまっている……」
「それがどうしてなかなかハードだったんだよ! スイカ割り・2оn2は風圧で吹っ飛ばされるし、ビーチバレーはボールが破裂するし! そりゃあ豪華な景品も出るよ!」
身振り手振りで熱弁する葵に対し、爽はやや首を傾げる。
「色々と突っ込みたいところはあるのですが……まずスイカ割り・2on2とは一体なんなのでしょうか?」
「あれ、割り2を知らない?」
「知らないものの略称を言われても……」
「二組のペアが同時に一つのスイカを狙い、相手のペアの様々な妨害をかわしつつ、先にスイカを割った方が勝者の種目だよ」
「何故スイカ割りでそんな殺伐としそうなことをしなくてはならないのですか……」
「う~ん、そこにスイカがあるからじゃない?」
「哲学的なことをおっしゃられても……」
「それは冗談。尾成さん発案の企画だってさ」
「ああ、そうなのでしたか、道理で……天才と呼ばれるような方の考えることは凡人にはよく理解が出来ませんね……」
葵の言葉に爽は目を細める。
「最終的には四組が激しく入り乱れるバトルロイヤルになったよ」
「どうしてそうなったのですか。2оn2はどこに行ったのです」
「さあ? その場のノリじゃない?」
「どんなノリですか……」
葵の発言に爽はただ困惑する。
「とにかく、思った以上に体力を消耗しちゃってちょっと筋肉痛になっちゃった次の日にテストはなかなか厳しいって話だよ」
「今日テストが行われること自体は決まっていたものですから……大変恐れ多いですがご自身のスケジュール調整に問題があったと言わざるを得ませんね」
「それにしても一日中テストとは……」
葵が顔をしかめる。爽が眼鏡の縁を触りながら呟く。
「勉学は学生の本分ですから」
「先生みたいなことを言うね」
爽の呟きに対し、葵が苦笑する。
「一日どころか、この約一週間の合宿ほとんど丸々補修やテストだという方々もいますから、その方々に比べればレクリエーションに複数参加出来るだけ恵まれています。もちろん、葵様が日々の学業にしっかりと励まれていたからですが」
「そう言われるとマシな方なんだ」
爽の説明を聞き、葵は笑顔を浮かべる。そこからやや離れた席に金銀と将司が座っている。葵たちの様子を見つめつつ、将司が金銀に話しかける。
「金銀お嬢様、テスト大変でしたね……」
「そう? 仮眠が取れて、それなりに有意義な時間でしたわ」
「か、仮眠ですか?」
「ええ、どの科目も五分くらいで解き終わりましたから」
「ええっ⁉」
「そんなに驚くことかしら?」
「け、結構難しい問題もあったと思うのですが……」
「あれくらい私にかかればお茶の子さいさいですわ」
「……数字を書いた鉛筆を転がして、出た目を記入したんですか?」
「……それってマークシート方式とかでやることでしょう? 私は仮にマークシート方式でも、そんな運任せみたいなことは致しませんわ」
金銀が将司に冷ややかな視線を向ける。将司が頭を下げる。
「し、失礼しました」
「それは良いとして……昨日のビーチバレー大会はどうだったのですか?」
「参加者は皆体操服姿だったので、女子生徒の水着姿を期待したギャラリーの男子生徒たちはがっかりしていました」
「……そんなことは聞いておりません」
金銀が将司に対し更に冷ややかな視線を向ける。将司が再び頭を下げる。
「す、すみません」
「私が聞きたいのは黒が塗り潰せた件です」
「あくまでも偶然の産物ですが、黒駆と上様の関係には若干のひびが入りました」
「ビーチバレーというのは二人一組で行うものですよね? プレーの面で何らかの衝突でもあったのですか?」
「いえ、二人はそれぞれ別の相手とペアを組んでいました」
「え?」
「黒駆は西東イザベラという女子生徒と、上様は高尾さんと組まれていました」
「ちょっと待って。どなたですか高尾さんって?」
「用務員の方です」
「用務員さん?」
「なかなか鋭い動きを見せていらっしゃいましたよ。これが動画です」
将司は金銀に端末を見せる。動画を見た金銀が首を傾げる。
「この方、只者とは思えませんわ……この方の経歴は分かる?」
「え? い、いえ、そこまでは……」
「……まあ良いです。計画に支障はないでしょう」
「すぐに調べますか?」
「いえ、それには及びません。とにかく、厄介な黒をこの段階で塗り潰せたのは幸いですわ。正直どうしたものかと頭を悩ましていましたから」
「それはなによりです」
「どうやら風はこちらに吹いているようですわね」
腕を組んで頷く金銀に対し、将司が尋ねる。
「金銀お嬢様、次の一手は?」
「……彼らは?」
「いつでも準備は出来ています」
「それは結構」
将司の答えに金銀は満足そうに頷く。将司が重ねて尋ねる。
「ということは次の一手は計画通りですか?」
「ええ、彼らを呼んで頂戴」
「かしこまりました……」
将司が端末を操作する。金銀が答えを待つ。
「……」
「……すぐにこちらに参ります」
「さて、一気に攻勢をかけるとしますか……」
金銀が葵を遠目に見つめながら、不敵な笑みを浮かべる。
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