111 / 145
第二章 いざ江の島へ
朝の寝室
しおりを挟む
捌
「ん……」
「起きたカ?」
葵が目を覚ますと、枕元からイザベラが覗き込んできた。
「う、うわあっ⁉」
葵は驚いて飛び起きる。イザベラが不服そうな顔をする。
「人の顔を見て悲鳴を上げるとは、相変わらず失礼だナ……」
「だから、そうやって枕元にいられると驚くんだって……」
葵が眠い目をこすりながらぼやく。
「警護対象の安全を確認せねばならんからナ……」
「も、もっとまともに確認してよ……ああ、おはよう、ザベちゃん」
「おはよウ……」
「うん……」
葵が伸びをする。
「昨日はよく眠れたカ?」
「もうぐっすりと!」
「それは何よりだナ」
「だってさ、ほぼ一日テストだったんだよ!」
「それは把握していル」
「そういえば、ザベちゃんはテストどうだったの?」
「……それを聞いてどうすル?」
「え? 普通気になるじゃん、友達のテストの手ごたえとか」
「トモダチ?」
イザベラはいささか驚いた表情になる。
「そう! で? どうだったの?」
「……まずは自分がどうだったのダ?」
「う~ん、ボチボチってところかな?」
「墓地墓地……そうか、聞いた私が悪かっタ……」
イザベラが少々罰の悪そうな顔になり、すぐに顔を背ける。
「い、いや! 誤解していない⁉ まあまあだったってことだよ!」
「マアマア……」
「そうそう!」
「だったら初めからそう言エ……」
「いや、日本語ペラペラだから通じると思うじゃん!」
「戦場において思い込みというのは危険ダ……」
「ここは戦場じゃないよ! ワードがいちいち不穏なんだって!」
「戦場=仕事場みたいなものダ」
「ま、まあ、それで良いけどさ。で?」
「うン?」
「テストはどうだったの?」
「私は実ハ……」
「実は?」
「はっきりと言ってしまえバ……」
「ん?」
「この学園に潜入しているようなものダ」
「うん、それはなんとなく分かるよ」
「なッ!」
葵の言葉にイザベラが驚いた視線を向ける。葵が戸惑う。
「な、なに……?」
「気付いていたのカ……?」
「そ、そりゃあねえ……」
「思っているよりは愚かではないということカ……」
「え? それじゃあ、今でも愚かって思っているってことじゃん!」
「なかなか鋭いナ……」
「馬鹿にしてんの? まあ、いいやザベちゃんのテストの出来は?」
「今さら学生どもと肩を並べてテストに臨むなどまったく馬鹿らしイ……」
「手を抜いたってこと? ダメだよ!」
「ダメ? なにがダ?」
「もしも追試になったら私のこと警護出来なくなるじゃん!」
「……警護を嫌がっていただろウ……」
「でも、これも何かの縁じゃん!」
「エン?」
「せっかくだからザベちゃんとも夏の思い出一杯作りたいよ!」
「!」
「だから追試だったら大変じゃん」
葵の真剣な眼差しを見て、イザベラはプッと吹き出す。
「フフ……」
「何がおかしいのよ!」
「い、いや、なんでもなイ……」
「なんでもなかったらなんで笑うのよ⁉」
「まあ、少し落ち着ケ……深呼吸ダ」
自らに迫ってくる葵をイザベラはなだめる。葵は深呼吸をする。
「……落ち着いたよ」
「素直だナ」
「深呼吸しろって言うから」
「テストだが、追試にはならない程度にはしておいタ。問題はなイ……」
「そ、そんなことが出来るの? ま、まさか、カンニング⁉ 腕利きのガンマンの技術を生かして……!」
「なにが悲しくてガンマンとして培った技術をカンニングに費やさねばならんのダ……」
「そ、それじゃあ、ちゃんとテストは受けたんだね!」
「だからそう言っているだろウ……」
「良かった、良かった!」
「! か、肩をばしばしと叩くナ……それよりショーグンはどうなんダ?」
「え?」
葵が首を傾げる。イザベラはため息をつく。
「まあまあと答えたナ……むしろそちらの方が追試の可能性が高いんじゃないカ?」
「! そ、そう言われると……」
葵が急に不安げな表情になる。
「……追試の受験者一覧、掲示板に張り出されていましたよ」
爽が部屋に戻ってくる。
「え? ちょ、ちょっと見てくる!」
葵は寝間着のまま飛び出す。爽はため息交じりでイザベラに尋ねる。
「葵様なら心配はいらないでしょうに……何を吹き込んだのですか?」
「別二……向こうが勝手に盛り上がっただけダ……」
「本日の予定ですが、把握されていますか?」
「勿論ダ」
「わたくしは参加できません。なかなか難しい警護になるかと思いますが……」
「問題はなイ……」
「どうやらあの方が動くそうです。一応警戒を……」
「ある筋からその情報は既に得ていル……心配するナ」
「流石ですね。よろしくお願いします」
爽がイザベラに向かって丁寧に頭を下げる。
「ん……」
「起きたカ?」
葵が目を覚ますと、枕元からイザベラが覗き込んできた。
「う、うわあっ⁉」
葵は驚いて飛び起きる。イザベラが不服そうな顔をする。
「人の顔を見て悲鳴を上げるとは、相変わらず失礼だナ……」
「だから、そうやって枕元にいられると驚くんだって……」
葵が眠い目をこすりながらぼやく。
「警護対象の安全を確認せねばならんからナ……」
「も、もっとまともに確認してよ……ああ、おはよう、ザベちゃん」
「おはよウ……」
「うん……」
葵が伸びをする。
「昨日はよく眠れたカ?」
「もうぐっすりと!」
「それは何よりだナ」
「だってさ、ほぼ一日テストだったんだよ!」
「それは把握していル」
「そういえば、ザベちゃんはテストどうだったの?」
「……それを聞いてどうすル?」
「え? 普通気になるじゃん、友達のテストの手ごたえとか」
「トモダチ?」
イザベラはいささか驚いた表情になる。
「そう! で? どうだったの?」
「……まずは自分がどうだったのダ?」
「う~ん、ボチボチってところかな?」
「墓地墓地……そうか、聞いた私が悪かっタ……」
イザベラが少々罰の悪そうな顔になり、すぐに顔を背ける。
「い、いや! 誤解していない⁉ まあまあだったってことだよ!」
「マアマア……」
「そうそう!」
「だったら初めからそう言エ……」
「いや、日本語ペラペラだから通じると思うじゃん!」
「戦場において思い込みというのは危険ダ……」
「ここは戦場じゃないよ! ワードがいちいち不穏なんだって!」
「戦場=仕事場みたいなものダ」
「ま、まあ、それで良いけどさ。で?」
「うン?」
「テストはどうだったの?」
「私は実ハ……」
「実は?」
「はっきりと言ってしまえバ……」
「ん?」
「この学園に潜入しているようなものダ」
「うん、それはなんとなく分かるよ」
「なッ!」
葵の言葉にイザベラが驚いた視線を向ける。葵が戸惑う。
「な、なに……?」
「気付いていたのカ……?」
「そ、そりゃあねえ……」
「思っているよりは愚かではないということカ……」
「え? それじゃあ、今でも愚かって思っているってことじゃん!」
「なかなか鋭いナ……」
「馬鹿にしてんの? まあ、いいやザベちゃんのテストの出来は?」
「今さら学生どもと肩を並べてテストに臨むなどまったく馬鹿らしイ……」
「手を抜いたってこと? ダメだよ!」
「ダメ? なにがダ?」
「もしも追試になったら私のこと警護出来なくなるじゃん!」
「……警護を嫌がっていただろウ……」
「でも、これも何かの縁じゃん!」
「エン?」
「せっかくだからザベちゃんとも夏の思い出一杯作りたいよ!」
「!」
「だから追試だったら大変じゃん」
葵の真剣な眼差しを見て、イザベラはプッと吹き出す。
「フフ……」
「何がおかしいのよ!」
「い、いや、なんでもなイ……」
「なんでもなかったらなんで笑うのよ⁉」
「まあ、少し落ち着ケ……深呼吸ダ」
自らに迫ってくる葵をイザベラはなだめる。葵は深呼吸をする。
「……落ち着いたよ」
「素直だナ」
「深呼吸しろって言うから」
「テストだが、追試にはならない程度にはしておいタ。問題はなイ……」
「そ、そんなことが出来るの? ま、まさか、カンニング⁉ 腕利きのガンマンの技術を生かして……!」
「なにが悲しくてガンマンとして培った技術をカンニングに費やさねばならんのダ……」
「そ、それじゃあ、ちゃんとテストは受けたんだね!」
「だからそう言っているだろウ……」
「良かった、良かった!」
「! か、肩をばしばしと叩くナ……それよりショーグンはどうなんダ?」
「え?」
葵が首を傾げる。イザベラはため息をつく。
「まあまあと答えたナ……むしろそちらの方が追試の可能性が高いんじゃないカ?」
「! そ、そう言われると……」
葵が急に不安げな表情になる。
「……追試の受験者一覧、掲示板に張り出されていましたよ」
爽が部屋に戻ってくる。
「え? ちょ、ちょっと見てくる!」
葵は寝間着のまま飛び出す。爽はため息交じりでイザベラに尋ねる。
「葵様なら心配はいらないでしょうに……何を吹き込んだのですか?」
「別二……向こうが勝手に盛り上がっただけダ……」
「本日の予定ですが、把握されていますか?」
「勿論ダ」
「わたくしは参加できません。なかなか難しい警護になるかと思いますが……」
「問題はなイ……」
「どうやらあの方が動くそうです。一応警戒を……」
「ある筋からその情報は既に得ていル……心配するナ」
「流石ですね。よろしくお願いします」
爽がイザベラに向かって丁寧に頭を下げる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる