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第一章
第7話(4)散々な言われよう
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「ま、負けた……」
「まさか紅二まで……」
「まだ私がいるわ!」
三つ子の一人でやや緑がかった髪の女子が前に進み出る。日光が首を傾げる。
「……誰だ?」
「っ⁉ わ、私は出席番号10番の大城戸(おおきど)みどりよ!」
「三兄妹の末っ子よ……」
照美が再び日光に囁く。日光が頷く。
「そうか」
「というか、あなたって本当に私たち三兄妹に興味が無かったのね?」
「いや、三つ子だな、というくらいには思っていたぞ?」
「関心薄っ!」
「三人とも髪の色が少し違う以外は同じようなショートカットだからな……もう少し区別化をしてくれないと……こちらとしても反応に困る」
「ど、どんな髪型をしようが自由でしょう⁉」
「背丈も一緒くらいだからな……」
「そ、それはしょうがないでしょう⁉」
「なんとかして差をつけてくれないと……」
「む、無茶を言わないで!」
日光に対し、みどりが声を荒げる。照美がみどりに声をかける。
「みどり、ちょっと落ち着いて」
「これが落ち着いていられる⁉」
「あなたも勝負をしようというの?」
「ええ」
「お兄さん二人に調子を合わせているのでしょう?」
「違うわ! むしろ、私が一番不満を持っているのよ!」
「ええっ⁉」
みどりの言葉に照美が驚く。
「昨年度からクラス日誌を付けているのは主に私だった! なのに、なんの役職にもつけないだなんて!」
「そうなのか?」
「そ、そういえば……」
日光の問いに照美はバツの悪そうな顔をする。
「そんなクラスなら変えてやるわ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて……」
「というわけで勝負よ! 仁子日光!」
「ええっ⁉ そこで俺になるのか⁉」
「そうよ!」
「い、いや、クラス長の照美と対決って流れじゃないのか?」
「照美とは良い友人でいたいからね。それに……」
「それに?」
「クラス長とか面倒くさそうだし、副クラス長くらいでいいわ、多くは望まない」
「め、名誉だけを欲しがるな!」
「とにかく勝負よ!」
「そう言われてもな……」
「まさか女から逃げる気?」
「!」
「別にそれならそれでもいいけど……」
みどりが笑みを浮かべる。日光がゆっくりと口を開く。
「……いいだろう、その勝負受けて立とう」
「そうこなくっちゃね!」
「だが、まさか殴り合いというわけにはいくまい?」
「そのまさかよ」
「なんだと? 勝負にならんぞ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。あんたは私に指一本触れずに終わる……」
「何を……!」
「試してみる?」
「……いいだろう」
日光とみどりが向かい合う。みどりが告げる。
「……それじゃあ、いつでもかかってらっしゃい」
「後で文句を言うなよ……」
「日光君!」
「心配するな、照美……加減はするさ。行くぞ!」
「はっ!」
「⁉」
みどりが懐から筆を取り出す。日光の動きが止まる。
「仁子の動きが止まった!」
「みどりの能力が決まったな!」
蒼太と紅二が歓声を上げる。日光がわずかに口を動かして照美に問う。
「こ、これは……?」
「……それはみどりの微能力、『黒歴史』よ」
「く、黒歴史……?」
「そう、人が誰しも持っているという忘れてしまいたい記憶、心の奥底に秘めている恥ずかしい記憶、いわゆる黒歴史……私はその黒歴史を引っ張り出し、相手の精神をかき乱すことが出来るのよ」
「な、なんて恐ろしい……」
聡乃が身震いする。みどりが首を傾げる。
「……でも、口を動かせるなんて……大した精神力ね」
「違うわ、みどり……」
「え?」
みどりが照美の方に視線を向ける。
「彼には……日光君には通用しない」
「うおおっ!」
「えっ⁉」
日光が急に動き出し、みどりに迫り、拳を思い切り突き出す。照美が叫ぶ。
「日光君!」
「……分かっているさ」
日光が拳をみどりの前で寸止めする。みどりが座り込み、信じられないという表情で呟く。
「ど、どうして……?」
「……日光君には黒歴史など存在しないのよ」
「⁉ そ、そんな馬鹿な!」
照美の言葉にみどりが愕然とする。照美がフッと笑う。
「存在自体が黒歴史みたいなものだからね」
「そ、そうか……重度の中二病である日光さんは歩く黒歴史製造機のようなもの……引っ張り出されて精神をかき乱される心配がないし、つつかれても痛くも痒くもないんだ……」
「散々な言われようだな……」
日光が照美と聡乃の言葉に苦笑する。
「……決着はついたかしら? そろそろ朝のホームルームが始まりますよ」
場を離れていた地山が戻ってきて声をかける。みどりが立ち上がる。
「ええ、私たちの負けです……」
「気は済んだということね?」
「はい。私たち大城戸三兄妹はあらためて東クラス長たちについていきます」
みどりは地山にそう告げると、日光たちに向き直り、一礼する。蒼太と紅二もそれに倣う。
「頼もしい味方が増えたわね」
「『コピペ』、『飯テロ』、『黒歴史』……頼もしいか?」
「どんな能力も使いようなんでしょう?」
首を傾げる日光に対し、照美が笑いかける。
「まさか紅二まで……」
「まだ私がいるわ!」
三つ子の一人でやや緑がかった髪の女子が前に進み出る。日光が首を傾げる。
「……誰だ?」
「っ⁉ わ、私は出席番号10番の大城戸(おおきど)みどりよ!」
「三兄妹の末っ子よ……」
照美が再び日光に囁く。日光が頷く。
「そうか」
「というか、あなたって本当に私たち三兄妹に興味が無かったのね?」
「いや、三つ子だな、というくらいには思っていたぞ?」
「関心薄っ!」
「三人とも髪の色が少し違う以外は同じようなショートカットだからな……もう少し区別化をしてくれないと……こちらとしても反応に困る」
「ど、どんな髪型をしようが自由でしょう⁉」
「背丈も一緒くらいだからな……」
「そ、それはしょうがないでしょう⁉」
「なんとかして差をつけてくれないと……」
「む、無茶を言わないで!」
日光に対し、みどりが声を荒げる。照美がみどりに声をかける。
「みどり、ちょっと落ち着いて」
「これが落ち着いていられる⁉」
「あなたも勝負をしようというの?」
「ええ」
「お兄さん二人に調子を合わせているのでしょう?」
「違うわ! むしろ、私が一番不満を持っているのよ!」
「ええっ⁉」
みどりの言葉に照美が驚く。
「昨年度からクラス日誌を付けているのは主に私だった! なのに、なんの役職にもつけないだなんて!」
「そうなのか?」
「そ、そういえば……」
日光の問いに照美はバツの悪そうな顔をする。
「そんなクラスなら変えてやるわ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて……」
「というわけで勝負よ! 仁子日光!」
「ええっ⁉ そこで俺になるのか⁉」
「そうよ!」
「い、いや、クラス長の照美と対決って流れじゃないのか?」
「照美とは良い友人でいたいからね。それに……」
「それに?」
「クラス長とか面倒くさそうだし、副クラス長くらいでいいわ、多くは望まない」
「め、名誉だけを欲しがるな!」
「とにかく勝負よ!」
「そう言われてもな……」
「まさか女から逃げる気?」
「!」
「別にそれならそれでもいいけど……」
みどりが笑みを浮かべる。日光がゆっくりと口を開く。
「……いいだろう、その勝負受けて立とう」
「そうこなくっちゃね!」
「だが、まさか殴り合いというわけにはいくまい?」
「そのまさかよ」
「なんだと? 勝負にならんぞ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。あんたは私に指一本触れずに終わる……」
「何を……!」
「試してみる?」
「……いいだろう」
日光とみどりが向かい合う。みどりが告げる。
「……それじゃあ、いつでもかかってらっしゃい」
「後で文句を言うなよ……」
「日光君!」
「心配するな、照美……加減はするさ。行くぞ!」
「はっ!」
「⁉」
みどりが懐から筆を取り出す。日光の動きが止まる。
「仁子の動きが止まった!」
「みどりの能力が決まったな!」
蒼太と紅二が歓声を上げる。日光がわずかに口を動かして照美に問う。
「こ、これは……?」
「……それはみどりの微能力、『黒歴史』よ」
「く、黒歴史……?」
「そう、人が誰しも持っているという忘れてしまいたい記憶、心の奥底に秘めている恥ずかしい記憶、いわゆる黒歴史……私はその黒歴史を引っ張り出し、相手の精神をかき乱すことが出来るのよ」
「な、なんて恐ろしい……」
聡乃が身震いする。みどりが首を傾げる。
「……でも、口を動かせるなんて……大した精神力ね」
「違うわ、みどり……」
「え?」
みどりが照美の方に視線を向ける。
「彼には……日光君には通用しない」
「うおおっ!」
「えっ⁉」
日光が急に動き出し、みどりに迫り、拳を思い切り突き出す。照美が叫ぶ。
「日光君!」
「……分かっているさ」
日光が拳をみどりの前で寸止めする。みどりが座り込み、信じられないという表情で呟く。
「ど、どうして……?」
「……日光君には黒歴史など存在しないのよ」
「⁉ そ、そんな馬鹿な!」
照美の言葉にみどりが愕然とする。照美がフッと笑う。
「存在自体が黒歴史みたいなものだからね」
「そ、そうか……重度の中二病である日光さんは歩く黒歴史製造機のようなもの……引っ張り出されて精神をかき乱される心配がないし、つつかれても痛くも痒くもないんだ……」
「散々な言われようだな……」
日光が照美と聡乃の言葉に苦笑する。
「……決着はついたかしら? そろそろ朝のホームルームが始まりますよ」
場を離れていた地山が戻ってきて声をかける。みどりが立ち上がる。
「ええ、私たちの負けです……」
「気は済んだということね?」
「はい。私たち大城戸三兄妹はあらためて東クラス長たちについていきます」
みどりは地山にそう告げると、日光たちに向き直り、一礼する。蒼太と紅二もそれに倣う。
「頼もしい味方が増えたわね」
「『コピペ』、『飯テロ』、『黒歴史』……頼もしいか?」
「どんな能力も使いようなんでしょう?」
首を傾げる日光に対し、照美が笑いかける。
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