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第一章
第5レース(2)男子トーク
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「ぶえっくっしょん‼」
男子の部屋でレオンが盛大にくしゃみをする。嵐一が苦い顔をする。
「おいおい、汚ねえなあ」
「これは失礼……ふふん、どうやら女子たちが僕の噂をしているようだね」
「無えな」
「うん、それはないと思う」
「冗談だよ! 真面目に答えなくてもいいから!」
嵐一と炎仁の否定に対し、レオンは声を上げる。
「う~ん……絶対にありえないと思うよ~」
既にベッドに横になって布団を被った翔が寝ぼけた声で呟く。
「追い打ちかけなくていいよ!」
「それどころか、存在を忘れていると思うよ~」
「随分とひどいことを言うね⁉ さ、流石にそれはないだろう、Cクラスの男子は四人しかいないんだよ?」
「まあ、それはないだろうな……多分」
「うん、それはないと思うよ……多分」
「多分ってなんだよ、多分って⁉」
レオンが叫ぶ。嵐一がうんざりしたように呟く。
「それはいいから、さっさと話を戻せよ」
「ああ、えっと……何の話をしていたんだっけ?」
「寝るか」
「ええ」
嵐一と炎仁が席を立ち、ベッドに向かおうとする。
「ちょ、ちょっと待って! そうだ、思い出した! 明日のペア訓練のことだよ!」
「ペア訓練?」
「それがどうかしたのかよ?」
炎仁と嵐一が首を傾げる。
「いや、ここで誰が誰とペアを組むのか、あらかじめ決めておいた方がいいんじゃないかと思ってね」
「くだらねえ……」
嵐一が自身のベッドに潜る。炎仁は一応もう少し相手をしてやることにする。
「ペアを決めるのは教官じゃないのか?」
「あの教官殿のことだ、ひょっとしたら僕たちに希望を聞いてくるかもしれない」
「そうかな」
「そうだよ」
レオンは根拠も無く力強く頷いてみせる。
「そうだとしたらなんなんだよ?」
「誰とペアを組みたいか、各々の希望を聞いておきたい」
「そ、そんなことを聞いてどうするんだ?」
レオンの言葉に炎仁は戸惑う。
「せっかくの機会だよ? 『別に……』とか、『お任せします』、なんて曖昧な態度を取ったりしたら、女子たちから幻滅されちゃうよ」
「そ、そうなのか⁉」
「そうだよ」
「……アホみたいな話してねえでさっさと寝ろ、ガキども」
嵐一がレオンたちの方に顔を向けて呟く。
「じゃあ、草薙君は興味なしということで……余った娘とペアを組んでもらうから」
「……なんでそうなるんだよ」
嵐一が半身を起こす。レオンが指差す。
「ほら、不満だろ? だから話し合おうと言っているんだよ」
「ちっ……」
嵐一が体を起こし、ベッドに腰かける体勢になる。レオンが笑顔を浮かべる。
「よし、それじゃあ決めようか。誰と組みたい? 僕は紺碧ちゃん」
「真帆ちゃん~」
「……強いていうなら紺碧だな」
「えっ、えっ、えっ⁉」
三人の答えが揃ったことに炎仁は戸惑う。
「三人が紺碧ちゃんか」
「お、俺も真帆が良い!」
「はい駄目~炎仁君は出遅れました~」
「で、出遅れって……」
呆気に取られる炎仁を無視して、レオンは話を続ける。
「さて、紺碧ちゃんだけど……知っての通り、基本的な騎乗技術は既に備わっている。ただ、レース経験が圧倒的に足りない。その辺りをフォロー出来るとしたら僕が適任だと思う」
「レースのことなら、僕も教えられるよ~」
翔が布団を被ったまま手を伸ばす。レオンが目を細めて答える。
「却下」
「え~なんでさ?」
「……君の場合、あまりの実力差に紺碧ちゃんが自信を失ってしまう恐れがあるから良くない。僕くらいの技量がちょうど良い」
「なんか、自分で情けねえこと言ってねえか?」
嵐一が呆れた目をレオンに向ける。
「というわけで紺碧ちゃんとペアを組むのは僕で決まりだ」
「いや、勝手に決めんなよ」
「草薙君は撫子さんが良いんじゃないの? 手取り足取り教えてくれそうだよ」
「お嬢か、悪くはねえが……って、お前の言い方なんかやらしいんだよ」
「じゃあ僕は~?」
「天ノ川君は三日月さんが良いと思うよ。色々なデータを参考にして、君にアドバイスをすることが出来るのは彼女くらいだ」
「海ちゃんか~まあ、悪くはないか~」
「お嬢は駄目なのか? 現状てめえとタメはれんのはあいつくらいだろう?」
「飛鳥ちゃんとは、競竜観が違うからケンカになっちゃうと思うんだよね~」
「そういうものか……」
翔の答えに嵐一はとりあえず納得する。レオンが話をまとめようとする。
「じゃあ、そういうことで……」
「ちょ、ちょっと待て! 俺は⁉」
「え? 朝日さんで良いだろう。ドラゴンの脚質も似ているし」
「ど、どんな訓練するか分からないが、似ていたら訓練にならないんじゃないか?」
「似ていることで逆に見えてくることもあるよ~」
「な、何だよ、逆にって⁉」
「あいつ面倒見が良さそうだから、案外お前と相性良いんじゃねえか……多分」
「出た! 多分って! 適当に言っているでしょ⁉」
「じゃあ、電気消すよ」
「おやすみ~」
「……」
「い、いや、待て! ……ああ、もう!」
部屋が暗くなった為、炎仁としては全然納得のいく話し合いが出来なかったが、仕方が無いので眠ることにする。翌日……。
「はいよ~それじゃあ、ペア訓練の組み合わせを発表するよ~」
「……」
仏坂の言葉に皆じっと耳を傾ける。
「草薙君と天ノ川君君」
「!」
「そうきたか~」
翔が眠い目をこすりながら呟く。
「朝日さんと撫子さん」
「げっ……」
「げってなんですの、げって⁉」
嫌そうな顔を浮かべる青空に飛鳥が抗議する。
「紅蓮君と紺碧さん」
「おっ、おう……」
「良かった……」
炎仁と真帆はそれぞれ胸を撫で下ろす。
「金糸雀君と三日月さん」
「よ、よろしく……」
「ふむ……」
「ど、どうしたの?」
「いえ、金糸雀君とペアを組むのは全くの想定外だったなと思いまして」
「ひ、酷くない⁉」
海の言葉にレオンが声を上げる。
男子の部屋でレオンが盛大にくしゃみをする。嵐一が苦い顔をする。
「おいおい、汚ねえなあ」
「これは失礼……ふふん、どうやら女子たちが僕の噂をしているようだね」
「無えな」
「うん、それはないと思う」
「冗談だよ! 真面目に答えなくてもいいから!」
嵐一と炎仁の否定に対し、レオンは声を上げる。
「う~ん……絶対にありえないと思うよ~」
既にベッドに横になって布団を被った翔が寝ぼけた声で呟く。
「追い打ちかけなくていいよ!」
「それどころか、存在を忘れていると思うよ~」
「随分とひどいことを言うね⁉ さ、流石にそれはないだろう、Cクラスの男子は四人しかいないんだよ?」
「まあ、それはないだろうな……多分」
「うん、それはないと思うよ……多分」
「多分ってなんだよ、多分って⁉」
レオンが叫ぶ。嵐一がうんざりしたように呟く。
「それはいいから、さっさと話を戻せよ」
「ああ、えっと……何の話をしていたんだっけ?」
「寝るか」
「ええ」
嵐一と炎仁が席を立ち、ベッドに向かおうとする。
「ちょ、ちょっと待って! そうだ、思い出した! 明日のペア訓練のことだよ!」
「ペア訓練?」
「それがどうかしたのかよ?」
炎仁と嵐一が首を傾げる。
「いや、ここで誰が誰とペアを組むのか、あらかじめ決めておいた方がいいんじゃないかと思ってね」
「くだらねえ……」
嵐一が自身のベッドに潜る。炎仁は一応もう少し相手をしてやることにする。
「ペアを決めるのは教官じゃないのか?」
「あの教官殿のことだ、ひょっとしたら僕たちに希望を聞いてくるかもしれない」
「そうかな」
「そうだよ」
レオンは根拠も無く力強く頷いてみせる。
「そうだとしたらなんなんだよ?」
「誰とペアを組みたいか、各々の希望を聞いておきたい」
「そ、そんなことを聞いてどうするんだ?」
レオンの言葉に炎仁は戸惑う。
「せっかくの機会だよ? 『別に……』とか、『お任せします』、なんて曖昧な態度を取ったりしたら、女子たちから幻滅されちゃうよ」
「そ、そうなのか⁉」
「そうだよ」
「……アホみたいな話してねえでさっさと寝ろ、ガキども」
嵐一がレオンたちの方に顔を向けて呟く。
「じゃあ、草薙君は興味なしということで……余った娘とペアを組んでもらうから」
「……なんでそうなるんだよ」
嵐一が半身を起こす。レオンが指差す。
「ほら、不満だろ? だから話し合おうと言っているんだよ」
「ちっ……」
嵐一が体を起こし、ベッドに腰かける体勢になる。レオンが笑顔を浮かべる。
「よし、それじゃあ決めようか。誰と組みたい? 僕は紺碧ちゃん」
「真帆ちゃん~」
「……強いていうなら紺碧だな」
「えっ、えっ、えっ⁉」
三人の答えが揃ったことに炎仁は戸惑う。
「三人が紺碧ちゃんか」
「お、俺も真帆が良い!」
「はい駄目~炎仁君は出遅れました~」
「で、出遅れって……」
呆気に取られる炎仁を無視して、レオンは話を続ける。
「さて、紺碧ちゃんだけど……知っての通り、基本的な騎乗技術は既に備わっている。ただ、レース経験が圧倒的に足りない。その辺りをフォロー出来るとしたら僕が適任だと思う」
「レースのことなら、僕も教えられるよ~」
翔が布団を被ったまま手を伸ばす。レオンが目を細めて答える。
「却下」
「え~なんでさ?」
「……君の場合、あまりの実力差に紺碧ちゃんが自信を失ってしまう恐れがあるから良くない。僕くらいの技量がちょうど良い」
「なんか、自分で情けねえこと言ってねえか?」
嵐一が呆れた目をレオンに向ける。
「というわけで紺碧ちゃんとペアを組むのは僕で決まりだ」
「いや、勝手に決めんなよ」
「草薙君は撫子さんが良いんじゃないの? 手取り足取り教えてくれそうだよ」
「お嬢か、悪くはねえが……って、お前の言い方なんかやらしいんだよ」
「じゃあ僕は~?」
「天ノ川君は三日月さんが良いと思うよ。色々なデータを参考にして、君にアドバイスをすることが出来るのは彼女くらいだ」
「海ちゃんか~まあ、悪くはないか~」
「お嬢は駄目なのか? 現状てめえとタメはれんのはあいつくらいだろう?」
「飛鳥ちゃんとは、競竜観が違うからケンカになっちゃうと思うんだよね~」
「そういうものか……」
翔の答えに嵐一はとりあえず納得する。レオンが話をまとめようとする。
「じゃあ、そういうことで……」
「ちょ、ちょっと待て! 俺は⁉」
「え? 朝日さんで良いだろう。ドラゴンの脚質も似ているし」
「ど、どんな訓練するか分からないが、似ていたら訓練にならないんじゃないか?」
「似ていることで逆に見えてくることもあるよ~」
「な、何だよ、逆にって⁉」
「あいつ面倒見が良さそうだから、案外お前と相性良いんじゃねえか……多分」
「出た! 多分って! 適当に言っているでしょ⁉」
「じゃあ、電気消すよ」
「おやすみ~」
「……」
「い、いや、待て! ……ああ、もう!」
部屋が暗くなった為、炎仁としては全然納得のいく話し合いが出来なかったが、仕方が無いので眠ることにする。翌日……。
「はいよ~それじゃあ、ペア訓練の組み合わせを発表するよ~」
「……」
仏坂の言葉に皆じっと耳を傾ける。
「草薙君と天ノ川君君」
「!」
「そうきたか~」
翔が眠い目をこすりながら呟く。
「朝日さんと撫子さん」
「げっ……」
「げってなんですの、げって⁉」
嫌そうな顔を浮かべる青空に飛鳥が抗議する。
「紅蓮君と紺碧さん」
「おっ、おう……」
「良かった……」
炎仁と真帆はそれぞれ胸を撫で下ろす。
「金糸雀君と三日月さん」
「よ、よろしく……」
「ふむ……」
「ど、どうしたの?」
「いえ、金糸雀君とペアを組むのは全くの想定外だったなと思いまして」
「ひ、酷くない⁉」
海の言葉にレオンが声を上げる。
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