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第二章
第3レース(4)函館2歳ステークレース
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「~♪」
ファンファーレが響き、各竜がゲートに入る。グレンノイグニースは5枠8番に入った。
「!」
「はっ!」
「‼」
皆が驚く。グレンノイグニースが大方の予想に反して、逃げに入ったからである。スタンドはどよめく。そのどよめき具合を見ながら環太郎がほくそ笑む。
「へへっ、どいつもこいつも驚いていやがるな……」
「ここに来てスタートが上手く決まりましたね」
「函館に来てから集中的にスタートの練習をさせていたからな」
環の言葉に環太郎が応える。
「最初からこういうレースプランを?」
「いいや、半分思いつきだ……」
「思いつきって⁉」
「まあ、見てろって……」
先頭を行くグレンノイグニースはスピードを緩めない。それを見て、ホロウスターが並びかかろうとする。
「まあ、そうくるよな……」
炎仁はそれをしっかりと確認する。
「……」
ホロウスターがグレンノイグニースに並ぼうとする。ホロウスターの騎手が語りかける。
「おいおい! まさか逃げるとは聞いてないぜ……」
「それっ!」
「なっ!」
炎仁は再びグレンノイグニースを加速させる。ホロウスターの騎手は一瞬迷うが、再びグレンノイグニースを追いかけさせる。
「ふっ……」
「おい新人よ! そのドラゴンは追込型だろうが! 初めての重賞だからって舞い上がってんのかよ⁉」
「えっ⁉ なんですか⁉」
「ったく、聞こえてないのかよ!」
ホロウスターが再び並びかけようとする。
「おおっ!」
「はあ……」
「そらっ!」
「なっ⁉」
炎仁は三度グレンノイグニースを加速させる。それを見たホロウスターの騎手がたまらずに声を上げる。
「おい、そのドラゴンにしてはペース速すぎだぞ! せっかくの一番人気なんだからファンの期待に応えるようなレースをしろよ!」
「ええっ⁉」
「駄目だ、すっかり舞い上がってやがんな……」
「なんですか⁉」
「もう良いよ!」
ホロウスターが三度並びかける。グレンノイグニースがずるずると下がっていく。
「くっ!」
「言わんこっちゃない!」
ホロウスターの騎手が苦笑する。
「レースは中盤過ぎです……」
「上り坂が終わって下りに入るな……」
環の呟きに環太郎が反応する。するとスタンドから再びどよめきが起こる。グレンノイグニースが最後方近くまで下がったと同時に、ホロウスターをはじめとした先頭集団も失速したからである。
「ちっ!」
「いただきっす!」
「ああん⁉ てめえ!」
4コーナー途中でホロウスターをツヨキモモタロウがかわしにかかる。
「これはツヨキモモタロウの勝ちパターン⁉」
「いや、まだ分からねえよ……」
声を上げる環に環太郎が笑みを浮かべる。
「もらったかな……!」
スタンドから歓声が上がる。もっともレースに集中しきっている騎手たちにはその声はほとんど聞こえないが、気配は感じた。ツヨキモモタロウの騎手が一瞬後ろを振り向くと、斜め後方から、複数のドラゴンが突っ込んできた。
「この時期はやはり後方からの差しが決まるな……」
環太郎が呟く。環が叫ぶ。
「パワードアックスの脚色が良いです!」
「力強い走りだな」
「もらったぜ!」
「くそっ!」
パワードアックスがツヨキモモタロウをかわして先頭に立とうとする。パワードアックスの騎手が声を上げる。
「はっ! こういう硬くて重い竜場には強いな! これからが楽しみだぜ!」
「勝利を確信するのはまだ早いですよ!」
「なにっ⁉」
パワードアックスの騎手が視線を斜め後方に一瞬向けて驚く。グレンノイグニースが突っ込んできたからである。
「レースはここからです!」
「な、なんでお前が……後方に沈んだだろう? まさか⁉」
視線を前に戻したパワードアックスの騎手がハッとなる。
「そのまさかです!」
炎仁が笑みを浮かべる。
「ハイペースはわざと⁉ 死んだふりしていたのかよ⁉」
「そうです!」
「新人の癖に少々生意気だぜ!」
「レースに新人もベテランも関係ない!」
「‼」
「うおおっ!」
グレンノイグニースがパワードアックスに並びかける。
「舐めるなよ!」
パワードアックスも粘りを見せる。
「そっちこそ、イグニースの勝負根性を舐めるな!」
「⁉」
グレンノイグニースがさらにひと伸びし、ゴール直前でパワードアックスをかわず。
「いっけえええ!」
「グレンノイグニース、一着! 今年の函館2歳ステークレースはグレンノイグニースが制しました! これで破竹の6連勝です!」
「よっしゃあ!」
炎仁が派手なガッツポーズを取る。
「やったあ!」
スタンドでは環が環太郎に抱き着く。
「お、おい、はしゃぎすぎだ!」
「だって、うちの厩舎久々の重賞勝利ですよ⁉ 今はしゃがないでいつはしゃぐんですか⁉ しかし、紅蓮さん、見事な騎乗でしたね……」
「集中するマークを逆手に取って、こちらのペースで動かせてもらったな。まさか重賞初騎乗の新人がレースをかき回すとは誰も予想しなかっただろうな」
「これは本当に……ひょっとするとひょっとするかも?」
環太郎と環がファンの声援に応える炎仁とグレンノイグニースを笑顔で見つめる。
ファンファーレが響き、各竜がゲートに入る。グレンノイグニースは5枠8番に入った。
「!」
「はっ!」
「‼」
皆が驚く。グレンノイグニースが大方の予想に反して、逃げに入ったからである。スタンドはどよめく。そのどよめき具合を見ながら環太郎がほくそ笑む。
「へへっ、どいつもこいつも驚いていやがるな……」
「ここに来てスタートが上手く決まりましたね」
「函館に来てから集中的にスタートの練習をさせていたからな」
環の言葉に環太郎が応える。
「最初からこういうレースプランを?」
「いいや、半分思いつきだ……」
「思いつきって⁉」
「まあ、見てろって……」
先頭を行くグレンノイグニースはスピードを緩めない。それを見て、ホロウスターが並びかかろうとする。
「まあ、そうくるよな……」
炎仁はそれをしっかりと確認する。
「……」
ホロウスターがグレンノイグニースに並ぼうとする。ホロウスターの騎手が語りかける。
「おいおい! まさか逃げるとは聞いてないぜ……」
「それっ!」
「なっ!」
炎仁は再びグレンノイグニースを加速させる。ホロウスターの騎手は一瞬迷うが、再びグレンノイグニースを追いかけさせる。
「ふっ……」
「おい新人よ! そのドラゴンは追込型だろうが! 初めての重賞だからって舞い上がってんのかよ⁉」
「えっ⁉ なんですか⁉」
「ったく、聞こえてないのかよ!」
ホロウスターが再び並びかけようとする。
「おおっ!」
「はあ……」
「そらっ!」
「なっ⁉」
炎仁は三度グレンノイグニースを加速させる。それを見たホロウスターの騎手がたまらずに声を上げる。
「おい、そのドラゴンにしてはペース速すぎだぞ! せっかくの一番人気なんだからファンの期待に応えるようなレースをしろよ!」
「ええっ⁉」
「駄目だ、すっかり舞い上がってやがんな……」
「なんですか⁉」
「もう良いよ!」
ホロウスターが三度並びかける。グレンノイグニースがずるずると下がっていく。
「くっ!」
「言わんこっちゃない!」
ホロウスターの騎手が苦笑する。
「レースは中盤過ぎです……」
「上り坂が終わって下りに入るな……」
環の呟きに環太郎が反応する。するとスタンドから再びどよめきが起こる。グレンノイグニースが最後方近くまで下がったと同時に、ホロウスターをはじめとした先頭集団も失速したからである。
「ちっ!」
「いただきっす!」
「ああん⁉ てめえ!」
4コーナー途中でホロウスターをツヨキモモタロウがかわしにかかる。
「これはツヨキモモタロウの勝ちパターン⁉」
「いや、まだ分からねえよ……」
声を上げる環に環太郎が笑みを浮かべる。
「もらったかな……!」
スタンドから歓声が上がる。もっともレースに集中しきっている騎手たちにはその声はほとんど聞こえないが、気配は感じた。ツヨキモモタロウの騎手が一瞬後ろを振り向くと、斜め後方から、複数のドラゴンが突っ込んできた。
「この時期はやはり後方からの差しが決まるな……」
環太郎が呟く。環が叫ぶ。
「パワードアックスの脚色が良いです!」
「力強い走りだな」
「もらったぜ!」
「くそっ!」
パワードアックスがツヨキモモタロウをかわして先頭に立とうとする。パワードアックスの騎手が声を上げる。
「はっ! こういう硬くて重い竜場には強いな! これからが楽しみだぜ!」
「勝利を確信するのはまだ早いですよ!」
「なにっ⁉」
パワードアックスの騎手が視線を斜め後方に一瞬向けて驚く。グレンノイグニースが突っ込んできたからである。
「レースはここからです!」
「な、なんでお前が……後方に沈んだだろう? まさか⁉」
視線を前に戻したパワードアックスの騎手がハッとなる。
「そのまさかです!」
炎仁が笑みを浮かべる。
「ハイペースはわざと⁉ 死んだふりしていたのかよ⁉」
「そうです!」
「新人の癖に少々生意気だぜ!」
「レースに新人もベテランも関係ない!」
「‼」
「うおおっ!」
グレンノイグニースがパワードアックスに並びかける。
「舐めるなよ!」
パワードアックスも粘りを見せる。
「そっちこそ、イグニースの勝負根性を舐めるな!」
「⁉」
グレンノイグニースがさらにひと伸びし、ゴール直前でパワードアックスをかわず。
「いっけえええ!」
「グレンノイグニース、一着! 今年の函館2歳ステークレースはグレンノイグニースが制しました! これで破竹の6連勝です!」
「よっしゃあ!」
炎仁が派手なガッツポーズを取る。
「やったあ!」
スタンドでは環が環太郎に抱き着く。
「お、おい、はしゃぎすぎだ!」
「だって、うちの厩舎久々の重賞勝利ですよ⁉ 今はしゃがないでいつはしゃぐんですか⁉ しかし、紅蓮さん、見事な騎乗でしたね……」
「集中するマークを逆手に取って、こちらのペースで動かせてもらったな。まさか重賞初騎乗の新人がレースをかき回すとは誰も予想しなかっただろうな」
「これは本当に……ひょっとするとひょっとするかも?」
環太郎と環がファンの声援に応える炎仁とグレンノイグニースを笑顔で見つめる。
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