【第一章完】三流声優の俺、特殊スキル【演技】で異世界の英雄になってみた

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
17 / 50
第一幕

第4話(4)黄色髪の魔法剣士

しおりを挟む
「ふむ……今回はまともか……って、また『赤髪の勇者』じゃないのか……」

 俺はティッペに文句を言う。

「い、いや、今回はこの姿が相性良さそうかなと思ったっぺ……」

「相性って……これは……」

 俺は自分の背中に背負っている大きな剣に気が付く。

「気が付いたっぺか」

「そりゃあ気付くだろう……なんだ? 『黄色髪の大剣使い』か?」

「いや、今回は……」

「おらあっ!」

「む!」

 ディオンが飛び込んできた為、俺は横に飛んでかわす。地面がディオンの拳で砕ける。

「顔かたちだけでなく、姿を変えるスキルか……はっきり言って羨ましいぜ」

「ははっ、出来ることならば譲ってあげたいけど……」

「なんだ、その口調……?」

「ああ、気に障ったのなら申し訳ない」

 俺は口元を抑える。

「なんかイケメンぶりが腹立つぜ!」

「おっと!」

 ディオンが再び飛び込んできたが、俺はなんとかそれもかわす。嫉妬がむき出しになってきたな……。俺の左肩に乗ったティッペが呟く。

「さすがは『七色の美声』、若干嫌味なイケメンを演じても違和感がまったく無いっぺ……」

「俺の攻撃を二度もかわすとは……てめえ、なにもんだ?」

「僕かい? この世界の英雄になる予定の者だ……」

 何故か、俺は丁寧にセットされた髪を撫で上げながら答える。なるほど、若干嫌味だな。

「! 英雄だと⁉ はっはっは! 何を言うかと思えば……」

「君たちのような悪い転移者をこらしめてね……」

「!」

 ディオンの顔色がはっきりと変わる。必要以上に挑発してしまっていないか、俺?

「そういう物言い、決まっているっぺ」

「そうかい、ティッペ君? まあ、よく言われるよ」

 再び髪を撫で上げながら答える。こういう振る舞いがこの姿では自然なようだ。

「ぶっ潰す!」

「‼」

「うおおっ!」

「ぐっ!」

 俺は背中の大剣を抜いて、ディオンの拳を受け止める。勢いに圧されるが、転倒はせずに、後方に少し飛ばされただけで済んだ。細身だが、それなりの力は持っているようだ。

「耐えやがっただと……生意気な!」

「くっ!」

 ディオンがパンチのラッシュを浴びせてくる。俺は大剣を器用に扱い、その攻撃を受けるが、正直しのぐだけで精一杯だ。ディオンが笑う。

「ははっ! どうした、どうした! その大剣は飾りか⁉」

「ティ、ティッペ君、これは一体どういうことかな……?」

「い、いや、かつてこの世界の危機を救った伝説の『虹の英雄たち』の一人、『黄色髪の魔法剣士』を描いた絵を渡したっぺ!」

「ま、魔法剣士⁉」

「そう、大剣さばきもなかなかだったそうだっぺが、本領は魔法を織り交ぜた戦い方で発揮されたそうだっぺ!」

「そ、そういうことはもっと早く言ってもらえないかな⁉」

「言おうとしたっぺ!」

「ま、まあいい……なるほど、魔法なら物理攻撃との相性も良さそうだ……」

「はい、どうぞと使わせると思うか⁉」

「だ、だろうね!」

「うおりゃあ!」

「うぐっ!」

 ディオンの強烈な拳が俺の左肩を叩く。俺は思わず大剣を落としてしまう。

「妖怪!」

 監督が俺の左肩から飛び立ったティッペに声をかける。

「妖精だっぺ!」

「これも小耳にはさんだことだが、君らがスキルを見極めることが出来るそうだな!」

「ああ、そうだっぺ!」

「ならば、自分のスキルを見極めてくれ!」

「ええ⁉ わ、分かったっぺ!」

 ティッペが監督の目の前に向かう。監督が問う。

「どうだい?」

「う~ん……分かったっぺ! お前さんのスキルは……だっぺ!」

「ごちゃごちゃ言っているが、そう慌てるな、こいつを片付けたらてめえらの番だ!」

「!」

 ディオンが思い切り拳を振り上げる。俺は舌打ちする。

「ちっ!」

「【演出】!」

「なっ⁉」

 どこからか勇ましくも軽快な音楽が流れてくる。ディオンの動きがスローモーションのように見える。こ、これはもしかして……。監督の叫びが聞こえる。

「逆転勝利の演出だ! 勝利用BGMのオマケつきだよ!」

「な、なんだと⁉」

「不思議に力がみなぎってくる!」

 俺は落としていた大剣を拾い、振りかざす。監督のディレクションが聞こえる。

「そこで魔法を帯びた大剣での一撃だ!」

「はっ! スキルに溺れず、鍛えに鍛えてんだ! 一撃くらい耐えてみせらあ!」

 ディオンが叫ぶ。監督が呟く。

「そこに派手なエフェクトをひとつまみ……」

「うおっ⁉」

「おわっ⁉」

 俺の振るった大剣がディオンの体に当たると、大きな爆発が起こる。ディオンは堪らず倒れ込み、俺は目を疑った。監督は淡々と呟く。

「エフェクトによって魔法の威力が増せるみたいだね……」

「ケェー⁉」

 ゴブリンたちが慌てたようにディオンを運んで逃げる。追撃したかったが、天たちも気になるだけに、ここは見逃した。もっとも、疲れも蓄積していたが。俺は監督に礼を言う。

「お陰で助かりました。ありがとうございます」

「なに、恩返しだよ、気にするな」

「え? 恩返し?」

 俺は首を傾げる。監督は口を開く。

「数年前の自分は……小さくまとまっていてね」

「え……」

「そんな時、ある現場で大御所監督相手にも臆せず、自分の意見を言う声優がいたんだ……」

「あ……」

「そんな恐れ知らずの姿を見て、なんというか……自信を分け与えてもらってね、お陰で殻を破ることが出来たと思っている」

「そ、そうだったのですか……」

「だから、いつか恩返しがしたいと思っていたのだよ」

「はあ、なんか恥ずかしいな……」

「栄光くん、君は英雄になるというようなことを言っていたが……その目標、自分に演出さえてはもらえないだろうか? この世界、行く当てもない……連れていってほしい」

 監督が頭を下げてくる。

「……同じ世界の方が一緒なのは心強い、こちらこそお願いします」

 俺は監督にお辞儀を返すのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

勇者召喚の余り物ですが、メイド型アンドロイド軍団で冒険者始めます

水江タカシ
ファンタジー
28歳独身、一般事務の会社員である俺は、勇者召喚に巻き込まれて異世界へと転移した。 勇者、聖女、剣聖―― 華やかな肩書きを持つ者たちがもてはやされる中、俺に与えられたのは聞いたこともないスキルだった。 【戦術構築サポートAI】 【アンドロイド工廠】 【兵器保管庫】 【兵站生成モジュール】 【拠点構築システム】 【個体強化カスタマイズ】 王は落胆し、貴族は嘲笑い、俺は“役立たず”として王都から追放される。 だが―― この世界には存在しないはずの“機械兵器”を、俺は召喚できた。 最初に召喚したのは、クールな軍人タイプのメイド型戦闘アンドロイド。 識別番号で呼ばれる彼女に、俺は名前を与えた。 「今日からお前はレイナだ」 これは、勇者ではない男が、 メイド型アンドロイド軍団と共に冒険者として成り上がっていく物語。 屋敷を手に入れ、土地を拠点化し、戦力を増強しながら、 趣味全開で異世界を生きていく。 魔王とはいずれ戦うことになるだろう。 だが今は―― まずは冒険者登録からだ。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

処理中です...