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第1章
第9話(2)知識改良
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「イオナくん」
「あ、お声がけはしたんですが、部屋から全然出てこなくて……」
部屋のドアの前でイオナが困ったように後頭部を抑える。
「反応は?」
「それはあります」
「どんな感じだ?」
「声色的には元気そうではありますが……」
「ふむ……失礼、リュートだ」
リュートは優しく部屋のドアをノックする。部屋の中から声がする。
「あ……」
「少しお話がしたいのだが……入っても良いかな?」
「あ、はい、どうぞ……」
二つ返事で了承を得られる。
「失礼するよ」
リュートとイオナが部屋に入る。
「うおっ⁉」
イオナが驚く。その前を進む、リュートが苦笑を浮かべる。
「おお、これはこれは……」
それなりに広い部屋には、薬を調合したであろう皿や小瓶が多く、さらに何かの書類が山積している。おさげ髪の少女、ファインがその山の中から顔を覗かせる。
「あ、どうも……」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
「はい、お疲れ様です……」
ファインがリュートたちに会釈する。
「えっと、単刀直入にお尋ねするが……ジョブチェンジをお考えということかな?」
「え!」
「す、鋭いですね……」
イオナとファインが驚く。
「それは気付くさ、この薬品の山に、メンバー募集……だけじゃないな、薬局の求人広告のチラシまで見ればね……」
リュートがチラシを片手に肩をすくめる。
「ああ、そうですよね……」
ファインが苦笑する。
「なんだってまた薬師にジョブチェンジを?」
リュートが尋ねる。
「薬の知識はお陰様でありますし……都会で身を立てるにはやっぱりこれかなと……」
「こちらとしては、薬師としてもでも構わないからパーティーメンバーとして、引き続き貢献してくれればありがたいのだけれども?」
「それももちろん考えましたが……」
座ったままのファインが顔を俯かせる。リュートが代わりに話を続ける。
「自信を失ってしまったと……」
「モンスターテイマーとして貢献出来ると思っていましたが、アタシにとって自慢の高レベルのモンスターたちが、低レベルのモンスターたち相手に後れを取っていました! そういう状況を見てしまうと、ああ、アタシは所詮井の中の蛙だったのかなって……」
「……モンスター同士には相性というものが存在する」
「そ、それくらいはアタシも重々承知しています!」
ファインが顔を上げる。リュートが顔の前に両手の手のひら相手に向けて見せる。
「これは失礼、専門家にする話ではなかったね」
「その辺はしっかりと見極めて、モンスターを出したのですが、どうも……」
ファインが首を傾げる。
「……書物などで得た知識の他に、経験してみて得られる知識もある……」
「え?」
「モンスターが環境の変化に適応しきれていないんじゃないか? ホームシックとかね」
「そ、そんな馬鹿な……?」
「最新研究などではまったくあり得ない話でもないんだよ。これは書店で買ってきた本だ」
リュートが取り出した真新しい一冊の本をファインに手渡す。表紙に書かれている文字を見て、ファインは驚く。
「こ、これは、モンスター研究の権威! こ、こんな本が……」
「俺も少し読ませてもらった。専門的な話はさっぱりなんだが、なんとなく分かったことは、モンスターにも慣れ親しんだ環境から突然移ると、本領を発揮出来ないということは十分にあり得るということだ。特に田舎から都会へ移ると……」
「ア、アタシと同じように?」
「まあ、言ってしまえばね」
リュートが両手を広げる。
「ふっ……アタシの虚勢がこの子たちにも伝わったっていうこと……?」
ファインが本を置いて笑う。
「どうかな? 薬師としてのレベルアップも実にありがたいが、モンスターテイマーとしての道も諦めて欲しくはないのだが?」
「……このままでは終わりません。モンスターたちの適応度を高めていきます」
「結構……」
ファインの力強い言葉に、リュートが頷く。
「キャハハハ!」
ホテル内のカフェから楽しげな笑い声が聞こえてくる。リュートが歩み寄る。
「失礼……お疲れ様」
「あ、お疲れ様です……」
「おっつ~」
「お疲れさん……」
ユキとカグラとマイがリュートにそれぞれ言葉を返す。
「意外だったな……」
「え?」
ユキが首を傾げる。
「実質初めての戦闘にパニックになったり、自分たちの不甲斐なさに落ち込んだりしているものだと思ったが……」
「いや~それはそれ、これはこれだって~」
「腹が減ってはなんとやらって言うしな……」
「お、マイ、頭良さげな発言じゃん。まあ、せっかくだから異世界のこれを堪能しないと!」
カグラがテーブルの上に置かれた高級スイーツを指し示す。リュートが感心する。
「食欲があるのは良いことだ」
「し、しかし……」
「ん?」
リュートがユキに視線を向ける。
「このままではいけないということはもちろん分かっているつもりです。どうすれば?」
「ふむ、まずは……」
「まずは?」
ユキたち三人がリュートに視線を向ける。リュートが口を開く。
「常識を疑え」
「!」
「意識を変えろ」
「‼」
「見識を広げろ」
「⁉」
「その上で、知識を深めろ……簡単なことではないが、例えば、ベルガ先生……ベルガさんやファインさんに相談してみると良い。最初から肩肘張った話をする必要はない。もっと気軽に異文化間のコミュニケーションを楽しむ感じでな……」
「分かったぜ、その前にこのスイーツをやっつける……」
「あ、ああ、あくまでもスイーツが優先か、それもまあ君たちらしくて良いさ……」
マイの返答にリュートが苦笑を浮かべる。
「あ、お声がけはしたんですが、部屋から全然出てこなくて……」
部屋のドアの前でイオナが困ったように後頭部を抑える。
「反応は?」
「それはあります」
「どんな感じだ?」
「声色的には元気そうではありますが……」
「ふむ……失礼、リュートだ」
リュートは優しく部屋のドアをノックする。部屋の中から声がする。
「あ……」
「少しお話がしたいのだが……入っても良いかな?」
「あ、はい、どうぞ……」
二つ返事で了承を得られる。
「失礼するよ」
リュートとイオナが部屋に入る。
「うおっ⁉」
イオナが驚く。その前を進む、リュートが苦笑を浮かべる。
「おお、これはこれは……」
それなりに広い部屋には、薬を調合したであろう皿や小瓶が多く、さらに何かの書類が山積している。おさげ髪の少女、ファインがその山の中から顔を覗かせる。
「あ、どうも……」
「お疲れ様」
「お疲れ様です」
「はい、お疲れ様です……」
ファインがリュートたちに会釈する。
「えっと、単刀直入にお尋ねするが……ジョブチェンジをお考えということかな?」
「え!」
「す、鋭いですね……」
イオナとファインが驚く。
「それは気付くさ、この薬品の山に、メンバー募集……だけじゃないな、薬局の求人広告のチラシまで見ればね……」
リュートがチラシを片手に肩をすくめる。
「ああ、そうですよね……」
ファインが苦笑する。
「なんだってまた薬師にジョブチェンジを?」
リュートが尋ねる。
「薬の知識はお陰様でありますし……都会で身を立てるにはやっぱりこれかなと……」
「こちらとしては、薬師としてもでも構わないからパーティーメンバーとして、引き続き貢献してくれればありがたいのだけれども?」
「それももちろん考えましたが……」
座ったままのファインが顔を俯かせる。リュートが代わりに話を続ける。
「自信を失ってしまったと……」
「モンスターテイマーとして貢献出来ると思っていましたが、アタシにとって自慢の高レベルのモンスターたちが、低レベルのモンスターたち相手に後れを取っていました! そういう状況を見てしまうと、ああ、アタシは所詮井の中の蛙だったのかなって……」
「……モンスター同士には相性というものが存在する」
「そ、それくらいはアタシも重々承知しています!」
ファインが顔を上げる。リュートが顔の前に両手の手のひら相手に向けて見せる。
「これは失礼、専門家にする話ではなかったね」
「その辺はしっかりと見極めて、モンスターを出したのですが、どうも……」
ファインが首を傾げる。
「……書物などで得た知識の他に、経験してみて得られる知識もある……」
「え?」
「モンスターが環境の変化に適応しきれていないんじゃないか? ホームシックとかね」
「そ、そんな馬鹿な……?」
「最新研究などではまったくあり得ない話でもないんだよ。これは書店で買ってきた本だ」
リュートが取り出した真新しい一冊の本をファインに手渡す。表紙に書かれている文字を見て、ファインは驚く。
「こ、これは、モンスター研究の権威! こ、こんな本が……」
「俺も少し読ませてもらった。専門的な話はさっぱりなんだが、なんとなく分かったことは、モンスターにも慣れ親しんだ環境から突然移ると、本領を発揮出来ないということは十分にあり得るということだ。特に田舎から都会へ移ると……」
「ア、アタシと同じように?」
「まあ、言ってしまえばね」
リュートが両手を広げる。
「ふっ……アタシの虚勢がこの子たちにも伝わったっていうこと……?」
ファインが本を置いて笑う。
「どうかな? 薬師としてのレベルアップも実にありがたいが、モンスターテイマーとしての道も諦めて欲しくはないのだが?」
「……このままでは終わりません。モンスターたちの適応度を高めていきます」
「結構……」
ファインの力強い言葉に、リュートが頷く。
「キャハハハ!」
ホテル内のカフェから楽しげな笑い声が聞こえてくる。リュートが歩み寄る。
「失礼……お疲れ様」
「あ、お疲れ様です……」
「おっつ~」
「お疲れさん……」
ユキとカグラとマイがリュートにそれぞれ言葉を返す。
「意外だったな……」
「え?」
ユキが首を傾げる。
「実質初めての戦闘にパニックになったり、自分たちの不甲斐なさに落ち込んだりしているものだと思ったが……」
「いや~それはそれ、これはこれだって~」
「腹が減ってはなんとやらって言うしな……」
「お、マイ、頭良さげな発言じゃん。まあ、せっかくだから異世界のこれを堪能しないと!」
カグラがテーブルの上に置かれた高級スイーツを指し示す。リュートが感心する。
「食欲があるのは良いことだ」
「し、しかし……」
「ん?」
リュートがユキに視線を向ける。
「このままではいけないということはもちろん分かっているつもりです。どうすれば?」
「ふむ、まずは……」
「まずは?」
ユキたち三人がリュートに視線を向ける。リュートが口を開く。
「常識を疑え」
「!」
「意識を変えろ」
「‼」
「見識を広げろ」
「⁉」
「その上で、知識を深めろ……簡単なことではないが、例えば、ベルガ先生……ベルガさんやファインさんに相談してみると良い。最初から肩肘張った話をする必要はない。もっと気軽に異文化間のコミュニケーションを楽しむ感じでな……」
「分かったぜ、その前にこのスイーツをやっつける……」
「あ、ああ、あくまでもスイーツが優先か、それもまあ君たちらしくて良いさ……」
マイの返答にリュートが苦笑を浮かべる。
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