【第1章完】異世界スカウトマン~お望みのパーティーメンバー見つけます~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
37 / 50
第1章

第9話(4)見識改新

しおりを挟む
「あ、こちらです。リュートさん」

 イオナが声をかける。

「そこは……」

 リュートが歩み寄って、首を捻る。

「物置代わりの部屋だそうです。ただしかなり古くて狭いので、ホテルの方もほとんど使っていないみたいです」

「部屋を二つ使いたいという話だったが、こちらにいるのかい?」

「ええ、滞在中はほとんどこもりっきりです……」

「すみません、リュートです。お話をしたいのですが……」

 リュートがドアをノックする。

「……どうぞ」

「失礼……!」

「おおっ……」

 部屋に入ったリュートとイオナが揃って驚く。部屋中にびっしりと武具類が置いてあったからである。武器の手入れをしながらクイナが顔をリュートたちに向ける。

「お疲れ様です」

「ええ、お疲れ様です……」

「武器の手入れとは精が出ますね」

「それが仕事ですから……」

「ふむ、お若いのに感心、感心……と、言いたいところですが……」

「はい?」

「貴女はもう少し見識を広げた方が良い」

「見識を広げる?」

「そうです、例えば、街に出てみるとか……」

「……さほど興味がありません」

「何も無理に遊べと言っているわけではありません。散歩するだけでも大分違いますよ?」

「散歩するだけで?」

「ええ、街中で戦闘になった場合、適している武器は何かとか……」

「……道幅が狭かったりするので、大きな武器は不向きですね……」

「そうです。例えば、モンスターが襲撃してきた、若い男たちは皆出払っている……」

「非力な女性や子供、ご老人でも扱えるような軽量の武器などが望ましい……」

「そうです、そういうことです……」

「ふむ、そう考えてみると、新たな発見がありそうですね。良いアイディアも浮かんできそうだ……一段落したら、ちょっと後で近所を散歩してみます」

「是非……」

 リュートは笑顔で頷く。

「あ、リュートさん……」

「いたか」

「ええ」

 イオナが歩み寄ってきたリュートに応え、ある場所を指し示す。

「レストランか、入るぞ……」

 ホテル内のレストランにリュートとイオナが入る。

「……」

「やあ、オッカちゃん」

 リュートが手を挙げる。

「………」

 オッカが無言で会釈する。もぐもぐと口が動く。

「はは、随分と食が進んでいるようだね。ちょっと失礼するよ……」

 リュートとイオナがオッカと同じテーブル席に腰かける。

「…………」

「美味しいかい?」

「……今まで食べたことないくらい美味しい」

「それはなによりだ。育ち盛りだからな、どんどん食べな」

「うん……」

「い、良いんですか?」

 イオナが小声で尋ねる。リュートは笑う。

「……お代は勇者さま持ちだからな、心配ないさ……さて、オッカちゃん、食べたながらで良いから話を聞いて欲しい」

「……………」

「竜人族である君の成長スピードは普通の人間より早い。君はあっという間に大人になる。なにが言いたいかというと、ただ食べるだけで子供の時期を終えて欲しくないんだ」

「……どういうこと?」

「もっと色んなことを見て聞いて、触れてみて欲しい。そうすることによって、君の竜人としての人生はより豊かなものになる」

「豊か?」

「お腹だけでなく、心も一杯になるってことさ。まあ、多少は余裕を持たせた方が良いけど」

 リュートが自らの左胸に手を添える。

「……それで、皆のことを助けられるの?」

「……ああ」

「分かった。やってみる」

「良い子だ」

 素直に頷くオッカを見て、リュートが笑顔を浮かべる。

「ふむ……」

 夜、ホテルの廊下をリュートと並んで歩くベルガが顎に手を当てて頷く。

「ベルガさんが一緒にご提案して下さって助かりました」

「ターンオーバー……メンバーのローテーションですね。あまり考えたことがありませんでしたが、これくらいの規模のパーティーなら有効に作用するかもしれません」

「実際の戦闘でのその辺りの采配は、ベルガさん、レプさん、もしくはファインさんあたりで取ってもらうと良いのかなと考えています」

「そうですね……今日は遅いですから、明日の朝食時にでも相談してみます……あら?」

「どうしました?」

「あれ……」

 リュートがベルガの指差した先を見ると中庭を覗くメンバーたちの姿があった。

「なんだ?」

 リュートたちが歩み寄る。ベルガが声をかける。

「皆さん、夜も遅いです。もうお休みに……」

「しっー!」

 カグラが人差し指を口に付けて声を上げる。マイが呆れる。

「その声がデケえよ……」

「お二人とも、あれを見てください……」

 ユキが中庭を指し示す。リュートたちが視線を移す。

「はあ……はあ……はあ!」

 そこには一心不乱に剣を振るシャルの姿があった。

「いや~物事に懸命に打ち込む若者の姿は絵になるね~」

「酒の肴になるの間違いでしょう……」

 まだ酒を飲んでいるルパにレプは苦笑する。

「なかなか筋が良いですね……」

「ええ、そしてあの剣、大事に大切に使っているのがよく分かります……」

 感心するアーヴの隣でクイナが深々と頷く。

「ふう、疲れたな。今日はこの辺で……いや、まだだ! ……よし、まだ出来る!」

「今、回復魔法を使った! 魔法の心得もあったのか……」

「すごい……」

 驚くファインの横で、オッカが呟く。

「……皆さん、パーティーを支えて下さっているシャルさんの為にも、明日から心を新たに頑張っていきましょう……!」

 ベルガの言葉に皆が黙って頷く。

「これは……その線もありかな?」

 リュートが腕を組んで、悪そうな笑顔で頷く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

処理中です...