【第1章完】異世界スカウトマン~お望みのパーティーメンバー見つけます~

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
47 / 50
第1章

第12話(2)戦闘の前夜

しおりを挟む
「君たち三人はやはり一緒にいたか……」

 リュートが、カフェラウンジで一緒の席に座っている、ユキ、カグラ、マイの三人に声をかけて近寄る。ユキが呟く。

「あ、リュートさん……」

「こちらの空いている席に座ってもいいかな?」

「ええ、どうぞ」

 リュートが腰をかけ、茶を注文する。しばらくして茶が届く。

「……」

「………」

「女の子が三人集まっているのにずいぶんと静かだね……?」

「それは……三人とも不安で……」

 リュートの問いにユキが反応する。

「不安……ということは?」

「帝王さんが軍勢を率いて攻めてくるんですよね?」

「聞いていたか……」

「はい、先ほど勇者さまがわめいていらっしゃったので……」

「ちっ、いたずらに不安を伝播させてどうする……」

 リュートが舌打ち交じりに呟く。

「……マズいんじゃねえか?」

「っていうよりヤバい?」

 マイとカグラがリュートに視線を向ける。

「…………」

 リュートが茶を飲む。それを見てマイが苛立つ。

「優雅に茶を飲んでいる場合かよ……!」

「……四天王との戦いを思い出してみたまえ」

「え……?」

「君らはそれぞれ他のパーティーメンバーとも連携を取って、相手を撃退していた。この短期間で凄まじい成長ぶりだ。元々の素質もある……帝王の軍勢を警戒することは大事だが、必要以上に恐れることはない……」

「そ、そうですか……?」

「ああ、そうだよ、ユキさん。異世界からきた君たちにはあれがあるしね」

「あれ?」

「伸び代だ……若さに加えて、この世界に適応を深めた分のね」

「そ、そうか! じゃあ、ウチら超ヤバいじゃん! 最強じゃん! イケるよ、二人とも!」

「あ、ああ……ヤバいってどちらの意味でも使うんだっけな……分かりづらい……」

 笑顔を浮かべるカグラとそれにつられて笑うユキとマイを見て、リュートは苦笑する。

「……………」

「ああ、こちらにいましたか、ファインさん」

 リュートは中庭のベンチで本を読むファインに声をかける。

「誰かと思えばリュートさんですか……」

「となりに座ってもいいかな?」

「どうぞ……」

「失礼……」

「……………」

「夢中になって何を読んでいるんだい?」

「別に夢中というわけじゃないですけれど……」

 ファインがリュートに本を渡す。リュートが本をパラパラとめくる。

「……モンスターの使役に関する本か……専門用語だらけで難しいな」

「専門用語と分かるだけでも大したものです……」

「ははっ、そういう考え方もあるか……」

「ふふっ……」

 リュートが笑うと、ファインも微笑を浮かべる。リュートが本を返す。

「しかし、今さらモンスターの使役について知識を深める必要があるのかい? そりゃあ、人生というものはある意味、日々勉強だけれども」

「何かしていないと不安で……」

 本を受け取ったファインが俯く。

「そういや、この中庭で勇者さまが……」

「そう、帝王率いる軍勢が攻めてくると騒いでいて……面倒そうだから隠れて顔を合わせないようにしていたんですけど……」

「……植物にも詳しいよね?」

 リュートがベンチから立って、中庭に生えている草花に近づく。ファインが応える。

「ま、まあ、それなりには……」

「不安を解消する草とかはないかな?」

「せ、煎じて飲めば、不安を和らげるものはありますが、さすがに解消とまでは……」

「ならば想像力で補うしかないか……」

「想像力?」

「例えば、南に下ると、この街より少し規模は小さいが、リゾート地として名高い街がある。綺麗な海、青い空に白い砂浜、ひょっとしたら素敵な出会いが待っているかもね……」

「!」

「不安よりも希望を抱いた方が良いんじゃないか?」

「……山育ちだから海には憧れていました……是非とも行かなくてなりませんね……!」

 ファインが深く頷く。

「ふん! ふん!」

「毎度の如く、精が出るね……」

「あ、お疲れ様です……」

 ホテルの広い中庭には、模造剣を素振りするアーヴもいた。

「もうそろそろ休んだ方が良いんじゃないか?」

「か、体を動かしていないと不安で……」

 アーヴが汗を拭いながら答える。

「君も勇者さまが騒いでいるのを聞いたのかい?」

「え、ええ……先ほど、この中庭で騒いでいらっしゃるのが聞こえて……」

「なんて言っていた?」

「ほとんど悲鳴に近かったので、詳しい内容までは……」

 アーヴが首を傾げる。

「そうか……」

「帝王が自ら率いる軍勢がこの街に攻めてくるのですよね?」

「そのようだね……」

「強力な軍勢でしょうね……」

「帝王直属な訳だからね。それはまあ、強力だと思うよ」

「ふむ……やはり、もう少し……」

「お、おい……」

「ふん! ふん! ふん!」

 アーヴが剣の素振りを再開させる。リュートが後頭部を抑えて苦笑する。

「不安というか、テンションが上がっているんだな……さて……」

「! あ……」

 リュートが立てかけてあったもう一振りの模造剣を手に取って、アーヴの前に立つ。

「どれ、少し相手をさせてもらおうか……」

「し、しかし……」

「その方がイメージしやすいだろう? ……来ないならこちらから行くぞ!」

「‼」

 アーヴは驚く。以前手合わせした時よりも、リュートの構えはまともなものになっており、より鋭い攻撃を繰り出してきたからである。リュートが声を上げる。

「もらった!」

「くっ‼」

 アーヴがリュートの剣を弾き飛ばす。リュートが自らの側頭部を人差し指で叩いて呟く。

「……それで良い。心はホットに、頭はクールにだ……」

「れ、冷静になることが出来ました。ありがとうございました!」

 アーヴがリュートに向かって頭を下げる。

「ふう……」

 ラウンジでお茶を飲んだベルガがひと息つく。

「部屋にいらっしゃらないと思ったら、こちらにいらっしゃったのですか……」

 リュートが後方からベルガに声をかける。ベルガは視線を向けて頷く。

「あ、はい……少し眠れなくて……」

「それは……帝王軍の行軍図ですか?」

 リュートがテーブルの上に広げられた紙を見て、わずかに驚く。

「ええ、少しでも対策を練っておこうかと思いまして……」

「失礼……これを一体どこから?」

 ベルガの対面に座ったリュートが問う。ベルガが答える。

「イオナさんから頂きました。防衛部隊の斥候がついさっき確認してきたものだそうです。正直どこまで正確なものかは疑問符が付きますが、多少は参考にはなります」

「ほう……イオナくんもどうしてなかなか気が利くじゃないか……」

 リュートが感心する。ベルガが図を眺めながら、わずかに首を捻る。

「欲を言えば、もう少し戦力の内訳が分かれば良いのですが……そうすればどのような陣を敷いてくるのかも、ある程度の予想がつくのですけれど……」

「そうおっしゃると思って……」

 リュートが別の紙をテーブルの上にスッと差し出す。それを見たベルガが驚く。

「こ、これは……⁉ 帝王軍の内部資料ではないですか⁉ どこでこれを……⁉」

「あまり大きな声では言えませんが、色々とつてがありまして……」

 リュートが小声で答える。資料を見つめながらベルガが呟く。

「つてが無ければ、まず入手は困難でしょうね……」

「へえ、怒ったりはしないんですね」

「お仕事柄、コネクションなどはそこかしこにあるものでしょう?」

「ご理解頂けて嬉しく思います」

 リュートが両手を広げる。ベルガが資料に目を通す。

「これなら布陣を予想することが出来ます……」

「水を差すようですが……完璧な予想というのは難しいのでは?」

「心構えは出来ます。それと逆算します」

「逆算ですか?」

「ええ、こういう陣形はこちら……我々も予想だにしないだろうななどと……試験問題を作成するようなものですかね?」

「ふふっ、元教師の方らしいお考えですね……」

「……心構えが出来たら、だんだんと安心してきました。そろそろ休みます」

「それはなによりです。では、失礼……」

 リュートが席を立つ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...