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第1章
第8話(2)思いつき
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「特別トレーニング?」
四季が姫乃に尋ねる。
「ああ。どういうわけか、他の連中が手出しをしてこない今が好機だと思ってな」
「どういったことをなさるおつもりですか?」
「今後対するであろう相手は1人で当たるのは厳しいと考えている。基本的にはバディを組んで行動するのがベストだろう」
「その組み合わせを見出すと?」
「そういうことだ」
「どうやってですか?」
「各々の相性はやってみないと分からんからな。片っ端から組んでみるとしよう」
「出たとこ勝負ですね……まあ、他に方法はありませんか」
「善は急げだ、全員移動するぞ」
姫乃が声をかけ、合魂部のメンバーが近くの広場に移動する。亜門が首を捻る。
「移動したが……部室棟の裏側?」
「ちょっと待っていろ……!」
「⁉」
亜門たちが驚いて周囲を見回す。薄紫色の広大な空間が広がったからである。
「バトルフィールドを展開した。ここで特別トレーニングを行う」
「超慈、お前が部長と特別トレーニングを行っていたのは……」
「ああ、部長が作り出したこの空間内だ」
亜門の言葉に超慈が答える。
「バトルフィールドってここで展開していたのかよ……」
「全然気が付かなかったし……」
仁と瑠衣が唖然とする。超慈が補足する。
「もっとも、ここまで広いのは俺も初めてだけどな」
「10人が同時に活動するんだ、それなりの広さは欲しい」
姫乃が腕を組んで笑う。四季が問う。
「では……どうしますか?」
「うむ、とりあえず、一年と二年で手合わせさせてみるか」
「1人ずつですね?」
「いや、気が変わった。4対4の紅白戦なんか面白いんじゃないか?」
「え?」
「一年の監督は私がやる。二年の監督は四季、貴様が執れ」
「また思いつきを……」
「時間の節約になって良いだろう? 一年、こっちに来い」
姫乃は超慈たちを呼び寄せる。
「はあ……じゃあ、二年生はこちらに集まって下さい」
四季はため息交じりに二年生を集める。
「……というわけで紅白戦をやるぞ!」
「本当に思いつきですね……」
姫乃の言葉に亜門が呆れ気味の視線を向ける。姫乃は構わず話を続ける。
「相手を全員倒したら貴様らの勝ちだ。ただ……」
「ただ?」
超慈が首を傾げる。
「実力も経験も向こうが一枚上手だ。ここは胸を借りるつもりで……」
「聞き捨てなりませんね」
「やる前から負けることを考える馬鹿はいませんよ」
姫乃の言葉に亜門と超慈が反発する。
「……右に同じだし」
「いや、俺は何もしゃべっていないぞ、鬼龍……」
瑠衣の右側に立つ仁が呆れる。姫乃が笑う。
「ふっ……」
「何がおかしいんですか?」
「いや、その負けず嫌い、大変結構だ。よし、ならば勝つ為に作戦会議といくぞ」
「作戦会議……」
超慈が目を細めて姫乃を見つめる。
「……何でもいいから相手を上回れ」
「や、やっぱり!」
「作戦会議とは⁉」
「予想通り過ぎるでござる!」
姫乃の言葉に超慈たち3人がズッコケる。亜門が呆れながら呟く。
「……そんなものは作戦とは言いません」
「冗談だ」
「真剣にやって頂きたい」
「悪かった……真面目に話すと、まず、向こうは四季が出てこないということは不可思議な現象が起こるということはあまり気にしなくて済むということだ」
「それは確かに……」
瑠衣が深々と頷く。姫乃が話を続ける。
「よって最も警戒すべきなのは……爛漫の魂波凄だと思うがどうか?」
「あのなにもない所に円を描いて、そこから人を飛び出させるのは厄介ですね」
「それもなかなかの不可思議な現象だな……」
仁の言葉に超慈は戸惑う。亜門が口を開く。
「とはいえ、本人もおっしゃっていたように精度はまだまだ不十分でしょう。魂力もそれなりに使いそうですから、連続した使用は難しいはずです」
「それについては同感だ。あとは……燦太郎の素早い動きに惑わされないことだな。ステラに関しては糸と玉の使い分けに警戒だな。そうなるとやはりあの中では……」
「クリス先輩の怪しげな動きに要注意ですね」
「怪しげって。現代舞踊と言ってやれ」
超慈の言葉に姫乃は苦笑する。超慈が首を傾げる。
「現代舞踊ですか……なかなか難しいですね」
「とにかく、クリスを最優先で潰せ」
姫乃が断言する。
「……さて、こちらの作戦ですが……」
四季が眼鏡を触りながら話を始める。燦太郎が声を上げる。
「一年坊相手に作戦なんているか? 俺が速攻で突っ込んで終わりだろう?」
「サンタ、ちょっと黙ってな」
クリスティーナが睨みを聞かせる。ステラが口を開く。
「四季、構わずに続けて」
「……4人ともそれなり、いや、それ以上の戦闘センスをお持ちですが……惜しむらくは4人揃って、近距離用の魂道具だということです。多少の例外はありますが……」
「距離を取って戦えば問題ないってことね?」
「ええ、はっきり言ってヌルゲーです」
ステラの問いに四季は頷く。クリスティーナが腕を組む。
「舐めてかかるのは危険だと思うけどね」
「それはそうですね。特に鬼龍さんの身体能力をもってすれば、多少の距離はあっという間に詰められてしまうでしょう……そこで燦太郎君」
「お、おう」
「彼女の相手は貴方に任せます」
「くのいちギャルが相手か。へへっ、燃えてきたぜ」
燦太郎は不敵な笑みを浮かべる。ステラが重ねて問う。
「後の3人はどうする?」
「とにかく距離を詰めたいのは間違いないはずです……」
「爛漫っちはどうよ?」
「爛漫っちって。ステラちゃんにそう呼ばれるのもなんだか久しぶりだね。それはともかくとして……大体、四季ちゃんと同意見だよ。それを逆手に取れば良い。例えば……」
「なるほど……それは面白そうですね」
爛漫の説明に四季が頷く。やや時間を置いて、姫乃が声を上げる。
「それでは紅白戦を始める!」
四季が姫乃に尋ねる。
「ああ。どういうわけか、他の連中が手出しをしてこない今が好機だと思ってな」
「どういったことをなさるおつもりですか?」
「今後対するであろう相手は1人で当たるのは厳しいと考えている。基本的にはバディを組んで行動するのがベストだろう」
「その組み合わせを見出すと?」
「そういうことだ」
「どうやってですか?」
「各々の相性はやってみないと分からんからな。片っ端から組んでみるとしよう」
「出たとこ勝負ですね……まあ、他に方法はありませんか」
「善は急げだ、全員移動するぞ」
姫乃が声をかけ、合魂部のメンバーが近くの広場に移動する。亜門が首を捻る。
「移動したが……部室棟の裏側?」
「ちょっと待っていろ……!」
「⁉」
亜門たちが驚いて周囲を見回す。薄紫色の広大な空間が広がったからである。
「バトルフィールドを展開した。ここで特別トレーニングを行う」
「超慈、お前が部長と特別トレーニングを行っていたのは……」
「ああ、部長が作り出したこの空間内だ」
亜門の言葉に超慈が答える。
「バトルフィールドってここで展開していたのかよ……」
「全然気が付かなかったし……」
仁と瑠衣が唖然とする。超慈が補足する。
「もっとも、ここまで広いのは俺も初めてだけどな」
「10人が同時に活動するんだ、それなりの広さは欲しい」
姫乃が腕を組んで笑う。四季が問う。
「では……どうしますか?」
「うむ、とりあえず、一年と二年で手合わせさせてみるか」
「1人ずつですね?」
「いや、気が変わった。4対4の紅白戦なんか面白いんじゃないか?」
「え?」
「一年の監督は私がやる。二年の監督は四季、貴様が執れ」
「また思いつきを……」
「時間の節約になって良いだろう? 一年、こっちに来い」
姫乃は超慈たちを呼び寄せる。
「はあ……じゃあ、二年生はこちらに集まって下さい」
四季はため息交じりに二年生を集める。
「……というわけで紅白戦をやるぞ!」
「本当に思いつきですね……」
姫乃の言葉に亜門が呆れ気味の視線を向ける。姫乃は構わず話を続ける。
「相手を全員倒したら貴様らの勝ちだ。ただ……」
「ただ?」
超慈が首を傾げる。
「実力も経験も向こうが一枚上手だ。ここは胸を借りるつもりで……」
「聞き捨てなりませんね」
「やる前から負けることを考える馬鹿はいませんよ」
姫乃の言葉に亜門と超慈が反発する。
「……右に同じだし」
「いや、俺は何もしゃべっていないぞ、鬼龍……」
瑠衣の右側に立つ仁が呆れる。姫乃が笑う。
「ふっ……」
「何がおかしいんですか?」
「いや、その負けず嫌い、大変結構だ。よし、ならば勝つ為に作戦会議といくぞ」
「作戦会議……」
超慈が目を細めて姫乃を見つめる。
「……何でもいいから相手を上回れ」
「や、やっぱり!」
「作戦会議とは⁉」
「予想通り過ぎるでござる!」
姫乃の言葉に超慈たち3人がズッコケる。亜門が呆れながら呟く。
「……そんなものは作戦とは言いません」
「冗談だ」
「真剣にやって頂きたい」
「悪かった……真面目に話すと、まず、向こうは四季が出てこないということは不可思議な現象が起こるということはあまり気にしなくて済むということだ」
「それは確かに……」
瑠衣が深々と頷く。姫乃が話を続ける。
「よって最も警戒すべきなのは……爛漫の魂波凄だと思うがどうか?」
「あのなにもない所に円を描いて、そこから人を飛び出させるのは厄介ですね」
「それもなかなかの不可思議な現象だな……」
仁の言葉に超慈は戸惑う。亜門が口を開く。
「とはいえ、本人もおっしゃっていたように精度はまだまだ不十分でしょう。魂力もそれなりに使いそうですから、連続した使用は難しいはずです」
「それについては同感だ。あとは……燦太郎の素早い動きに惑わされないことだな。ステラに関しては糸と玉の使い分けに警戒だな。そうなるとやはりあの中では……」
「クリス先輩の怪しげな動きに要注意ですね」
「怪しげって。現代舞踊と言ってやれ」
超慈の言葉に姫乃は苦笑する。超慈が首を傾げる。
「現代舞踊ですか……なかなか難しいですね」
「とにかく、クリスを最優先で潰せ」
姫乃が断言する。
「……さて、こちらの作戦ですが……」
四季が眼鏡を触りながら話を始める。燦太郎が声を上げる。
「一年坊相手に作戦なんているか? 俺が速攻で突っ込んで終わりだろう?」
「サンタ、ちょっと黙ってな」
クリスティーナが睨みを聞かせる。ステラが口を開く。
「四季、構わずに続けて」
「……4人ともそれなり、いや、それ以上の戦闘センスをお持ちですが……惜しむらくは4人揃って、近距離用の魂道具だということです。多少の例外はありますが……」
「距離を取って戦えば問題ないってことね?」
「ええ、はっきり言ってヌルゲーです」
ステラの問いに四季は頷く。クリスティーナが腕を組む。
「舐めてかかるのは危険だと思うけどね」
「それはそうですね。特に鬼龍さんの身体能力をもってすれば、多少の距離はあっという間に詰められてしまうでしょう……そこで燦太郎君」
「お、おう」
「彼女の相手は貴方に任せます」
「くのいちギャルが相手か。へへっ、燃えてきたぜ」
燦太郎は不敵な笑みを浮かべる。ステラが重ねて問う。
「後の3人はどうする?」
「とにかく距離を詰めたいのは間違いないはずです……」
「爛漫っちはどうよ?」
「爛漫っちって。ステラちゃんにそう呼ばれるのもなんだか久しぶりだね。それはともかくとして……大体、四季ちゃんと同意見だよ。それを逆手に取れば良い。例えば……」
「なるほど……それは面白そうですね」
爛漫の説明に四季が頷く。やや時間を置いて、姫乃が声を上げる。
「それでは紅白戦を始める!」
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