合魂‼

阿弥陀乃トンマージ

文字の大きさ
34 / 51
第1章

第9話(1)覇道に挑む

しおりを挟む
                  9

「ぐっ……」

 姫乃が崩れ落ちる。織田桐が軽く頭を抑える。

「へっ、以前戦ったときほど魂力も魂破も戻ってきてねえじゃねえか。よくそれで俺様に挑んでこようと思ったな……」

「むうう……」

 姫乃はなんとか立ち上がろうとする。織田桐が声をかける。

「……灰冠、生徒会に来ねえか? お前が来てくれるなら心強いぜ」

「……断る!」

「そうか、上を目指すために必要な人材だと思ったんだが……そこまで反抗的な態度を取られちゃしょうがねえな……この辺で消えろ!」

「!」

 織田桐の繰り出した攻撃を姫乃はふらふらの状態ながらなんとかかわす。織田桐は驚く。

「その状態でかわすとは、全くしぶとい女だな」

「……」

「おいおい、もう意識がほとんど無えんじゃねえか?」

 そんな2人のやりとりを見ながら、超慈は呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。織田桐の放つ圧倒的な魂破に圧され、動くこともままならなかったのである。その代わりに思考能力は働いていた。

(部長が手も足も出ないなんて……織田桐の魂道具……出所が速くて、目で追えない……これがこの高校トップレベルの『合魂』!)

「そろそろマジで終いにするぜ……」

(! な、なんとかしないと! 出来るのは俺だけだ! で、でも、情けないことに体が震えてまともに動かねえ! あのマント男の魂力にビビっちまっているんだ……! だ、だけど、どうにかしねえと! くそ! 動け! 俺の手と足と体!)

「灰冠もここでお持ち還りか……ちょっと勿体ない気もするな~」

「会長……」

「うおっ⁉ な、なんだよ鈴蘭。いきなり脇から顔を出すな。きれいな顔でもビビるぜ」

「きれいな顔……」

 小森は織田桐の言葉に両頬をポッと赤くする。

「そういうことではないでしょう、しっかりなさって下さい小森殿……会長」

 代わりに海藤が織田桐に話しかける。

「まさか、生徒会にこれ以上お邪魔虫……もとい、会員を増やすおつもりですか?」

「こんなマンモス高だ、会員が多いに越したことはないだろう」

「お声をかけるお相手は女子生徒がほとんどのような気がするのですが」

「き、気のせいだろう」

「いいえ、気のせいではありません!」

 織田桐の言葉に海藤は首を激しく左右に振って否定する。

「そ、そうか……?」

「そうなのです!」

「副会長は少し気にし過ぎですわ」

 駒井が口を開く。織田桐はうんうんと頷く。

「そ、そうだ。胡蝶は少し神経質になり過ぎだ。俺まで頭が少し痛くなってきやがった……」

「会長の学校での活動サポートは鈴蘭ちゃんが、プライベートでのサポートはこの喜が、それぞれ万全に行っておりますし、これ以上の会員を増やす必要はないという点は同意です」

「……プライベートのサポートはわたくしも行っておりますが?」

「ああ、一応ね。最優先のお相手はこの喜ですから」

「一応……? 最優先……?」

 海藤の美しい顔がみるみるうちに曇っていく。織田桐は露骨に慌てる。

「あああ! その、あれだ、皆色々と都合があるからな! そう、それぞれのスケジュールが合わないことがあるのは仕方がない!」

「鈴蘭に関してはスケジュールの合間を縫って、色々と素晴らしいご指導ご鞭撻を頂けるのはありがたい限りです……」

 小森が赤らんだままの両頬を両手でそっと抑える。織田桐が声を上げる。

「す、す、鈴蘭! 余計なことは言わんで良い!」

「ふ~ん? どうやら鈴蘭ちゃんの方が副会長より優先度が高いみたいですよ?」

「よ、喜! 変に胡蝶を煽るのは止めろ!」

「会長……」

 海藤が恐ろしく低い声で織田桐に話しかける。

「ええっと、その点に関しては戻ってから話し合うとしよう! うん、それが良い! 帰ったら一風呂浴びたくなってきたな~」

「バスタイムデハ、カイチョウ、コンヤモカワイガッテクレルノカ?」

「エ、エウジーニョ⁉ き、貴様、何を言い出すんだ⁉」

「これはまた……会長、手当たり次第ですね~」

 駒井が冷ややかな視線を織田桐に向ける。織田桐が両手で頭を抱える。

「いやいや! それは違う! なにかの間違いだ! ふざけんな!」

「……詞だ!」

「うん?」

「こっちの台詞だ! ふざけんなよ!」

 怒りに燃える超慈が魂択刀を構え、織田桐たちの前に飛び出す。

「あ、お前、いたのか……何をそんなに怒っているんだ?」

「綺麗なお姉さん2人に飽き足らず、美少年を侍らせ、さらにはガチムチエンジョイバスタイムだと⁉ 覇道だかなんだか知らないが、人の道を外れるのもいい加減にしろ!」

「……もの凄い魂力の高まりを感じます」

 小森が冷静に分析する。織田桐が頷く。

「ああ、魂破もビンビン感じるぜ……ただの雑兵かと思ったが、こいつは意外な伏兵か?」

「自分が相手しましょう」

「いや、下がってろ、鈴蘭……こういう奴との魂破のぶつかり合いが合魂の醍醐味だぜ」

「大丈夫ですか?」

「俺様を誰だと思っている?」

「……失礼しました」

 小森たちが織田桐から離れる。織田桐が高らかに笑う。

「ここまでの魂力は最近、お目にかかってないぜ! お前、楽しませてくれそうだな!」

「余裕ぶってんじゃねえ!」

 超慈が勢いよく斬りかかる。

「ほう、二刀流か! なかなか良い踏み込みじゃねえか! しかし、剣術自体は随分とまた……粗削りだな!」

「偉そうに論評している場合か! もうすぐあんたの体に刀が届くぜ!」

「そうはいかねえよ!」

「なっ⁉」

 超慈の振るった魂択刀が弾かれる。超慈はやや後退する。織田桐がニヤリと笑う。

「勢いはそれまでか?」

(間違いない、魂道具を使っているはすだ。しかし、やはり速度が速くて目で追うのが困難だ……相手の魂道具が分からなければジリ貧だ……)

「足りない頭で考えてたって、圧倒的な実力差は埋まらねえよ!」

「!」

「なっ! 目を閉じただと⁉」

(俺の魂道具を信じる! ……魂のコアは……そこだ!)

「むっ⁉」

「手ごたえあり! 魂道具を破壊出来たはず!」

「破壊とまではいかねえが……ヒビを入れやがったな……お前、名前は?」

「え……ゆ、優月超慈だ!」

「そうか、超慈……てめえはここで潰す!」

「⁉ うおっ!」

「⁉ き、消えやがった……? 妙な魂道具持ちが残っていやがったか……」

「他の連中も揃って姿を消しました。後は我々で追いかけますか?」

「いや、いい……力の差は示した。奴らの心はすっかり折れたはずだ……戻るぞ」

 織田桐はマントを翻し、悠然と歩き出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

処理中です...