42 / 51
第1章
第11話(1)ダンスのようななにか
しおりを挟む
11
「どらあっ!」
「おあ!」
建物の西側の出入り口で超慈が見張りの生徒たちを手当たり次第に殴り倒す。
「よし……この辺は大丈夫ですよ、中運天先輩」
「……随分とまあ、思い切ったことを……」
クリスティーナが呆れた視線を向ける。超慈が後頭部を掻きながら答える。
「そ、そんな風に褒められると……照れてしまいます」
「いや、褒めてないよ」
「え?」
「悪いけど全然」
「はあ、そうすか……」
超慈は分かりやすくうなだれる。クリスティーナは慌てて場の空気を変える。
「ま、まあ、遅かれ早かれ、潜入は察知されていたはず……余計な手間をかけずに突っ込んだ判断も悪くはないと思うな!」
「……そうですか?」
「う、うん」
「……なんか燃えてきた! このまま突っ走りますよ!」
超慈が階段を勢いよく駆け上がっていく。クリスティーナはその後ろ姿を見ながらため息交じりで続く。
「さすがに考えなさすぎだと思うんだけど……まあ、賽は投げられたってやつか……」
階段を上がると、見張りが数名、超慈たちに気が付く。
「む! なんだ、お前ら!」
「おらあ!」
「げはっ!」
「こらあ!」
「ぬはっ!」
見張りを次々と倒して、超慈たちは上の階に進む。
「良い調子だぜ!」
「口当たりなめらかでつるつるしている~♪」
「人当たり舐められたら負けで、ギラギラしている?」
「それは気志團じゃ! 私が言っているのはきしめん!」
「ぐはあっ⁉」
2人の男女のやりとりから火が燃え上がり、超慈が思わず倒れ込む。それを見てクリスティーナが舌打ちをする。
「ちっ、部長の読みが的中しちゃったか……」
「思わぬ対面だがね、クリス……」
「出来ればこんなかたちで会いとうはなかったけど……」
暗がりから茶色い短髪の男子と黒髪ロングの女子が歩み寄ってくる。合魂サークルの代表、水上日輪と副代表の深田奈々である。クリスティーナは軽く会釈をする。
「……どうも」
「クリス、サークルに戻ってこんかね? おみゃーさんはやはり惜しい……」
水上がクリスティーナの豊満な身体を舐め回すように見つめながら笑顔で呟く。
「せい!」
「どわっ⁉ な、奈々、いきなり何をするんだぎゃ⁉」
深田の強烈な回し蹴りを後頭部に喰らい、水上は憤慨する。
「視線と言い方がいやらしい……私というものがありながら……」
「お、男の性みたいなものだがね。クリスの力が惜しいのはおみゃーさんも同意だろう?」
「それは確かに……」
「というわけでクリス、戻ってこい」
水上が満面の笑みで手招きをする。クリスティーナは構えを取って呟く。
「……先日の今日で、またそちらに戻るというのはさすがに無理な話ですね」
「はあ……しょうがにゃーね……」
「覚悟は出来とるということね?」
「……!」
対面する水上と深田の魂破が急激に高まってくるのをクリスティーナは感じる。
「奈々、最近わしは悩んでおってな……」
「へえ、珍しい……」
「鶏が先か、卵が先か、手羽先か、それが問題だがね……」
「一つ余計なの混じっとる!」
「ぐうっ!」
水上らの軽妙なやりとりから爆発が起こり、先ほどよりも大きな火が燃え上がる。クリスティーナは後退を余儀なくされる。水上が感心する。
「ほお~今のをかわすとは……流石のステップだがね」
「クリスはダンスやっておるからね」
深田がさっと髪をかきあげる。クリスティーナが自身の服にわずかに燃え移った火を消しながら苦々しく呟く。
「これが『漫才魂火』……! 今のように『フリ』『ボケ』『ツッコミ』が上手く決まると、爆発に近い現象が起きる……!」
「そんなわざわざ解説せんでも……」
「いや、クリスと本格的に手合わせするのは初めてじゃなかったか?」
「……そう言われるとそうだがね」
水上の冷静な分析に深田が頷く。水上が両手を広げる。
「さてと、気は変わったかね? 降参するなら今なんだわ……」
(二対一で不利な状況……向こうの連携は抜群……付け入る隙はないか?)
「うおお!」
「⁉」
超慈が咆哮を上げながら立ち上がり、クリスティーナたちは驚く。水上が呟く。
「へえ、さっさとくたばったかと思ったのに……」
「くたばるかよ! ラブラブなカップルの癖に、2人揃って合魂に参加しやがって! 彼女さんはともかく、てめえだけは絶対に許さねえ!」
「だ、だから、合コン違いだがね!」
「問答無用!」
超慈が魂択刀を水上に向ける。水上がやや気圧される。
「も、もの凄い殺気を向けられとる……」
「以前のような急激な魂力の高まり……これは捨て置けないわね、アンタ!」
「ああ、分かっとる! 2人まとめて始末する!」
「……来る!」
「中運天先輩! 俺が合わせます! 踊って下さい!」
「ええっ⁉」
「早く!」
「わ、分かった! ~~♪」
「! な、何をするつもり⁉」
「こうするつもりだ!」
音楽とともに踊り出したクリスティーナに続き、超慈も奇天烈なダンスのようななにかを踊り始める。当然だが、両者のダンスは全然嚙み合っていない。水上が困惑する。
「な、なんじゃ⁉ コンビネーションダンスでもするかと思ったら、片方はダンスとはとても呼べない代物! ひょ、ひょっとして、これが『魂天保羅利伊舞踊』というものか⁉」
「アンタ、考え過ぎ! それより迎撃を!」
「はっ! そ、そうか!」
「遅いぜ!」
「むうっ!」
超慈の振るった刀が水上を斬る。水上は体を抑えながら後ずさりする。深田が叫ぶ。
「ここは撤退よ!」
「まだ動けるか⁉ 待て、逃がすかよ!」
「待った! 超慈ちゃん! 追撃よりむしろ優先すべきは生徒会だよ。先を急ごう」
「は、はい……」
クリスティーナの呼びかけに超慈は平静さを取り戻し、上のフロアを目指す。
「どらあっ!」
「おあ!」
建物の西側の出入り口で超慈が見張りの生徒たちを手当たり次第に殴り倒す。
「よし……この辺は大丈夫ですよ、中運天先輩」
「……随分とまあ、思い切ったことを……」
クリスティーナが呆れた視線を向ける。超慈が後頭部を掻きながら答える。
「そ、そんな風に褒められると……照れてしまいます」
「いや、褒めてないよ」
「え?」
「悪いけど全然」
「はあ、そうすか……」
超慈は分かりやすくうなだれる。クリスティーナは慌てて場の空気を変える。
「ま、まあ、遅かれ早かれ、潜入は察知されていたはず……余計な手間をかけずに突っ込んだ判断も悪くはないと思うな!」
「……そうですか?」
「う、うん」
「……なんか燃えてきた! このまま突っ走りますよ!」
超慈が階段を勢いよく駆け上がっていく。クリスティーナはその後ろ姿を見ながらため息交じりで続く。
「さすがに考えなさすぎだと思うんだけど……まあ、賽は投げられたってやつか……」
階段を上がると、見張りが数名、超慈たちに気が付く。
「む! なんだ、お前ら!」
「おらあ!」
「げはっ!」
「こらあ!」
「ぬはっ!」
見張りを次々と倒して、超慈たちは上の階に進む。
「良い調子だぜ!」
「口当たりなめらかでつるつるしている~♪」
「人当たり舐められたら負けで、ギラギラしている?」
「それは気志團じゃ! 私が言っているのはきしめん!」
「ぐはあっ⁉」
2人の男女のやりとりから火が燃え上がり、超慈が思わず倒れ込む。それを見てクリスティーナが舌打ちをする。
「ちっ、部長の読みが的中しちゃったか……」
「思わぬ対面だがね、クリス……」
「出来ればこんなかたちで会いとうはなかったけど……」
暗がりから茶色い短髪の男子と黒髪ロングの女子が歩み寄ってくる。合魂サークルの代表、水上日輪と副代表の深田奈々である。クリスティーナは軽く会釈をする。
「……どうも」
「クリス、サークルに戻ってこんかね? おみゃーさんはやはり惜しい……」
水上がクリスティーナの豊満な身体を舐め回すように見つめながら笑顔で呟く。
「せい!」
「どわっ⁉ な、奈々、いきなり何をするんだぎゃ⁉」
深田の強烈な回し蹴りを後頭部に喰らい、水上は憤慨する。
「視線と言い方がいやらしい……私というものがありながら……」
「お、男の性みたいなものだがね。クリスの力が惜しいのはおみゃーさんも同意だろう?」
「それは確かに……」
「というわけでクリス、戻ってこい」
水上が満面の笑みで手招きをする。クリスティーナは構えを取って呟く。
「……先日の今日で、またそちらに戻るというのはさすがに無理な話ですね」
「はあ……しょうがにゃーね……」
「覚悟は出来とるということね?」
「……!」
対面する水上と深田の魂破が急激に高まってくるのをクリスティーナは感じる。
「奈々、最近わしは悩んでおってな……」
「へえ、珍しい……」
「鶏が先か、卵が先か、手羽先か、それが問題だがね……」
「一つ余計なの混じっとる!」
「ぐうっ!」
水上らの軽妙なやりとりから爆発が起こり、先ほどよりも大きな火が燃え上がる。クリスティーナは後退を余儀なくされる。水上が感心する。
「ほお~今のをかわすとは……流石のステップだがね」
「クリスはダンスやっておるからね」
深田がさっと髪をかきあげる。クリスティーナが自身の服にわずかに燃え移った火を消しながら苦々しく呟く。
「これが『漫才魂火』……! 今のように『フリ』『ボケ』『ツッコミ』が上手く決まると、爆発に近い現象が起きる……!」
「そんなわざわざ解説せんでも……」
「いや、クリスと本格的に手合わせするのは初めてじゃなかったか?」
「……そう言われるとそうだがね」
水上の冷静な分析に深田が頷く。水上が両手を広げる。
「さてと、気は変わったかね? 降参するなら今なんだわ……」
(二対一で不利な状況……向こうの連携は抜群……付け入る隙はないか?)
「うおお!」
「⁉」
超慈が咆哮を上げながら立ち上がり、クリスティーナたちは驚く。水上が呟く。
「へえ、さっさとくたばったかと思ったのに……」
「くたばるかよ! ラブラブなカップルの癖に、2人揃って合魂に参加しやがって! 彼女さんはともかく、てめえだけは絶対に許さねえ!」
「だ、だから、合コン違いだがね!」
「問答無用!」
超慈が魂択刀を水上に向ける。水上がやや気圧される。
「も、もの凄い殺気を向けられとる……」
「以前のような急激な魂力の高まり……これは捨て置けないわね、アンタ!」
「ああ、分かっとる! 2人まとめて始末する!」
「……来る!」
「中運天先輩! 俺が合わせます! 踊って下さい!」
「ええっ⁉」
「早く!」
「わ、分かった! ~~♪」
「! な、何をするつもり⁉」
「こうするつもりだ!」
音楽とともに踊り出したクリスティーナに続き、超慈も奇天烈なダンスのようななにかを踊り始める。当然だが、両者のダンスは全然嚙み合っていない。水上が困惑する。
「な、なんじゃ⁉ コンビネーションダンスでもするかと思ったら、片方はダンスとはとても呼べない代物! ひょ、ひょっとして、これが『魂天保羅利伊舞踊』というものか⁉」
「アンタ、考え過ぎ! それより迎撃を!」
「はっ! そ、そうか!」
「遅いぜ!」
「むうっ!」
超慈の振るった刀が水上を斬る。水上は体を抑えながら後ずさりする。深田が叫ぶ。
「ここは撤退よ!」
「まだ動けるか⁉ 待て、逃がすかよ!」
「待った! 超慈ちゃん! 追撃よりむしろ優先すべきは生徒会だよ。先を急ごう」
「は、はい……」
クリスティーナの呼びかけに超慈は平静さを取り戻し、上のフロアを目指す。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる