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第1章

第10話(2)大阪ええとこ一度はおいで

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「……お、来よったで」

「え? あ、ホンマや。お~い、凛!」

 躍が手を振る。それに気づいた凛が駆け寄ってくる。

「躍ん、久しぶり……」

「久しぶりって、一週間ぶりとかそれくらいやろ?」

 躍が笑顔で凛の背中をポンポンと叩く。

「ははっ……」

 凛が小さく笑う。

「……元気そうやないか」

 彩が声をかける。

「司令官……」

「おいおい、今日はオフなんやから司令官はやめろや」

 彩が苦笑いしながら手を振る。

「コマンダーさん……」

「いや、そんな風に呼んだことないやろ⁉」

「え?」

 凛が首を傾げる。

「こっちがえ?やがな! 大体自分も恥ずかしいやろ、そういう呼び方!」

「いや、別に……」

「恥ずかしくないんかい!」

「わりとしっくりきます」

「しっくりくるな! 大体英訳しただけやん! それもやめろや!」

「それじゃあ、どう呼べば……」

「彩さんでええやないか」

「いや~それはちょっと気恥ずかしいというか……」

「何を恥ずかしがることあんねん、初対面でもあるまいし」

「……良いんですか?」

「ええよ」

「彩」

「いや、呼び捨てかい⁉」

「彩っく」

「違う!」

「彩リリック」

「リを増やすな! そういうことやない!」

 彩が声を上げる。

「彩さん……」

「そう、それでええねん……」

 彩が頷く。

「それじゃあ今日はこれで解散ということで……」

「なんでやねん!」

 躍に対し彩がツッコミを入れる。

「決めるべきこと決まったんで……」

「わざわざ集まって決めることちゃうやろ!」

「まあまあ、冗談ですよ」

「ったく……」

「す、すごい……」

「ん?」

 感嘆とする凛に彩が視線を向ける。

「二人のやりとり、まるで漫才みたいですね」

「そうか?」

「ええ、とっても面白いです」

「まあ、嬉しいけど……これくらいで満足してもらっては……なあ?」

 彩が躍に目配せする。

「ええ、そうですね」

 躍が頷く。

「?」

 凛が首を捻る。

「せっかく大阪まで来たんや! 本場に行かんとな!」

 彩たちが歩き出したので、凛も慌ててついていく。

「ちょ、ちょっと……」

「……」

「あ、歩くの速っ⁉」

「大阪人の歩く速さは毎秒1.6mやからな……」

「えっ⁉」

「世界一位やで……」

「ええっ⁉」

 躍と彩が振り返って告げてきたことに凛は驚く。

「ふふっ、ついてこられるかな?」

「ふふふ……」

「い、いや、ちょっと待って!」

 凛が二人を呼び止めるが、彩と躍は歩みを止めない。

「どやった?」

「うん、とっても面白かった……!」

 演芸劇場を出た凛は躍の問いに応える。

「ふふん、やっぱりホンマもんを見ないとな……」

 躍が満足気に頷く。

「腹を抱えて笑った後は、腹を満たさんとな!」

 彩が二人を連れてある建物に入る。しばらくして三人が出てくる。躍が凛に尋ねる。

「どうやった?」

「うん、とっても美味しかった……!」

「大阪名物、串カツを堪能してくれたみたいやな! ……ん?」

「きゃあ!」

「ふははっ! 人間どもめ! 切り刻んでやる!」

 カニ怪人と戦闘員たちが大阪の街に急に現れる。凛が声を上げる。

「か、怪人が!」

「挟んでやる~」

「ちょっと待てや!」

「なにっ⁉」

「『タコヤキレッド』!」

「『オコノミヤキレッド』!」

「『イカヤキホワイト』!」

「『キャベツヤキグリーン』!」

「『ネギヤキグリーン』!」

「五人揃って!」

「「「「「『食い倒れ戦隊コナモンガールズ』!」」」」」

「そりゃあ!」

「うわあっ!」

 ふわふわとした衣装に身を包んだ五人組の女の子が、カニ怪人たちを撃退する。

「なっ……」

「ふっ、さすがは大阪で目下売り出し中の戦隊やな……」

 驚く凛の横で彩が感心したように頷く。凛が躍に尋ねる。

「レ、レッドが二人いたけど?」

「たこ焼きにもお好み焼きにも紅ショウガはつきものやからな、お互い譲れんのやろ」

「グ、グリーンも二人いたけど?」

「ああ……まあ、グリーンはなんぼおってもええやろ」

「そ、そうなのかな⁉」

 凛は戸惑ってしまう。
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