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第一章
第2話(2)笑うことが出来る
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「ありがとうございました~」
藤花たちが団子屋から出る。
「持ち合わせ、ちゃんとあったのですね……」
「喧嘩を売っているのなら買いますよ?」
楽土を藤花が睨む。
「いえいえ……」
楽土は手を左右に振る。
「まったく……」
「それでは行きましょうか」
楽土が馬を繋いでいるところに向かう。藤花が声をかける。
「少しお待ち下さい」
「え?」
「そんなに焦ることもないでしょう」
「ですが……」
「のんびりと、ゆるりと参りましょう」
「よ、よろしいのですか?」
「はい」
「え、ええ……」
藤花の即答に楽土が戸惑う。
「期限が決まっているわけではないので……」
「は、はあ……」
「別に何か月かかっても構わないのです。何だったら……」
「な、何だったら?」
「十年後だって良いのです」
「そ、それはいくらなんでも……!」
「ふふっ、冗談ですよ」
「わ、笑えませんよ……」
「お役目的には気が気でありませんか?」
藤花がいたずらっぽい視線を楽土に向ける。
「か、必ずしもそういうわけではありませんが……」
楽土が視線を逸らす。
「それならば、もっと私の尻を叩かないと……」
「い、いや、叩くって……」
楽土が藤花に視線を戻す。
「……物の例えですよ」
藤花が冷ややかな目で楽土を見つめながら、自らの尻を隠す。
「わ、分かっていますよ!」
楽土が声を上げる。
「楽土さんに叩かれたら、壊れてしまいそうです……」
「だから叩きませんよ!」
「冗談です」
「はあ……」
「ふふふ……」
楽土の様子を見て、藤花が笑う。
「からかわないで下さいよ」
「ごめんなさい、最近笑っていなかったもので……」
「はい?」
「最近というか……この体になってからまともに笑ったことあったかしら……」
藤花が木の切り株に腰を下ろし、遠い目をする。
「……」
「楽土さんはどうです?」
「え? そ、それがしですか?」
「ええ」
藤花が頷く。
「さあ、どうでしょう……」
楽土が首を傾げる。
「どうでしょうってなんですか」
「あまり考えてみたこともないので……」
「それでは、ちょっと考えてみて下さい」
「う、う~ん……」
楽土が腕を組んで考え込む。
「……」
「………」
「…………いかがです?」
やや間を空けてから藤花が尋ねる。
「……意外と難しいですね」
「例えば……お坊さんが自分で裾を踏んで転んだのを見たら?」
「くすっとします」
「偉そうにふんぞり返っている商家の旦那の頭に鳥の糞が落ちたら?」
「ふふっとなります」
「戦場で敵方を、尻を叩いて挑発していた足軽の尻に矢が刺さったら?」
「なんですか、その例えは⁉」
「ガハハハッ!とはなりません?」
「なりませんよ、むしろ大丈夫かなと心配になります」
「そうですか……大笑いをするということは無いのですね?」
「! そ、そうですね、ここ最近は……」
「ふむ……」
「それがしのみで行動することが多かったので……」
「ほう? 誰かとお話するのも久しぶりですか?」
「そういうわけでもありませんが、真面目な話が多いですから、冗談などを言い合うということはまずないですね……」
「ふ~ん……」
藤花が腕を組んでうんうんと頷く。
「そろそろ先に向かいませんか?」
「まあまあ、そう慌てないで……」
「しかし……」
「せっかくの二体での連れ立っての旅です。楽しく参りましょう」
「楽しく……」
「ええ、私たちはまだ笑うことが出来るのですから」
「笑うことが出来る……」
「そうです」
「ううむ……」
「……というわけで」
「というわけで?」
「何か面白いことを言ってみて下さい」
「ええっ⁉」
楽土が驚く。
「お互い笑い合って、楽しい旅にしましょうよ」
「い、いや、それは結構な無理難題ですよ……ん?」
楽土が困惑しながら団子屋に目をやる。
「ありがとうございました~」
「うむ……」
団子屋から中年の浪人が出てくる。
「待ちなさい! 父上の仇!」
団子屋から飛び出してきた三人の女性が浪人を呼び止める。
「おや、言っている側から何やら楽しそうなことが……」
「いや、絶対に楽しくはないでしょう……!」
藤花の言葉を楽土は否定する。
藤花たちが団子屋から出る。
「持ち合わせ、ちゃんとあったのですね……」
「喧嘩を売っているのなら買いますよ?」
楽土を藤花が睨む。
「いえいえ……」
楽土は手を左右に振る。
「まったく……」
「それでは行きましょうか」
楽土が馬を繋いでいるところに向かう。藤花が声をかける。
「少しお待ち下さい」
「え?」
「そんなに焦ることもないでしょう」
「ですが……」
「のんびりと、ゆるりと参りましょう」
「よ、よろしいのですか?」
「はい」
「え、ええ……」
藤花の即答に楽土が戸惑う。
「期限が決まっているわけではないので……」
「は、はあ……」
「別に何か月かかっても構わないのです。何だったら……」
「な、何だったら?」
「十年後だって良いのです」
「そ、それはいくらなんでも……!」
「ふふっ、冗談ですよ」
「わ、笑えませんよ……」
「お役目的には気が気でありませんか?」
藤花がいたずらっぽい視線を楽土に向ける。
「か、必ずしもそういうわけではありませんが……」
楽土が視線を逸らす。
「それならば、もっと私の尻を叩かないと……」
「い、いや、叩くって……」
楽土が藤花に視線を戻す。
「……物の例えですよ」
藤花が冷ややかな目で楽土を見つめながら、自らの尻を隠す。
「わ、分かっていますよ!」
楽土が声を上げる。
「楽土さんに叩かれたら、壊れてしまいそうです……」
「だから叩きませんよ!」
「冗談です」
「はあ……」
「ふふふ……」
楽土の様子を見て、藤花が笑う。
「からかわないで下さいよ」
「ごめんなさい、最近笑っていなかったもので……」
「はい?」
「最近というか……この体になってからまともに笑ったことあったかしら……」
藤花が木の切り株に腰を下ろし、遠い目をする。
「……」
「楽土さんはどうです?」
「え? そ、それがしですか?」
「ええ」
藤花が頷く。
「さあ、どうでしょう……」
楽土が首を傾げる。
「どうでしょうってなんですか」
「あまり考えてみたこともないので……」
「それでは、ちょっと考えてみて下さい」
「う、う~ん……」
楽土が腕を組んで考え込む。
「……」
「………」
「…………いかがです?」
やや間を空けてから藤花が尋ねる。
「……意外と難しいですね」
「例えば……お坊さんが自分で裾を踏んで転んだのを見たら?」
「くすっとします」
「偉そうにふんぞり返っている商家の旦那の頭に鳥の糞が落ちたら?」
「ふふっとなります」
「戦場で敵方を、尻を叩いて挑発していた足軽の尻に矢が刺さったら?」
「なんですか、その例えは⁉」
「ガハハハッ!とはなりません?」
「なりませんよ、むしろ大丈夫かなと心配になります」
「そうですか……大笑いをするということは無いのですね?」
「! そ、そうですね、ここ最近は……」
「ふむ……」
「それがしのみで行動することが多かったので……」
「ほう? 誰かとお話するのも久しぶりですか?」
「そういうわけでもありませんが、真面目な話が多いですから、冗談などを言い合うということはまずないですね……」
「ふ~ん……」
藤花が腕を組んでうんうんと頷く。
「そろそろ先に向かいませんか?」
「まあまあ、そう慌てないで……」
「しかし……」
「せっかくの二体での連れ立っての旅です。楽しく参りましょう」
「楽しく……」
「ええ、私たちはまだ笑うことが出来るのですから」
「笑うことが出来る……」
「そうです」
「ううむ……」
「……というわけで」
「というわけで?」
「何か面白いことを言ってみて下さい」
「ええっ⁉」
楽土が驚く。
「お互い笑い合って、楽しい旅にしましょうよ」
「い、いや、それは結構な無理難題ですよ……ん?」
楽土が困惑しながら団子屋に目をやる。
「ありがとうございました~」
「うむ……」
団子屋から中年の浪人が出てくる。
「待ちなさい! 父上の仇!」
団子屋から飛び出してきた三人の女性が浪人を呼び止める。
「おや、言っている側から何やら楽しそうなことが……」
「いや、絶対に楽しくはないでしょう……!」
藤花の言葉を楽土は否定する。
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