フィーバーロボット大戦~アンタとはもう戦闘ってられんわ!~

阿弥陀乃トンマージ

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チャプター2

第19話A(3)唐突な命令

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「さてと……」

 Aブロックの戦いを見届けた大洋が席を立つ。

「琉球海洋大学が勝ったか。大学勢が勝つのは結構な番狂わせやないか?」

「あのシーサーウシュという機体、ますます興味深いね……」

 隼子の感想に閃が頷く。

「モニターに映っていたけど、変わったコックピットやったな」

「搭乗者の動きなどをほとんどそのままダイレクトに反映する形式のようだね。ロボットのああいった操縦体系に関しては数十年前から提唱されていて、研究自体は十数年前から世界各地で行われている。けど……」

「けど?」

「こう言っては失礼だけど、世界どころかアジアでも最先端を進んでいるわけではない琉球海洋大学がその研究を具体化させるとは……」

「あの同乗していた眼鏡のお姉ちゃんが天才研究者とか」

 隼子の指摘に閃は首を振る。

「山田いつき……ある程度の秀才ではあるんだろうけど、天才ではないね」

「なんでそんなことが言いきれんねん」

「ロボット研究の天才なら、同じく天才の私が知らないのはおかしい」

「ほ~それはまた強気なこって……」

 隼子が苦笑混じりに呟く。

「私のことはともかくとして、彼女に天才の片鱗を感じた?」

「……まあ、あの娘には悪いけど全然感じんかったな」

「でしょ?」

「むしろアタフタしとったな」

「そう、機体のことをまだ把握しきれていないようだった……」

 二人のやりとりを聞いていた大洋が口を開く。

「それも無理のない話だろう。シーサーウシュはついこないだ太古の深い眠りから目覚めたそうだからな」

「はっ⁉ どういうこっちゃ⁉」

「タイコ、スゴイ、ムカシ」

「太古の意味は分かっとるわ! なんでカタコトになんねん!」

「太古の眠り……古代文明の遺産ということかな?」

 閃が顎に手をやって呟く。

「それで、なんであのかりゆしウェアの兄ちゃんが搭乗してんねん? 個人データを見たところ、大学の学生でもないみたいやし」

「たまたま通りがかったところを搭乗者に選ばれたとか言っていたぞ」

「なんでそんなことになんねん?」

「さあな」

 大洋は首を傾げる。

「さあなって……」

「色々とバタバタしていたからな。詳しいことは聞けなかった。もっとも本人らもよく分かってないようだったぞ」

「さ、さよか……」

「興味が尽きないね」

 閃が微笑を浮かべる。隼子がモニターを眺めながら尋ねる。

「……もう一個の勝った鳳凰院っちゅうのは奈良代表やな」

「そうだね、ロボット開発・研究に関して昔から熱心な宗教法人だ。さながら現代の僧兵と言ったところかな」

「僧兵って何時代の話やねん……物騒な話やで」

 閃の答えに隼子は首をすくめる。閃もモニターに目をやり、呟く。

「ただ、この機体も関西大会では使っていなかったね……この西日本大会に合わせて投入したということかな? こちらも興味深いね」

大洋が尋ねる。

「閃、Bブロックの開始はいつだ?」

「ちょっと待って……今、大会運営から正式に通知がきたよ。今から約一時間後だ。十分前には所定の位置についていて下さいってさ」

「そうか、少しばかり暇だな……CブロックやDブロックの試合は見られないのか? 同時進行中だろう?」

「映像へのアクセスに制限が掛かっているから見られないね。まあ、今日の夜には見られるようになるんだけど」

「どんな連中が出て、どのように戦っているか気になるところだが……」

「これまた強気やな。まず今日勝つことを考えんと。足元掬われるで」

 大洋の言葉に隼子が笑う。

「珍しくジュンジュンが良いことを言っているね」

「珍しくは余計や!」

「ならばちょっと出てくる」

 テントを出ようとする大洋に隼子が声をかける。

「迷子になんなよ~」

「ああ、大丈夫だ」

「ならええけど」

 大洋がテントを出る。

「……迷った」

 散歩がてら、尿意に襲われた大洋は仮設トイレを探して慌てて駆け込んだ。用を足した後、仮設トイレを出ると迷ってしまった。

「ちょっと、アンタ……」

「参ったな……こっちだったか?」

 大洋はハンカチで手を拭うと、後頭部を掻きながら歩き出した。

「アンタって」

「まだ時間には余裕あるな……慌てない方が良い」

「呼んどるやろ! 聞こえとらんの?」

「もし、遅刻で失格になったら隼子たちに何て言われるか分からんな……」

「疾風大洋!」

「なんだ、さっきから!」

「う、うわっ!」

 大洋がいきなり振り返った為、女性が驚いて尻餅をついた。

「誰だ?」

「聞こえとるなら、さっさと返事しなはれや……」

 女性が尻に付いた土を払いながら立ち上がる。黒髪のロングで前髪をパッツンとしており、黒い狩衣に白い袴というこの場にはややそぐわない一風変わった格好をしている。

「神主か? 神頼みする予定は今のところ無いぞ」

「神主ちゃうわ」

「ならコスプレか、生憎撮影機材の持ち合わせは無い」

「コスプレともちゃうわ!」

「じゃあなんだ?」

「うちは陰陽師や!」

「陰陽師?」

「そう、陰陽師兼ロボットパイロット、『播磨の黒い星』、明石屋浪漫(あかしやろまん)をご存知ない⁉」

「ご存知ないな」

「あららー!」

 大洋のにべもない返答に浪漫は勢いよくずっこける。

「だ、大丈夫か……?」

 大洋が手を差し伸べ、その手を取って、浪漫が立ち上がる。

「ほ、ほんまに知らへんの……? アイドル歌手やら占い師やら気象予報士やら雀士やらマルチに活動しているのに……?」

「す、すまん……」

「ま、まあ、ええわ……それよりも疾風大洋……うちと結婚しなはれ」

「ええっ⁉」

 浪漫の突拍子もない提案というか命令に大洋は驚いた。
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