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第一章
第11話(4) 上杉山隊対狐狗狸さん
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「気を付けろ、乙級か丙級ほどの妖力はある連中だぞ」
御剣は皆にそう呼びかけて、刀を鞘から抜いて身構える。狐は地面を蹴ったかと思うとその姿が見えなくなる。
(速い!)
一瞬で間合いを詰めた狐の拳が御剣の顔面を襲うが、御剣は首を捻って躱し、すぐさま刀を横に薙ぐが、狐はバク転で回避する。
「む!」
狐は着地すると、再び御剣との間合いを詰める。顔面への攻撃を警戒し、上半身の守りを固める御剣だったが、狐はその裏をかき、足払いを喰らわせる。
「ちっ!」
バランスを崩して倒れかけた御剣だが、片手を床についてくるりと回転し、追撃を受けないように一旦距離を取る。
(武器の類は使わない、体術に特化した妖か……それもまた厄介だな)
刀の刃先を狐に向けつつ、御剣は呼吸を整える。狐が再び飛び掛かってくる。今度は鋭い爪を立てているが、御剣が刀で受け止める。
(よしっ! 目で追えている! ⁉)
御剣は刀をデタラメに振り回す。驚いた狐は距離を取る。御剣は顔を抑える。
(くっ、刀と爪の鍔迫り合いで生じた火花が目に……しかも両目とは)
御剣に異状が起こったことを察知した狐は御剣に襲いかかる。御剣は舌打ちする。
(これでは距離感と方向感が掴めん!)
「左下にゃ! 爪で首を狙っているにゃ!」
「!」
又左の声に反応した御剣は目を閉じたまま、刀で狐の攻撃を受け止める。
「億葉! その二人を守っていろ! こいつはアタシがやる!」
千景が億葉に指示する。
「大丈夫でありますか⁉」
「へっ、アタシを誰だと思ってんだ!」
千景は机を足場にして、わずか三歩で狗との距離を詰める。
「!」
「先手必勝!」
千景の繰り出した拳は黒板にヒビを入れるほど強烈なものであったが、これを狗はしゃがみ込んで躱す。千景は笑みを浮かべる。
「そっちに避けるのは読めてんだよ!」
地面にあるサッカーボールを蹴る要領で千景は左足で狗を蹴る。狗は吹っ飛ばされた様にドアを破り、廊下に転がり出る。億葉が歓声を上げる。
「やった!」
「まだだ……」
「えっ⁉」
「後ろに飛んで衝撃を和らげやがった。小賢しい真似を……!」
千景も急いで廊下に出る。狗が既に立ち上がっている。
(ダメージはほぼ無しか、嫌になるぜ……)
今度は狗が先に仕掛けてくる。千景の反応が僅かに遅れる。
(しまった! いや、飛び込んできた所をカウンターで沈める!)
千景は右手を小さく振り上げる。自分に攻撃を仕掛けてきた所にタイミング良く右フックを合わせるイメージであったが、思っていた所に狗はいなかった。狗は深くしゃがみこんでいたのである。
(くそっ! 人型だと思っていたら油断した! 四足歩行が本来のスタイルか!)
千景の放った鋭い右フックは虚しく空を切る。そしてがら空きとなった千景の右脇腹を狗の爪が引き裂く。
「ぐおっ!」
千景が痛みに顔を歪める。そこに狗が追撃を加える。千景は防ごうとしたが左腕を切り裂かれ、押し倒される。狗は両腕両足を使って、千景の体を強く抑え込む。そして、口を大きく開いて、牙で千景の喉笛を噛み千切ろうとする。
「くっ!」
「千景氏! 目を瞑って!」
「なっ⁉」
億葉の声が聞こえ、千景は目を瞑る。
「それっ! 『一億個の発明! その98! ショッキングライト!』」
「!」
億葉によって凄まじい光量のライトに顔を照らされ、狗は思わずのけそる。
「続いて! 『一億個の発明! その18! ロングレンジマジックハンド改!』」
億葉はマジックハンドの先にボクシンググローブを付けたものを勢い良く放ち、それをもろに喰らった狗は後方に吹っ飛ぶ。億葉は千景に駆け寄り、抱き起こす。
「千景氏、平気でありますか⁉」
「な、なんとかな……サンキューな、億葉。お前のヘンテコな発明も役に立つんだな」
「ヘンテコは余計です! ⁉」
狗が体勢を立て直すのが見える。千景は億葉を退かせる。
「離れていろ、億葉……」
「しかし、その体では奴のスピードには⁉」
(そうだ、マジで獣を相手にしているようなもんだ。あの速さをなんとかしねえと……)
狗が再び床を蹴って、千景に飛び掛かる。
「ちっ!」
「黒駆三尋、宿り給へ!」
「⁉」
四体の黒駆が狗の手足をガシッと掴み、自由を奪う。千景は狗の後方に愛を見つける。
「万夜、用務員さんを避難させろ!」
「勇次さま、どうなさるつもり⁉」
「そんなの決まってんだろ! こいつをぶっ飛ばす!」
勇次が勢い良く拳で殴りかかる。狸は反応が遅れているように見える。
(遅い! 大したことはねえ!)
「……」
「どあっ⁉」
狸が自らのポコっと突き出た腹をポンっと叩く。すると衝撃波のようなものが発生し、勇次は吹っ飛ばされる。
「なっ……!」
勇次の方を向いた狸はリズム良く腹をポンポンと叩く。衝撃波の波が勇次を襲う。
「ぐっ……これじゃあ近寄れねえ!」
「えいっ!」
「!」
万夜が鞭を使って狸の両手を器用に縛る。
「勇次さま! これで奴は腹を叩けませんわ!」
「よっしゃ! もらった!」
勇次は再び殴り掛かる。狸は真上に飛ぶ。
「! しまっ……」
狸の顔面を狙った勇次の拳が狸の腹に当たり、強烈に弾き返されて、勇次はまたもや吹っ飛ばされる。
「勇次さま!」
狸が鞭を引っ張る。
(くっ、凄い力! ただ、一般人の方も近くにいますから術は使えない……!)
「‼」
「きゃあ! ……?」
狸が両手を強く振り、振り回された万夜は近くのプールの壁にぶつかりそうになる。しかし、その直前で三尋が万夜の体を受け止める。
「あ、ありがとうございます……黒崎さん」
「黒駆です……」
「三尋!」
「忘れ物だ」
「い、いや、まさか学校に持ってくるわけにもいかねえだろ……とにかくサンキュー!」
勇次は三尋が投げた金棒を受け取って礼を言う。
「ふん!」
御剣が目を瞑ったまま刀で狐の爪を弾き飛ばす。
「又左! 距離と方向を教えろ!」
「10時の方向! 3m先にゃ!」
「よし!」
御剣が刀を素早く振り下ろし、それを受け切れなかった狐は真っ二つにされる。
「よっしゃ、愛! そのまま黒谷に抑えてさせていろ!」
「黒駆さんです! 言われなくても!」
四体の黒駆によって、身動きのとれなくなった狗に向かって千景が殴りかかる。
「喰らいやがれ!」
千景の拳が狗の腹を貫く。
「よし、俺と苦竹さんで抑えている! 今の内に!」
「うおおおっ!」
勇次が金棒を振りかざしながら飛び掛かる。狸は再び体を宙に浮かし、腹で攻撃を受け止めようとする。
「自慢の腹みたいだが関係ねえ!」
「!」
勇次のフルスイングした金棒が狸の胴体を突き破る。
「……根絶を確認したにゃ」
又左の報告に御剣が頷く。
「皆、よくやった。帰投するぞ」
「迷い込んだ人たちは?」
勇次の問いに万夜が髪をかき上げながら答える。
「眠りの香を嗅がせて、少し眠っていてもらいます。起きた時には何か悪い夢でも見た気がする程度にしか覚えていませんわ。用務員さんにはそこの木陰で眠ってもらいましたわ」
「鈴木先輩と佐藤先輩は頃合いを見て、私が起こします」
愛に対して億葉が告げる。
「起こすついでにこっくりさんは止めた方がいいって伝えておいて下さい」
億葉の言葉に全員が笑みをこぼす。
御剣は皆にそう呼びかけて、刀を鞘から抜いて身構える。狐は地面を蹴ったかと思うとその姿が見えなくなる。
(速い!)
一瞬で間合いを詰めた狐の拳が御剣の顔面を襲うが、御剣は首を捻って躱し、すぐさま刀を横に薙ぐが、狐はバク転で回避する。
「む!」
狐は着地すると、再び御剣との間合いを詰める。顔面への攻撃を警戒し、上半身の守りを固める御剣だったが、狐はその裏をかき、足払いを喰らわせる。
「ちっ!」
バランスを崩して倒れかけた御剣だが、片手を床についてくるりと回転し、追撃を受けないように一旦距離を取る。
(武器の類は使わない、体術に特化した妖か……それもまた厄介だな)
刀の刃先を狐に向けつつ、御剣は呼吸を整える。狐が再び飛び掛かってくる。今度は鋭い爪を立てているが、御剣が刀で受け止める。
(よしっ! 目で追えている! ⁉)
御剣は刀をデタラメに振り回す。驚いた狐は距離を取る。御剣は顔を抑える。
(くっ、刀と爪の鍔迫り合いで生じた火花が目に……しかも両目とは)
御剣に異状が起こったことを察知した狐は御剣に襲いかかる。御剣は舌打ちする。
(これでは距離感と方向感が掴めん!)
「左下にゃ! 爪で首を狙っているにゃ!」
「!」
又左の声に反応した御剣は目を閉じたまま、刀で狐の攻撃を受け止める。
「億葉! その二人を守っていろ! こいつはアタシがやる!」
千景が億葉に指示する。
「大丈夫でありますか⁉」
「へっ、アタシを誰だと思ってんだ!」
千景は机を足場にして、わずか三歩で狗との距離を詰める。
「!」
「先手必勝!」
千景の繰り出した拳は黒板にヒビを入れるほど強烈なものであったが、これを狗はしゃがみ込んで躱す。千景は笑みを浮かべる。
「そっちに避けるのは読めてんだよ!」
地面にあるサッカーボールを蹴る要領で千景は左足で狗を蹴る。狗は吹っ飛ばされた様にドアを破り、廊下に転がり出る。億葉が歓声を上げる。
「やった!」
「まだだ……」
「えっ⁉」
「後ろに飛んで衝撃を和らげやがった。小賢しい真似を……!」
千景も急いで廊下に出る。狗が既に立ち上がっている。
(ダメージはほぼ無しか、嫌になるぜ……)
今度は狗が先に仕掛けてくる。千景の反応が僅かに遅れる。
(しまった! いや、飛び込んできた所をカウンターで沈める!)
千景は右手を小さく振り上げる。自分に攻撃を仕掛けてきた所にタイミング良く右フックを合わせるイメージであったが、思っていた所に狗はいなかった。狗は深くしゃがみこんでいたのである。
(くそっ! 人型だと思っていたら油断した! 四足歩行が本来のスタイルか!)
千景の放った鋭い右フックは虚しく空を切る。そしてがら空きとなった千景の右脇腹を狗の爪が引き裂く。
「ぐおっ!」
千景が痛みに顔を歪める。そこに狗が追撃を加える。千景は防ごうとしたが左腕を切り裂かれ、押し倒される。狗は両腕両足を使って、千景の体を強く抑え込む。そして、口を大きく開いて、牙で千景の喉笛を噛み千切ろうとする。
「くっ!」
「千景氏! 目を瞑って!」
「なっ⁉」
億葉の声が聞こえ、千景は目を瞑る。
「それっ! 『一億個の発明! その98! ショッキングライト!』」
「!」
億葉によって凄まじい光量のライトに顔を照らされ、狗は思わずのけそる。
「続いて! 『一億個の発明! その18! ロングレンジマジックハンド改!』」
億葉はマジックハンドの先にボクシンググローブを付けたものを勢い良く放ち、それをもろに喰らった狗は後方に吹っ飛ぶ。億葉は千景に駆け寄り、抱き起こす。
「千景氏、平気でありますか⁉」
「な、なんとかな……サンキューな、億葉。お前のヘンテコな発明も役に立つんだな」
「ヘンテコは余計です! ⁉」
狗が体勢を立て直すのが見える。千景は億葉を退かせる。
「離れていろ、億葉……」
「しかし、その体では奴のスピードには⁉」
(そうだ、マジで獣を相手にしているようなもんだ。あの速さをなんとかしねえと……)
狗が再び床を蹴って、千景に飛び掛かる。
「ちっ!」
「黒駆三尋、宿り給へ!」
「⁉」
四体の黒駆が狗の手足をガシッと掴み、自由を奪う。千景は狗の後方に愛を見つける。
「万夜、用務員さんを避難させろ!」
「勇次さま、どうなさるつもり⁉」
「そんなの決まってんだろ! こいつをぶっ飛ばす!」
勇次が勢い良く拳で殴りかかる。狸は反応が遅れているように見える。
(遅い! 大したことはねえ!)
「……」
「どあっ⁉」
狸が自らのポコっと突き出た腹をポンっと叩く。すると衝撃波のようなものが発生し、勇次は吹っ飛ばされる。
「なっ……!」
勇次の方を向いた狸はリズム良く腹をポンポンと叩く。衝撃波の波が勇次を襲う。
「ぐっ……これじゃあ近寄れねえ!」
「えいっ!」
「!」
万夜が鞭を使って狸の両手を器用に縛る。
「勇次さま! これで奴は腹を叩けませんわ!」
「よっしゃ! もらった!」
勇次は再び殴り掛かる。狸は真上に飛ぶ。
「! しまっ……」
狸の顔面を狙った勇次の拳が狸の腹に当たり、強烈に弾き返されて、勇次はまたもや吹っ飛ばされる。
「勇次さま!」
狸が鞭を引っ張る。
(くっ、凄い力! ただ、一般人の方も近くにいますから術は使えない……!)
「‼」
「きゃあ! ……?」
狸が両手を強く振り、振り回された万夜は近くのプールの壁にぶつかりそうになる。しかし、その直前で三尋が万夜の体を受け止める。
「あ、ありがとうございます……黒崎さん」
「黒駆です……」
「三尋!」
「忘れ物だ」
「い、いや、まさか学校に持ってくるわけにもいかねえだろ……とにかくサンキュー!」
勇次は三尋が投げた金棒を受け取って礼を言う。
「ふん!」
御剣が目を瞑ったまま刀で狐の爪を弾き飛ばす。
「又左! 距離と方向を教えろ!」
「10時の方向! 3m先にゃ!」
「よし!」
御剣が刀を素早く振り下ろし、それを受け切れなかった狐は真っ二つにされる。
「よっしゃ、愛! そのまま黒谷に抑えてさせていろ!」
「黒駆さんです! 言われなくても!」
四体の黒駆によって、身動きのとれなくなった狗に向かって千景が殴りかかる。
「喰らいやがれ!」
千景の拳が狗の腹を貫く。
「よし、俺と苦竹さんで抑えている! 今の内に!」
「うおおおっ!」
勇次が金棒を振りかざしながら飛び掛かる。狸は再び体を宙に浮かし、腹で攻撃を受け止めようとする。
「自慢の腹みたいだが関係ねえ!」
「!」
勇次のフルスイングした金棒が狸の胴体を突き破る。
「……根絶を確認したにゃ」
又左の報告に御剣が頷く。
「皆、よくやった。帰投するぞ」
「迷い込んだ人たちは?」
勇次の問いに万夜が髪をかき上げながら答える。
「眠りの香を嗅がせて、少し眠っていてもらいます。起きた時には何か悪い夢でも見た気がする程度にしか覚えていませんわ。用務員さんにはそこの木陰で眠ってもらいましたわ」
「鈴木先輩と佐藤先輩は頃合いを見て、私が起こします」
愛に対して億葉が告げる。
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