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第一章
第12話(2) ロケットで突き抜ける
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「なっ……⁉」
「おおっ、出迎えご苦労!」
御盾があっけにとられる万夜たちに声を掛ける。愛が尋ねる。
「ど、どうしてこちらに?」
「其方らの隊長に頼まれたのだ。まあ、正確に言えば、星ノ条管区長経由の連絡だがな」
「隊長が……そうだったのですか……」
「それで? 状況はどうなっている?」
御盾の問いに又左が答える。
「上級の妖、複数箇所からの攻撃を受けているにゃ」
「ふむ、非戦闘員の避難は済んでいるのか?」
そこに三尋が姿を現す。
「まだ若干名、避難出来ておりません」
「そうか、では避難誘導を優先しつつ、妖どもを迎撃、各個撃破するぞ!」
「ちょっとお待ち下さい! 何故貴女が仕切るのですか!」
食ってかかろうとする万夜の鼻先に御盾が軍配を突き付ける。
「管区長殿が不在ならば、副管区長の此方が采配を振るう……なにかおかしいか?」
「い、いえ、失礼致しました……」
「分かれば宜しい……ではこの転移室を臨時の作戦室とする。此方がここから指示を出す。状況が変化次第、連絡を入れろ。では、各員はこれから迎撃に向かえ!」
「そ、その前に一つ宜しいですか⁉ 気になることが!」
三尋が叫ぶ。
「何じゃ忍び君?」
「実は……」
三尋の報告に御盾は頷く。
「ふむ……それは思ったよりも厄介なことになりそうじゃな。そういえば此方も一つ大事な事を忘れておったわ、全員頭を下げろ」
「はあっ⁉ なんでそんなことをしなきゃなんねえんだよ⁉」
「千景! ここは黙って言う通りにするにゃ!」
「わ、分かったよ……」
又左の言葉に千景は渋々と従う。
「参るぞ……『鼓武(こぶ)』」
御盾が頭を下げる上杉山隊、武枝隊の両隊員の頭上に軍配を大きく振るう。
「こ、これは……! 力が漲ってくるようですわ!」
「此方は回復系統の術使いだが、単なる回復とは少し違っていてな……其方らの持っている力をより大きく引き出せることが出来るのじゃ。これで格上の相手に対しても後れを取ることはあるまい!」
「では、指示をお願いします!」
「うむ!」
愛の言葉に御盾が力強く頷く。
「きゃあ!」
隊舎の中庭を走っていた女性が足を取られ、逆さまで宙吊りになる。
「ふふっ、非戦闘員でも妖絶講所属だけあってそれなりの霊力ね。頂くとするわ!」
「させるかよ!」
「間一髪……」
妖が女性に襲いかかろうとしたが、千景と林根笑冬がその攻撃を防ぐ。
「⁉ ちっ、妖絶士か……」
妖は距離を取る。林根は女性を救出し、避難させてから振り返り、千景に問う。
「いかがですか?」
「驚いた……白崎の言っていた通りだぜ……」
「? あの方の名前は黒駆さんと認識しておりましたが?」
林根が冷静に訂正する。
「と、とにかく、アイツは以前に姐御、うちの隊長が始末した蜘蛛の妖で間違いねえ!」
千景が指差した先には女子高生の制服を着た人型の蜘蛛の妖が立っている。
「なんでてめえ、甦ってやがんだよ!」
「はっ、答える義理は無いわ」
「何だと⁉」
「それよりも……白髪の女剣士と鬼の半妖小僧はどうしたの?」
「それこそ答える義理はねえよ! 今ちょうど留守にしてんだ!」
「回答してしまっていますよ」
林根の指摘にも構わず、千景が蜘蛛の妖に殴りかかる。蜘蛛の妖は上に飛んで躱す。
「くそっ! 降りて戦いやがれ!」
「馬鹿なのアンタ?」
「はっ! 分かったぜてめえ!」
「なにがよ?」
「この中庭中に蜘蛛の巣を張り巡らしていやがるな!」
「……まあ、馬鹿でも気付くわね」
「つまり、この糸をたどって行けば、てめえに行きつく!」
千景は勢い良く糸を上り始める。
「……思った以上の大馬鹿ね、アンタ」
蜘蛛の妖の言葉に千景は激昂する。
「ああん、何だって⁉」
「それを易々と許すのかって話でしょ」
蜘蛛の妖は強靭な蜘蛛の糸を使って、中庭隅に生える大きな木を軽々と抜いてみせる。
「この木で串刺しになってアンタはおしまいよ!」
尖った木の先端が千景の体に迫る。
「くっ!」
「『凍木』!」
「な⁉ 何をしたの⁉」
驚いた蜘蛛の妖が林根を見て問う。
「ご覧の通り、カチコチに凍らせました。私の術の応用です。ぶっつけ本番でしたが、上手く行きました。ついでに樫崎千景さん、その凍った木を……」
「おっしゃー!」
「……蹴り飛ばして妖に当てて下さいと言おうと思ったら、もう実行されていましたね」
千景の蹴った凍った木の先端部分が蜘蛛の妖の右わき腹に刺さる。
「ぐっ!」
「どうだ! うおっと!」
ガッツポーズを取った際にバランスを崩した千景は地面に派手に落ちる。
「馬鹿は後で殺すとして……まずは眼帯のアンタよ!」
蜘蛛の妖が口から大量の糸を吐き出し、林根の体に巻き付かせる。
「術の使い手みたいだけど、ぐるぐる巻きにしちゃえば関係ないわよね!」
「確かにその意見は参考になります」
「余裕かましている暇あるの⁉」
「ぐるぐる巻きにされる前にパーツを切り離します」
「はっ⁉」
林根は左手のロケットパンチを作動させる。糸の先を辿るように蜘蛛の妖に向かってぐるぐると回って飛んで行く。
「いいな、そのロケット借りるぜ!」
千景がロケットに飛び乗り、蜘蛛の妖の胴体に突っ込む。妖の胴体に風穴が空く。
「ぐはっ……!」
「こいつはおまけだ!」
千景の強烈な右ストレートが蜘蛛の妖の首を派手に吹っ飛ばした。
「……本体が消滅すると、糸も消失すると……絡まったままでは難渋するところでした」
冷静に戦況を分析する林根の側に千景が落下する。
「おい、受け止めてくれても良いだろうが!」
「……貴女の身体能力の高さとタフさから考えて、必要ないと判断しました」
一方、隊舎の外ではゴスロリ服を着た蝙蝠の妖が女性を抱えて、空高く舞っている。
「ふふふ……流石の忍者もこの高さまでは届かないでしょう?」
「くっ!」
隊舎の屋根に上った三尋は悔しそうな表情を見せる。
「避難させるつもりだったのに残念ね。任務も碌に果たせない忍者って価値があるの?」
「……」
「この女を喰らったら、アンタをさっさと片付けて、白髪の女剣士に借りを返すわ。あの鬼の半妖男と馬鹿そうな金髪にもね」
「更に借りは増えそうだな」
「何⁉」
女がそう呟くと、両手をポンと叩く。すると、男の姿に変わった。蝙蝠の妖が戸惑う。
「男になった⁉ お、重い!」
「失礼だな……」
性別を変えることの出来る武枝隊の忍び、朔月望が小刀で蝙蝠の妖の左腕と翼を薙ぐ。
「ぎゃあっ⁉」
「立て直す暇は与えん」
「ぐえっ!」
朔月が空中で蹴りを放つ。それを腹に受けた蝙蝠の妖は高度を下げる。
「その高さならば問題なく届く……」
三尋が屋根から飛び立つと小刀で蝙蝠の妖の首を斬り捨てる。
「がはっ……」
空中で霧消する蝙蝠の妖の様子を見ながら、三尋と朔月は屋根に着地する。
「やはり知っている奴だったか?」
「以前、隊長と勇次、そして樫崎さんが交戦した妖だ。報告書通りの恰好だった」
「そうか、一度消滅したはずの妖がどうして甦ったのか……」
朔月は顎に手を当てて考え込む。
「考えるのは後だ、避難誘導を急ぐぞ」
「……」
三尋は走り出そうとするが、朔月は尚も考え込んでいる。三尋が問い掛ける。
「どうした?」
「……なあ、私って太ったか?」
「……そもそもの体型を知らん。どうでもいいことだ、行くぞ」
三尋が他の場所に移動する為、その場から姿を消す。
「いやいや、大事な事だぞ」
朔月も首を左右に振りつつ、その後に続く。
「おおっ、出迎えご苦労!」
御盾があっけにとられる万夜たちに声を掛ける。愛が尋ねる。
「ど、どうしてこちらに?」
「其方らの隊長に頼まれたのだ。まあ、正確に言えば、星ノ条管区長経由の連絡だがな」
「隊長が……そうだったのですか……」
「それで? 状況はどうなっている?」
御盾の問いに又左が答える。
「上級の妖、複数箇所からの攻撃を受けているにゃ」
「ふむ、非戦闘員の避難は済んでいるのか?」
そこに三尋が姿を現す。
「まだ若干名、避難出来ておりません」
「そうか、では避難誘導を優先しつつ、妖どもを迎撃、各個撃破するぞ!」
「ちょっとお待ち下さい! 何故貴女が仕切るのですか!」
食ってかかろうとする万夜の鼻先に御盾が軍配を突き付ける。
「管区長殿が不在ならば、副管区長の此方が采配を振るう……なにかおかしいか?」
「い、いえ、失礼致しました……」
「分かれば宜しい……ではこの転移室を臨時の作戦室とする。此方がここから指示を出す。状況が変化次第、連絡を入れろ。では、各員はこれから迎撃に向かえ!」
「そ、その前に一つ宜しいですか⁉ 気になることが!」
三尋が叫ぶ。
「何じゃ忍び君?」
「実は……」
三尋の報告に御盾は頷く。
「ふむ……それは思ったよりも厄介なことになりそうじゃな。そういえば此方も一つ大事な事を忘れておったわ、全員頭を下げろ」
「はあっ⁉ なんでそんなことをしなきゃなんねえんだよ⁉」
「千景! ここは黙って言う通りにするにゃ!」
「わ、分かったよ……」
又左の言葉に千景は渋々と従う。
「参るぞ……『鼓武(こぶ)』」
御盾が頭を下げる上杉山隊、武枝隊の両隊員の頭上に軍配を大きく振るう。
「こ、これは……! 力が漲ってくるようですわ!」
「此方は回復系統の術使いだが、単なる回復とは少し違っていてな……其方らの持っている力をより大きく引き出せることが出来るのじゃ。これで格上の相手に対しても後れを取ることはあるまい!」
「では、指示をお願いします!」
「うむ!」
愛の言葉に御盾が力強く頷く。
「きゃあ!」
隊舎の中庭を走っていた女性が足を取られ、逆さまで宙吊りになる。
「ふふっ、非戦闘員でも妖絶講所属だけあってそれなりの霊力ね。頂くとするわ!」
「させるかよ!」
「間一髪……」
妖が女性に襲いかかろうとしたが、千景と林根笑冬がその攻撃を防ぐ。
「⁉ ちっ、妖絶士か……」
妖は距離を取る。林根は女性を救出し、避難させてから振り返り、千景に問う。
「いかがですか?」
「驚いた……白崎の言っていた通りだぜ……」
「? あの方の名前は黒駆さんと認識しておりましたが?」
林根が冷静に訂正する。
「と、とにかく、アイツは以前に姐御、うちの隊長が始末した蜘蛛の妖で間違いねえ!」
千景が指差した先には女子高生の制服を着た人型の蜘蛛の妖が立っている。
「なんでてめえ、甦ってやがんだよ!」
「はっ、答える義理は無いわ」
「何だと⁉」
「それよりも……白髪の女剣士と鬼の半妖小僧はどうしたの?」
「それこそ答える義理はねえよ! 今ちょうど留守にしてんだ!」
「回答してしまっていますよ」
林根の指摘にも構わず、千景が蜘蛛の妖に殴りかかる。蜘蛛の妖は上に飛んで躱す。
「くそっ! 降りて戦いやがれ!」
「馬鹿なのアンタ?」
「はっ! 分かったぜてめえ!」
「なにがよ?」
「この中庭中に蜘蛛の巣を張り巡らしていやがるな!」
「……まあ、馬鹿でも気付くわね」
「つまり、この糸をたどって行けば、てめえに行きつく!」
千景は勢い良く糸を上り始める。
「……思った以上の大馬鹿ね、アンタ」
蜘蛛の妖の言葉に千景は激昂する。
「ああん、何だって⁉」
「それを易々と許すのかって話でしょ」
蜘蛛の妖は強靭な蜘蛛の糸を使って、中庭隅に生える大きな木を軽々と抜いてみせる。
「この木で串刺しになってアンタはおしまいよ!」
尖った木の先端が千景の体に迫る。
「くっ!」
「『凍木』!」
「な⁉ 何をしたの⁉」
驚いた蜘蛛の妖が林根を見て問う。
「ご覧の通り、カチコチに凍らせました。私の術の応用です。ぶっつけ本番でしたが、上手く行きました。ついでに樫崎千景さん、その凍った木を……」
「おっしゃー!」
「……蹴り飛ばして妖に当てて下さいと言おうと思ったら、もう実行されていましたね」
千景の蹴った凍った木の先端部分が蜘蛛の妖の右わき腹に刺さる。
「ぐっ!」
「どうだ! うおっと!」
ガッツポーズを取った際にバランスを崩した千景は地面に派手に落ちる。
「馬鹿は後で殺すとして……まずは眼帯のアンタよ!」
蜘蛛の妖が口から大量の糸を吐き出し、林根の体に巻き付かせる。
「術の使い手みたいだけど、ぐるぐる巻きにしちゃえば関係ないわよね!」
「確かにその意見は参考になります」
「余裕かましている暇あるの⁉」
「ぐるぐる巻きにされる前にパーツを切り離します」
「はっ⁉」
林根は左手のロケットパンチを作動させる。糸の先を辿るように蜘蛛の妖に向かってぐるぐると回って飛んで行く。
「いいな、そのロケット借りるぜ!」
千景がロケットに飛び乗り、蜘蛛の妖の胴体に突っ込む。妖の胴体に風穴が空く。
「ぐはっ……!」
「こいつはおまけだ!」
千景の強烈な右ストレートが蜘蛛の妖の首を派手に吹っ飛ばした。
「……本体が消滅すると、糸も消失すると……絡まったままでは難渋するところでした」
冷静に戦況を分析する林根の側に千景が落下する。
「おい、受け止めてくれても良いだろうが!」
「……貴女の身体能力の高さとタフさから考えて、必要ないと判断しました」
一方、隊舎の外ではゴスロリ服を着た蝙蝠の妖が女性を抱えて、空高く舞っている。
「ふふふ……流石の忍者もこの高さまでは届かないでしょう?」
「くっ!」
隊舎の屋根に上った三尋は悔しそうな表情を見せる。
「避難させるつもりだったのに残念ね。任務も碌に果たせない忍者って価値があるの?」
「……」
「この女を喰らったら、アンタをさっさと片付けて、白髪の女剣士に借りを返すわ。あの鬼の半妖男と馬鹿そうな金髪にもね」
「更に借りは増えそうだな」
「何⁉」
女がそう呟くと、両手をポンと叩く。すると、男の姿に変わった。蝙蝠の妖が戸惑う。
「男になった⁉ お、重い!」
「失礼だな……」
性別を変えることの出来る武枝隊の忍び、朔月望が小刀で蝙蝠の妖の左腕と翼を薙ぐ。
「ぎゃあっ⁉」
「立て直す暇は与えん」
「ぐえっ!」
朔月が空中で蹴りを放つ。それを腹に受けた蝙蝠の妖は高度を下げる。
「その高さならば問題なく届く……」
三尋が屋根から飛び立つと小刀で蝙蝠の妖の首を斬り捨てる。
「がはっ……」
空中で霧消する蝙蝠の妖の様子を見ながら、三尋と朔月は屋根に着地する。
「やはり知っている奴だったか?」
「以前、隊長と勇次、そして樫崎さんが交戦した妖だ。報告書通りの恰好だった」
「そうか、一度消滅したはずの妖がどうして甦ったのか……」
朔月は顎に手を当てて考え込む。
「考えるのは後だ、避難誘導を急ぐぞ」
「……」
三尋は走り出そうとするが、朔月は尚も考え込んでいる。三尋が問い掛ける。
「どうした?」
「……なあ、私って太ったか?」
「……そもそもの体型を知らん。どうでもいいことだ、行くぞ」
三尋が他の場所に移動する為、その場から姿を消す。
「いやいや、大事な事だぞ」
朔月も首を左右に振りつつ、その後に続く。
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