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第二章
第22話(1) 濃い面子と会った
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玖
「さてと……着いたか」
「東京に来たって感じがしない……」
勇次の呟きに御剣が笑う。
「転移鏡を伝ってきたわけだからな。珍しい体験だっただろう?」
「まあ、それは確かに……って、おおっ⁉」
勇次が驚く。目の前に豪華なホテルかと見紛うような建物があったからである。
「ここが妖絶講東京管区、通称『第三管区』の隊舎だ」
「す、凄く立派な建物ですね……」
「妖絶講の実質的な本部のようなものだからな」
「なんじゃ、鬼ヶ島はここに来るのは初めてか?」
「は、はい。武枝隊長、いえ、副管区長……」
勇次は御盾に対して頷く。
「いちいち言い直さんでもいい、と言いたいところだが、今日のところは副管区長と呼ばれなければいかんか……」
御盾は頭を掻く。御剣が振り返って声をかける。
「入るぞ」
三人は隊舎の正面玄関に向かう。玄関前には二人の守衛が立っている。
「……お名前をお願いいたします」
「北陸甲信越管区長、上杉山御剣、同副管区長、武枝御盾、並びに上杉山隊隊員、鬼ヶ島勇次、以上三名、只今到着しました」
「……確認しました。ご苦労様です!」
守衛が敬礼をして、左右にサッと避ける。御剣たちは玄関から隊舎に入る。
「おお……」
勇次が圧倒される。正面ロビーも大きなシャンデリアが天井から吊るされるなど、超高級ホテルのような装いをしていたからである。御剣が苦笑する。
「そのような純粋な反応をしてくれると、あの方も喜ぶだろうな」
「あの方?」
「これから対面することになる方じゃ。このような豪奢な作りの隊舎もその方の趣味が色濃く反映されておる……」
「そうなんですか……」
「おーっほっほっほっほ!」
「⁉」
勇次たちの前に派手な金髪のロングヘア―で縦ロールの髪型の女性が現れる。
「ご機嫌うるわしゅう、第五管区の皆さま!」
「こ、こちらがその方ですか?」
勇次が御盾に耳打ちする。御盾が否定する。
「いや、こやつは違う……東海管区、通称『第六管区』管区長、織田桐摩央(おだぎりまお)じゃ……」
「お久しぶりですわね、改めてご機嫌いかがかしら? 上杉山管区長」
「あまり良くはない……何故ならばいきなり貴様と出くわしたからな」
「おほほっ、相変わらずの冷たい物言い……案外嫌いではないですけど」
「無理に好かれようとは思っていない」
「またまた、今後も長い付き合いになるのですから、もう少し仲良くいたしましょう」
「……仲良くないんですか?」
勇次が御盾に小声で尋ねる。御盾が苦笑気味に答える。
「其方の隊長が好きなタイプだと思うか?」
「まあ、あんまり馬が合わなそうですけど……⁉」
勇次の首元に短刀が突きつけられる。勇次が視線を後ろに向けると、おかっぱボブの髪型をした小柄で中性的な雰囲気の人物が立っている。その人物が静かに呟く。
「何故半妖がここにいる……」
「い、いや……」
「おい、やめさせろ」
御剣が摩央を睨み付ける。摩央が声をかける。
「お蘭、やめなさい。その方は良いのよ」
「……」
お蘭と呼ばれた人物は無言で短刀を納め、摩央の傍らに移動する。
「失礼いたしましたわ。それでは……」
「……織田桐管区長、貴管区の副管区長はどうされました?」
「ああ、急な任務で今日は欠席ですわ」
御盾の問いに摩央が簡潔に答え、その場を離れる。御盾が顎をさすりながら呟く。
「副管区長とは相変わらずのようじゃな……」
「そ、それより、あのおかっぱボブはなんなんですか⁉」
「あやつは小森蘭々(こもりらんらん)……織田桐の親衛隊長のようなものじゃ」
「いきなり殺されかけましたが⁉」
「あやつだけでなく、半妖を快く思っていない者も多いからのう。隊舎への出入りなども滅多に許されない……危なかったな」
「そ、そうなんですか……」
「失礼、通して頂いてよろしいですか?」
「あ、ああ、すみません……⁉」
勇次が驚く。肩にマッシュルームカットの少年を乗せた人語を話す熊がいたからである。
「これは失礼……」
御剣が頭を下げ、熊とその肩に乗った少年も会釈し、その場を通る。勇次が慌てる。
「く、熊ですよ⁉」
「落ち着け、あれは熊男の半妖、大五郎丸(だいごろうまる)だ。」
「北海道管区、通称『第一管区』所属。ちなみに肩に乗っていたのが、中田貫太郎(なかたかんたろう)じゃ」
御剣の説明を御盾が補足する。勇次が戸惑う。
「あら~元気~?」
ミディアムロングの黒髪を揺らし豊満な体をくねくねとさせた美人女性が近づいてくる。
「あ、貴女は……」
「勇次君だったかしら? どうもお久しぶり~対抗戦以来かしらね? 関東管区、通称『第四管区』管区長の星ノ条雅(ほしのじょうみやび)、永久(とこしえ)の十八歳よ~♪」
「……」
雅は往年のアイドル歌手のようなポーズを取る。それに対して勇次たちが沈黙し、その場が一瞬の静寂に包まれる。雅が声を上げる。
「ちょっと、ちょっと! だからそこは『またまた♪』でしょ⁉」
「……そのような茶番にはいちいち付き合っていられません」
「御剣っち、酷いわね~」
「……斬られたいのか?」
「⁉」
雅の後ろにいた狼の顔をした男が、刀の鞘に手をかけ、御剣に凄む。御剣が応える。
「やってみろ、出来るものならな……」
「はいはい、二人とも、めっ!よ。それじゃあ、お先に失礼~」
雅たちがその場を去る。勇次が驚く。
「お、狼男⁉」
「ああ、関東管区の副管区長で狼男の半妖、里野八狼(さとのはちろう)だ」
「相変わらず、目を付けられておるの~」
御盾が笑う。御剣がため息交じりに呟く。
「いつぞやの演習で負かしたのを根に持っているようだな。困ったものだ……」
「一方的な思いは嫌われるのが分からんかの~」
「……貴様にだけは言われたくないと思うぞ」
御剣が冷ややかな視線を御盾に向ける。
「……こんにちは」
「!」
いつの間にか御剣たちの背後に白い髪の女性が立っていた。ふわっとしたロングヘア―からは柔和な印象を、スラリとした体格と切れ長の目からは鋭利な印象を受ける。だが、勇次がもっとも驚いたのは、お尻の部分から縦に生えた白く大きな尻尾と頭にちょこんと生えたケモノ耳である。
「隣接する管区なのにあまり会わないものですね……」
「そうですね……」
御剣が言葉少なに答える。そんな御剣に女性は苦笑する。
「いつも素っ気ないですね、上杉山管区長は……」
「お気を悪くされたら申し訳ありません。そういう性分なもので……」
「せっかく便利な世の中なのに、映像通信にもあまり応じてくれませんね」
「すみません、何分機械音痴で」
御剣の返事に女性は笑う。
「そんなことを言って、私のことを信用していらっしゃらないでしょう?」
「……いいえと言えば嘘になりますね」
「お、おい!」
御剣の言葉に御盾が慌てる。女性は笑顔を崩さずに続ける。
「ふふっ、素直な方ですね……」
「管区長、そろそろ……」
女性の後ろに控えていた長身かつスレンダーな体格で、青みがかった黒色のショートカットの髪型をした別の女性が声をかける。女性が頷く。
「ああ、もう時間ですね。それでは失礼します」
女性二人がその場を離れる。御盾が御剣に尋ねる。
「あのショートカットは確か……」
「ああ、陰陽師の家系の神不知火真文(かみしらぬいまあや)だ、先日副管区長になったばかりだな」
「あそこの管区は結構入れ替わるの……ん? どうした?」
御盾が勇次に視線を向ける。勇次が口を開く。
「し、尻尾……! ケモノ耳……!」
「ああ、生えておったの」
「い、いや、あの方は……?」
勇次の問いに御剣が答える。
「加茂上晃穂(かもがみあきほ)……東北管区、通称『第二管区』の管区長で、化け狐の半妖だな」
「いや、半妖だらけじゃねえかよ!」
勇次が堪らず大声を上げる。
「さてと……着いたか」
「東京に来たって感じがしない……」
勇次の呟きに御剣が笑う。
「転移鏡を伝ってきたわけだからな。珍しい体験だっただろう?」
「まあ、それは確かに……って、おおっ⁉」
勇次が驚く。目の前に豪華なホテルかと見紛うような建物があったからである。
「ここが妖絶講東京管区、通称『第三管区』の隊舎だ」
「す、凄く立派な建物ですね……」
「妖絶講の実質的な本部のようなものだからな」
「なんじゃ、鬼ヶ島はここに来るのは初めてか?」
「は、はい。武枝隊長、いえ、副管区長……」
勇次は御盾に対して頷く。
「いちいち言い直さんでもいい、と言いたいところだが、今日のところは副管区長と呼ばれなければいかんか……」
御盾は頭を掻く。御剣が振り返って声をかける。
「入るぞ」
三人は隊舎の正面玄関に向かう。玄関前には二人の守衛が立っている。
「……お名前をお願いいたします」
「北陸甲信越管区長、上杉山御剣、同副管区長、武枝御盾、並びに上杉山隊隊員、鬼ヶ島勇次、以上三名、只今到着しました」
「……確認しました。ご苦労様です!」
守衛が敬礼をして、左右にサッと避ける。御剣たちは玄関から隊舎に入る。
「おお……」
勇次が圧倒される。正面ロビーも大きなシャンデリアが天井から吊るされるなど、超高級ホテルのような装いをしていたからである。御剣が苦笑する。
「そのような純粋な反応をしてくれると、あの方も喜ぶだろうな」
「あの方?」
「これから対面することになる方じゃ。このような豪奢な作りの隊舎もその方の趣味が色濃く反映されておる……」
「そうなんですか……」
「おーっほっほっほっほ!」
「⁉」
勇次たちの前に派手な金髪のロングヘア―で縦ロールの髪型の女性が現れる。
「ご機嫌うるわしゅう、第五管区の皆さま!」
「こ、こちらがその方ですか?」
勇次が御盾に耳打ちする。御盾が否定する。
「いや、こやつは違う……東海管区、通称『第六管区』管区長、織田桐摩央(おだぎりまお)じゃ……」
「お久しぶりですわね、改めてご機嫌いかがかしら? 上杉山管区長」
「あまり良くはない……何故ならばいきなり貴様と出くわしたからな」
「おほほっ、相変わらずの冷たい物言い……案外嫌いではないですけど」
「無理に好かれようとは思っていない」
「またまた、今後も長い付き合いになるのですから、もう少し仲良くいたしましょう」
「……仲良くないんですか?」
勇次が御盾に小声で尋ねる。御盾が苦笑気味に答える。
「其方の隊長が好きなタイプだと思うか?」
「まあ、あんまり馬が合わなそうですけど……⁉」
勇次の首元に短刀が突きつけられる。勇次が視線を後ろに向けると、おかっぱボブの髪型をした小柄で中性的な雰囲気の人物が立っている。その人物が静かに呟く。
「何故半妖がここにいる……」
「い、いや……」
「おい、やめさせろ」
御剣が摩央を睨み付ける。摩央が声をかける。
「お蘭、やめなさい。その方は良いのよ」
「……」
お蘭と呼ばれた人物は無言で短刀を納め、摩央の傍らに移動する。
「失礼いたしましたわ。それでは……」
「……織田桐管区長、貴管区の副管区長はどうされました?」
「ああ、急な任務で今日は欠席ですわ」
御盾の問いに摩央が簡潔に答え、その場を離れる。御盾が顎をさすりながら呟く。
「副管区長とは相変わらずのようじゃな……」
「そ、それより、あのおかっぱボブはなんなんですか⁉」
「あやつは小森蘭々(こもりらんらん)……織田桐の親衛隊長のようなものじゃ」
「いきなり殺されかけましたが⁉」
「あやつだけでなく、半妖を快く思っていない者も多いからのう。隊舎への出入りなども滅多に許されない……危なかったな」
「そ、そうなんですか……」
「失礼、通して頂いてよろしいですか?」
「あ、ああ、すみません……⁉」
勇次が驚く。肩にマッシュルームカットの少年を乗せた人語を話す熊がいたからである。
「これは失礼……」
御剣が頭を下げ、熊とその肩に乗った少年も会釈し、その場を通る。勇次が慌てる。
「く、熊ですよ⁉」
「落ち着け、あれは熊男の半妖、大五郎丸(だいごろうまる)だ。」
「北海道管区、通称『第一管区』所属。ちなみに肩に乗っていたのが、中田貫太郎(なかたかんたろう)じゃ」
御剣の説明を御盾が補足する。勇次が戸惑う。
「あら~元気~?」
ミディアムロングの黒髪を揺らし豊満な体をくねくねとさせた美人女性が近づいてくる。
「あ、貴女は……」
「勇次君だったかしら? どうもお久しぶり~対抗戦以来かしらね? 関東管区、通称『第四管区』管区長の星ノ条雅(ほしのじょうみやび)、永久(とこしえ)の十八歳よ~♪」
「……」
雅は往年のアイドル歌手のようなポーズを取る。それに対して勇次たちが沈黙し、その場が一瞬の静寂に包まれる。雅が声を上げる。
「ちょっと、ちょっと! だからそこは『またまた♪』でしょ⁉」
「……そのような茶番にはいちいち付き合っていられません」
「御剣っち、酷いわね~」
「……斬られたいのか?」
「⁉」
雅の後ろにいた狼の顔をした男が、刀の鞘に手をかけ、御剣に凄む。御剣が応える。
「やってみろ、出来るものならな……」
「はいはい、二人とも、めっ!よ。それじゃあ、お先に失礼~」
雅たちがその場を去る。勇次が驚く。
「お、狼男⁉」
「ああ、関東管区の副管区長で狼男の半妖、里野八狼(さとのはちろう)だ」
「相変わらず、目を付けられておるの~」
御盾が笑う。御剣がため息交じりに呟く。
「いつぞやの演習で負かしたのを根に持っているようだな。困ったものだ……」
「一方的な思いは嫌われるのが分からんかの~」
「……貴様にだけは言われたくないと思うぞ」
御剣が冷ややかな視線を御盾に向ける。
「……こんにちは」
「!」
いつの間にか御剣たちの背後に白い髪の女性が立っていた。ふわっとしたロングヘア―からは柔和な印象を、スラリとした体格と切れ長の目からは鋭利な印象を受ける。だが、勇次がもっとも驚いたのは、お尻の部分から縦に生えた白く大きな尻尾と頭にちょこんと生えたケモノ耳である。
「隣接する管区なのにあまり会わないものですね……」
「そうですね……」
御剣が言葉少なに答える。そんな御剣に女性は苦笑する。
「いつも素っ気ないですね、上杉山管区長は……」
「お気を悪くされたら申し訳ありません。そういう性分なもので……」
「せっかく便利な世の中なのに、映像通信にもあまり応じてくれませんね」
「すみません、何分機械音痴で」
御剣の返事に女性は笑う。
「そんなことを言って、私のことを信用していらっしゃらないでしょう?」
「……いいえと言えば嘘になりますね」
「お、おい!」
御剣の言葉に御盾が慌てる。女性は笑顔を崩さずに続ける。
「ふふっ、素直な方ですね……」
「管区長、そろそろ……」
女性の後ろに控えていた長身かつスレンダーな体格で、青みがかった黒色のショートカットの髪型をした別の女性が声をかける。女性が頷く。
「ああ、もう時間ですね。それでは失礼します」
女性二人がその場を離れる。御盾が御剣に尋ねる。
「あのショートカットは確か……」
「ああ、陰陽師の家系の神不知火真文(かみしらぬいまあや)だ、先日副管区長になったばかりだな」
「あそこの管区は結構入れ替わるの……ん? どうした?」
御盾が勇次に視線を向ける。勇次が口を開く。
「し、尻尾……! ケモノ耳……!」
「ああ、生えておったの」
「い、いや、あの方は……?」
勇次の問いに御剣が答える。
「加茂上晃穂(かもがみあきほ)……東北管区、通称『第二管区』の管区長で、化け狐の半妖だな」
「いや、半妖だらけじゃねえかよ!」
勇次が堪らず大声を上げる。
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