95 / 123
第二章
第24話(1) 良い物差し
しおりを挟む
拾壱
「ふん、どんなもんだ……」
勇次がふらふらっと倒れ込む。御盾が声をかける。
「大丈夫か、鬼ヶ島?」
「だ、大丈夫です。ちょっとふらついただけです……」
「隊長クラスを打ち倒すにはそれだけ力を消耗するということだな」
御剣が冷静に語る。御盾が問う。
「此方が回復するか?」
「……後でいい。それより前を見ろ」
「うむ?」
御剣の言葉に御盾が振り返ると、峰重姉弟がゆっくりと前に進み出ていた。由衣が呟く。
「私たち姉弟とお手合わせをお願いたします……」
「姉弟で来るか……ならばこちらも……宿敵!」
「嫌だ」
御盾の呼びかけを御剣は瞬時に断る。
「なっ……!」
「貴様と呼吸が合う気がせん」
「そ、それは合わせる方が言う台詞じゃ!」
「だからそう言っている」
「あ、合わせるつもりなど無い癖に!」
「御盾ちゃん~私が組んであげるわよ」
雅が背後から御盾に抱きつく。
「み、雅さん……」
「私なら誰とでもすぐに呼吸を合わせられるわ♪」
雅がウィンクする。
「それは……雅さんは年齢を重ねているだけありますから……はっ!」
「……」
雅が無言で御盾に顔を近づける。
「い、いや、経験豊富でいらっしゃいますから……!」
「なんで言い換えたの?」
「そ、それは……」
「……雅さん、圧をかける相手を間違っています」
御剣がため息まじりに声をかける。
「おっと……それじゃいきますか♪ 御盾ちゃん」
雅はパッと笑顔を浮かべて、正面を向く。御盾がぶつぶつと呟く。
「こう言ってはなんだが、今更隊長クラスと手合わせしてものう……」
「御盾ちゃん、良いことを教えてあげるわ」
「え? な、なんでしょうか?」
「あの姉弟のお姉ちゃんの方、管区長候補でもあるらしいわよ」
「⁉」
「実力を測る良い物差しになるんじゃない?」
「そ、それは良いことを聞きました……」
御盾がニヤリと笑う。由衣が苦笑する。
「まさか、物差し扱いとは……」
「……」
史人が前に出ようとする。由衣が首を傾げる。
「史人?」
「姉さんを侮辱するなんて……許せない」
「気持ちは嬉しいけど、貴方になにかあったら姉さんが嫌だわ。ここは私に任せて」
史人を制し、由衣が一歩前に進み出る。御盾がジッと見つめる。
(宿敵には偉そうなことを言ったが、此方もこの姉弟について、実はよく知らんのだが……着物姿ということは、柔術や古武術などの使い手か? ならば接近戦は避けた方が無難じゃな……こいつで様子を見る!)
考えをまとめた御盾が軍配を盾にして前に突き出す。
「!」
「『風林火山・火の構え・火炎』!」
「……お寄り給へ、大国の女王よ……」
「‼」
御盾の軍配から激しい炎が噴き出し、由衣に迫るが、由衣が小声でなにやら呟くと、炎は大量の水によって消火される。由衣が頷く。
「ふむ……」
(な、なんじゃ、水を発生させた? いや、雨が降ったかのように見えたな……そういう術の使い手か? ならば……!)
「む……」
「『風林火山・風の構え・疾風』!」
御盾が軍配を振るうと、突風が巻き起こり、由衣に迫る。由衣がまたなにやら呟く。
「……お寄り給へ、出雲の踊り手よ……」
由衣が華麗な舞のようなステップで突風をかわしてみせる。御盾が驚く。
「なっ⁉」
「今度は風ですか……」
(かわしたじゃと⁉ 遠くから攻撃を当てるのは難しいか……危険が伴うが、ここはあえて接近してみるかの!)
「⁉」
「『風林火山・林の構え・静林』!」
軍配を振るった御盾はあっという間に由衣の懐に入る。ここまで平静だった由衣がやや驚いた様子を見せる。
「! 音もなく⁉」
「林のように静かにってやつね……」
雅が感心するように頷く。御盾がニヤッと笑う。
「間合いに入ったぞ!」
「くっ!」
「『風林火山・山の構え・巨山』!」
「むう!」
御盾が軍配を掲げると、地面が山のように盛り上がり、それによってバランスを崩した由衣が転びそうになる。それを見た御盾は追い打ちをかけようとする。
「もらった!」
「……お寄り給へ、木曽の女武者よ……」
「なにっ⁉」
「うおおっ!」
突如現れた槍を手にした由衣が隆起した地面を粉々に打ち砕いてみせる。
「なっ、どこから槍が⁉ それにその怪力……!」
「隙あり!」
「むう!」
由衣が驚愕していた御盾の隙を突く。御盾は槍での攻撃を軍配で防ぐが、後方へ派手にふっとばされてしまう。雅が近くに転がってきた御盾に声をかける。
「御盾ちゃん、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「へえ、あの槍の鋭い突きを防ぐとはやるじゃない」
「そ、そんなことより、あの戦い方は一体⁉ 何かの術ですか⁉」
「術っていうのもちょっと違うけど……イタコって知ってる?」
「は、はあ……」
「峰重家は代々続く優れたイタコの家系なの。特にあの由衣ちゃんは歴史上の女性の偉人や有名人を自身の体に口寄せ……つまり憑依させることが出来るのよ」
「な、なんと……!」
「それにしても懐かしいわね、木曽の女武者さん……」
「え?」
「な、なんでもないわ、こっちの話!」
首を傾げる御盾に対し、雅が慌てて手を左右に振る。
「ふん、どんなもんだ……」
勇次がふらふらっと倒れ込む。御盾が声をかける。
「大丈夫か、鬼ヶ島?」
「だ、大丈夫です。ちょっとふらついただけです……」
「隊長クラスを打ち倒すにはそれだけ力を消耗するということだな」
御剣が冷静に語る。御盾が問う。
「此方が回復するか?」
「……後でいい。それより前を見ろ」
「うむ?」
御剣の言葉に御盾が振り返ると、峰重姉弟がゆっくりと前に進み出ていた。由衣が呟く。
「私たち姉弟とお手合わせをお願いたします……」
「姉弟で来るか……ならばこちらも……宿敵!」
「嫌だ」
御盾の呼びかけを御剣は瞬時に断る。
「なっ……!」
「貴様と呼吸が合う気がせん」
「そ、それは合わせる方が言う台詞じゃ!」
「だからそう言っている」
「あ、合わせるつもりなど無い癖に!」
「御盾ちゃん~私が組んであげるわよ」
雅が背後から御盾に抱きつく。
「み、雅さん……」
「私なら誰とでもすぐに呼吸を合わせられるわ♪」
雅がウィンクする。
「それは……雅さんは年齢を重ねているだけありますから……はっ!」
「……」
雅が無言で御盾に顔を近づける。
「い、いや、経験豊富でいらっしゃいますから……!」
「なんで言い換えたの?」
「そ、それは……」
「……雅さん、圧をかける相手を間違っています」
御剣がため息まじりに声をかける。
「おっと……それじゃいきますか♪ 御盾ちゃん」
雅はパッと笑顔を浮かべて、正面を向く。御盾がぶつぶつと呟く。
「こう言ってはなんだが、今更隊長クラスと手合わせしてものう……」
「御盾ちゃん、良いことを教えてあげるわ」
「え? な、なんでしょうか?」
「あの姉弟のお姉ちゃんの方、管区長候補でもあるらしいわよ」
「⁉」
「実力を測る良い物差しになるんじゃない?」
「そ、それは良いことを聞きました……」
御盾がニヤリと笑う。由衣が苦笑する。
「まさか、物差し扱いとは……」
「……」
史人が前に出ようとする。由衣が首を傾げる。
「史人?」
「姉さんを侮辱するなんて……許せない」
「気持ちは嬉しいけど、貴方になにかあったら姉さんが嫌だわ。ここは私に任せて」
史人を制し、由衣が一歩前に進み出る。御盾がジッと見つめる。
(宿敵には偉そうなことを言ったが、此方もこの姉弟について、実はよく知らんのだが……着物姿ということは、柔術や古武術などの使い手か? ならば接近戦は避けた方が無難じゃな……こいつで様子を見る!)
考えをまとめた御盾が軍配を盾にして前に突き出す。
「!」
「『風林火山・火の構え・火炎』!」
「……お寄り給へ、大国の女王よ……」
「‼」
御盾の軍配から激しい炎が噴き出し、由衣に迫るが、由衣が小声でなにやら呟くと、炎は大量の水によって消火される。由衣が頷く。
「ふむ……」
(な、なんじゃ、水を発生させた? いや、雨が降ったかのように見えたな……そういう術の使い手か? ならば……!)
「む……」
「『風林火山・風の構え・疾風』!」
御盾が軍配を振るうと、突風が巻き起こり、由衣に迫る。由衣がまたなにやら呟く。
「……お寄り給へ、出雲の踊り手よ……」
由衣が華麗な舞のようなステップで突風をかわしてみせる。御盾が驚く。
「なっ⁉」
「今度は風ですか……」
(かわしたじゃと⁉ 遠くから攻撃を当てるのは難しいか……危険が伴うが、ここはあえて接近してみるかの!)
「⁉」
「『風林火山・林の構え・静林』!」
軍配を振るった御盾はあっという間に由衣の懐に入る。ここまで平静だった由衣がやや驚いた様子を見せる。
「! 音もなく⁉」
「林のように静かにってやつね……」
雅が感心するように頷く。御盾がニヤッと笑う。
「間合いに入ったぞ!」
「くっ!」
「『風林火山・山の構え・巨山』!」
「むう!」
御盾が軍配を掲げると、地面が山のように盛り上がり、それによってバランスを崩した由衣が転びそうになる。それを見た御盾は追い打ちをかけようとする。
「もらった!」
「……お寄り給へ、木曽の女武者よ……」
「なにっ⁉」
「うおおっ!」
突如現れた槍を手にした由衣が隆起した地面を粉々に打ち砕いてみせる。
「なっ、どこから槍が⁉ それにその怪力……!」
「隙あり!」
「むう!」
由衣が驚愕していた御盾の隙を突く。御盾は槍での攻撃を軍配で防ぐが、後方へ派手にふっとばされてしまう。雅が近くに転がってきた御盾に声をかける。
「御盾ちゃん、大丈夫?」
「な、なんとか……」
「へえ、あの槍の鋭い突きを防ぐとはやるじゃない」
「そ、そんなことより、あの戦い方は一体⁉ 何かの術ですか⁉」
「術っていうのもちょっと違うけど……イタコって知ってる?」
「は、はあ……」
「峰重家は代々続く優れたイタコの家系なの。特にあの由衣ちゃんは歴史上の女性の偉人や有名人を自身の体に口寄せ……つまり憑依させることが出来るのよ」
「な、なんと……!」
「それにしても懐かしいわね、木曽の女武者さん……」
「え?」
「な、なんでもないわ、こっちの話!」
首を傾げる御盾に対し、雅が慌てて手を左右に振る。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~
namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。
かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。
海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。
そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。
それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。
そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。
対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。
「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」
アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。
ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。
やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。
揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
さようなら、お別れしましょう
椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。
妻に新しいも古いもありますか?
愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?
私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。
――つまり、別居。
夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。
――あなたにお礼を言いますわ。
【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる!
※他サイトにも掲載しております。
※表紙はお借りしたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる