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第三章
第30話(3) 北海道管区現状確認
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「お飲み物をご用意いたします……」
「いや、結構……」
アナスタシアの言葉に御剣は首を振る。
「はあ……」
「お気遣いは無用です。それよりも本題を……」
「ふむ、アナスタシア……君も座れ」
「はい」
五郎丸の言葉に頷き、アナスタシアは貫太郎の隣に座る。
「それではあらためて……この北海道管区の置かれている現状について、北海道管区副管区長である某、大五郎丸より説明させて頂きます……」
「お願いします」
会議室のモニターに北海道の地図が表示される。五郎丸が指示棒を用いてそれを指す。
「ご覧のように、北海道は実に広大です……面積は約8万㎢あります」
「新潟県の6倍以上だな……」
「でかっ……」
御剣の呟きに対し、後ろに座っていた勇次が反応する。
「当然ですが、我が中田隊だけではこの管区全域をカバーすることは到底出来ません」
「ふむ……」
御盾が頷く。
「よって、管区をこの札幌市を中心とした『道央』、旭川市を中心とした『道北』、釧路市を中心とした『道東』、函館市を中心とした『道南』の四つに分類しております」
「そうだったのか……」
「知らなかったの、一慶ちゃん?」
雅が一慶を呆れた様子で見る。
「いや、お恥ずかしいことに……」
一慶が後頭部を抑える。
「あなた方北陸勢にとってもまったくの無縁ではない話のはずよ?」
「うん?」
雅の発言に御剣が首を傾げる。
「い、いや、それはあくまでも噂っていうか、なんていうか……ははっ……」
一慶が慌てる。御盾が笑みを浮かべる。
「なんじゃ、また女絡みで揉め事か?」
「またってなんだよ、御盾ちゃんよ……」
一慶が口を尖らせる。
「……よろしいですか?」
「ああ、失礼しました。どうぞ……」
御剣が五郎丸に話の続きを促す。
「はい……よって、それぞれの管区に管区長に限りなく近い権限を持たせた副管区長を四人配置しています。これは明治時代あたりからの慣習で、東京管区からも認められていることです。ただし管区長会議などでは、便宜上、こちらの中田貫太郎が、管区長として出席させて頂いております」
「ん?」
「どうかしましたか、一美さん?」
首を捻る一美に愛が問いかける。
「いや……」
「なにか気になることがあればお尋ね下さい……」
五郎丸が促す。一美が口を開く。
「……えっと、配置しているという言い方ならば、五郎丸さんも普段は別の場所にいらっしゃるということですか?」
「ああ、某はこの札幌を中心とした地域のみです。道央の副管区長は別におります。説明不足で申し訳ない……」
「ああ、いえいえ……」
頭を下げる五郎丸に対し、一美が手を左右に振る。
「五郎丸は頼れる存在だから、僕の側にいてもらってるんだよ」
「護衛のようなものですか」
「護衛? いいや、大事な友達だよ」
「それは失礼しました……」
貫太郎の言葉に御盾が頭を下げる。友達と呼ばれたことに、五郎丸は少し照れくさそうにした後、軽く咳払いを入れる。
「お、おほん……それでは本題に入ります。加茂上晃穂が東京管区内から脱走し、北へ逃亡、この北海道のどこかに潜伏しているとのこと……」
「……!」
全員の顔に緊張が走る。
「それは確認が取れているの?」
「ええ、監視映像にも映っていました」
雅の問いに五郎丸が頷く。
「映像に映り込むなんて、彼女にしてはわりと初歩的なミスねえ~」
雅が腕を組んで首を傾げる。御剣が呟く。
「……誘い込まれたか?」
「そうね、御剣ちゃん、貴女への意趣返しを狙っているのかも……」
雅が微笑みを浮かべる。
「そういう狙いがあったとしても、恐らくついででしょう……」
「ついで?」
「ええ、あくまでも狙いは半妖のこの姉弟……」
御剣が後ろに座る一美と勇次に向かって顎をしゃくる。
「……」
勇次の顔がさらに引き締まる。五郎丸が口を開く。
「これは推測なのですが……恐らく今、上杉山管区長がおっしゃったことも、加茂上にとってはついでであるという可能性があります……」
「! 本当の狙いがあると……?」
御剣が尋ねる。
「ええ、この北海道の地に眠るという『北の大妖(おおあやかし)』たちを覚醒させるのが、加茂上の真なる目的なのではないかと……」
「その根拠は?」
雅が尋ねる。
「北の大妖たちが眠っているとされる各地域の近くにある狭世で、加茂上の目撃情報があります。さらにその痕跡がわずかながらに残っております」
「ふ~ん……」
雅が顎をさする。
「加茂上は大妖を覚醒させる術を知っている……?」
「可能性は大いにあるわね。彼女、とっても研究熱心だから……」
御剣の問いに雅は苦笑しながら頷く。
「そういうわけで、今後も加茂上、あるいはその息のかかった者たちが、北海道各地に現れ、大妖を覚醒させようとするかと思われます。我々を含め、五つの管区を中心にそれを撃退したいと考えております。上杉山管区長たちにもご協力頂きたいのです」
「よろしく頼むよ、御剣姉ちゃん~」
「それはもちろん構わないが……頭数が少し心もとないな……」
「ああ、それなら大丈夫、通行がてらにちゃんとお願いしてきたから……」
「! ……なるほど」
雅のウインクに御剣が理解して頷く。御盾が問う。
「其方の隊と此方の隊も一応呼びよせた方が良いのではないか?」
「いや、いよいよというまでは、残っておいてもらった方がいい。地元でも何が起こるかは分からんからな……」
御盾の言葉に御剣は首を振る。
「そうね、色々忙しいみたいだし……」
「ん? ああっ⁉」
雅が取り出した端末に表示させたものを見て、勇次が驚く。
「いや、結構……」
アナスタシアの言葉に御剣は首を振る。
「はあ……」
「お気遣いは無用です。それよりも本題を……」
「ふむ、アナスタシア……君も座れ」
「はい」
五郎丸の言葉に頷き、アナスタシアは貫太郎の隣に座る。
「それではあらためて……この北海道管区の置かれている現状について、北海道管区副管区長である某、大五郎丸より説明させて頂きます……」
「お願いします」
会議室のモニターに北海道の地図が表示される。五郎丸が指示棒を用いてそれを指す。
「ご覧のように、北海道は実に広大です……面積は約8万㎢あります」
「新潟県の6倍以上だな……」
「でかっ……」
御剣の呟きに対し、後ろに座っていた勇次が反応する。
「当然ですが、我が中田隊だけではこの管区全域をカバーすることは到底出来ません」
「ふむ……」
御盾が頷く。
「よって、管区をこの札幌市を中心とした『道央』、旭川市を中心とした『道北』、釧路市を中心とした『道東』、函館市を中心とした『道南』の四つに分類しております」
「そうだったのか……」
「知らなかったの、一慶ちゃん?」
雅が一慶を呆れた様子で見る。
「いや、お恥ずかしいことに……」
一慶が後頭部を抑える。
「あなた方北陸勢にとってもまったくの無縁ではない話のはずよ?」
「うん?」
雅の発言に御剣が首を傾げる。
「い、いや、それはあくまでも噂っていうか、なんていうか……ははっ……」
一慶が慌てる。御盾が笑みを浮かべる。
「なんじゃ、また女絡みで揉め事か?」
「またってなんだよ、御盾ちゃんよ……」
一慶が口を尖らせる。
「……よろしいですか?」
「ああ、失礼しました。どうぞ……」
御剣が五郎丸に話の続きを促す。
「はい……よって、それぞれの管区に管区長に限りなく近い権限を持たせた副管区長を四人配置しています。これは明治時代あたりからの慣習で、東京管区からも認められていることです。ただし管区長会議などでは、便宜上、こちらの中田貫太郎が、管区長として出席させて頂いております」
「ん?」
「どうかしましたか、一美さん?」
首を捻る一美に愛が問いかける。
「いや……」
「なにか気になることがあればお尋ね下さい……」
五郎丸が促す。一美が口を開く。
「……えっと、配置しているという言い方ならば、五郎丸さんも普段は別の場所にいらっしゃるということですか?」
「ああ、某はこの札幌を中心とした地域のみです。道央の副管区長は別におります。説明不足で申し訳ない……」
「ああ、いえいえ……」
頭を下げる五郎丸に対し、一美が手を左右に振る。
「五郎丸は頼れる存在だから、僕の側にいてもらってるんだよ」
「護衛のようなものですか」
「護衛? いいや、大事な友達だよ」
「それは失礼しました……」
貫太郎の言葉に御盾が頭を下げる。友達と呼ばれたことに、五郎丸は少し照れくさそうにした後、軽く咳払いを入れる。
「お、おほん……それでは本題に入ります。加茂上晃穂が東京管区内から脱走し、北へ逃亡、この北海道のどこかに潜伏しているとのこと……」
「……!」
全員の顔に緊張が走る。
「それは確認が取れているの?」
「ええ、監視映像にも映っていました」
雅の問いに五郎丸が頷く。
「映像に映り込むなんて、彼女にしてはわりと初歩的なミスねえ~」
雅が腕を組んで首を傾げる。御剣が呟く。
「……誘い込まれたか?」
「そうね、御剣ちゃん、貴女への意趣返しを狙っているのかも……」
雅が微笑みを浮かべる。
「そういう狙いがあったとしても、恐らくついででしょう……」
「ついで?」
「ええ、あくまでも狙いは半妖のこの姉弟……」
御剣が後ろに座る一美と勇次に向かって顎をしゃくる。
「……」
勇次の顔がさらに引き締まる。五郎丸が口を開く。
「これは推測なのですが……恐らく今、上杉山管区長がおっしゃったことも、加茂上にとってはついでであるという可能性があります……」
「! 本当の狙いがあると……?」
御剣が尋ねる。
「ええ、この北海道の地に眠るという『北の大妖(おおあやかし)』たちを覚醒させるのが、加茂上の真なる目的なのではないかと……」
「その根拠は?」
雅が尋ねる。
「北の大妖たちが眠っているとされる各地域の近くにある狭世で、加茂上の目撃情報があります。さらにその痕跡がわずかながらに残っております」
「ふ~ん……」
雅が顎をさする。
「加茂上は大妖を覚醒させる術を知っている……?」
「可能性は大いにあるわね。彼女、とっても研究熱心だから……」
御剣の問いに雅は苦笑しながら頷く。
「そういうわけで、今後も加茂上、あるいはその息のかかった者たちが、北海道各地に現れ、大妖を覚醒させようとするかと思われます。我々を含め、五つの管区を中心にそれを撃退したいと考えております。上杉山管区長たちにもご協力頂きたいのです」
「よろしく頼むよ、御剣姉ちゃん~」
「それはもちろん構わないが……頭数が少し心もとないな……」
「ああ、それなら大丈夫、通行がてらにちゃんとお願いしてきたから……」
「! ……なるほど」
雅のウインクに御剣が理解して頷く。御盾が問う。
「其方の隊と此方の隊も一応呼びよせた方が良いのではないか?」
「いや、いよいよというまでは、残っておいてもらった方がいい。地元でも何が起こるかは分からんからな……」
御盾の言葉に御剣は首を振る。
「そうね、色々忙しいみたいだし……」
「ん? ああっ⁉」
雅が取り出した端末に表示させたものを見て、勇次が驚く。
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