同好怪!?

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第2話(3)夜の校舎にて

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「……」

 俺は言われた通りに夜の校舎へとやってくる。我ながら何をやっているんだか……。こうしてまた貴重なプライベートの時間を削ってまでさ。

「……来たな」

「村松っち、こんばん~♪」

「! お、おお……こ、こんばんは……」

 暗がりから紅蓮と雷電が現れる。

「……」

 雷電が俺のことをじっと見つめる。

「ど、どうした、雷電?」

「……今日は挨拶噛まないんだね」

「そ、それがどうした?」

「つまんないの」」

 雷電が唇をプイっと尖らせる。

「つまんないってなんだ、つまんないって……」

 俺はムッとする。

「おもしろくないってこと」

「それは分かっている。というかな……」

「ん?」

「また言われるがままにこうして来てしまったんだが、もう下校時間はとっくに過ぎているだろう。さっさと家に帰れ」

「え~」

「だから、え~じゃないって。帰るんだ」

「そういうわけにはいかないんだよ~」

「なんでだよ?」

「なんでって……ねえ、龍虎っち?」

 雷電が紅蓮に対して視線を向ける。紅蓮が口を開く。

「……事が済んだら大人しく帰るさ」

「事が済んだらだって?」

「ああ」

 紅蓮が頷く。俺は紅蓮を指し示す。

「紅蓮、お前さんはここにいるじゃないか」

「そうだな」

「……ということは、昨日のような怪獣騒ぎはないんだろう?」

「……意外と鋭いじゃねえか」

 紅蓮が腕を組む。

「いや、鋭いとかって言われてもな……」

 俺は後頭部をポリポリと掻く。

「そこに気が付くとはなかなか出来ることじゃねえぜ」

「大体の察しはつくだろうが」

「そうか」

「そうだよ……とにかく早く帰るぞ、また車で送るから」

「……だから、そういうわけにもいかねえんだって……」

 紅蓮は首を左右に振る。俺は戸惑う。

「なんだよ、あまり困らせないでくれよ……」

「顧問なんだからある程度は付き合ってもらうさ」

「だから顧問って言われてもな……」

 俺は鼻の頭をポリポリと掻く。

「まだグダグダ言っているのかよ」

 紅蓮が呆れた目を向けてくる。

「そりゃあ言うだろう」

「昼間に図書室で説明はしただろう?」

「ああいうのは説明とは言わないぞ」

 俺は首を横に振る。

「ええ?」

「こっちがええ?だ」

「まさか……納得してねえっていうのか?」

「あれで納得出来るわけがないだろう」

「なんでだよ」

「不明な点が多すぎるんだよ」

「それくらい別に良いだろうが」

「別に良くない」

 俺は再度、首を横に振る。

「だってよ……」

「だって?」

「オレらにもよく分からねえんだからしょうがねえじゃん」

 紅蓮が両手を大きく広げる。今度は俺が呆れた目を向ける。

「……だから、そんなことに巻き込まないでくれよ……」

「教師は困っている生徒の為に力を尽くすもんだろう?」

「この場合、教師の俺の方が困っているよ」

「う~む……困ったな」

 紅蓮が再び腕を組んで、首を捻る。だから困っているのは俺の方だっての。

「とにかく……」

「……まあ、実際に見てもらうしかねえか……」

「実際に? なんだ、また怪獣か?」

「そうそうは出ねえよ。ああいうのはたまにだ」

「そ、そうなのか……」

 たまには出るのかよ。雷電が口を開く。

「村松っち……」

「なんだよ?」

「ビビっているの?」

「ああ、ビビっているよ」

「素直だね」

「それはそうだろう。また得体の知れないことに巻き込まれるかもしれないんだから」

「大丈夫だよ、巻き込んだりしないって~」

「そ、そうなのか?」

「ああ、監督してくれればそれでいいさ……」

 紅蓮が呟く。

「え? ……おわっ⁉」

 廊下の窓ガラスが一斉にガタガタと揺れたかと思うと、一部が割れる。地震か? これは結構大きいな……って、そうじゃなくて、紅蓮たちを避難させないと……。

「来やがったな……」

「そうだね~」

「お前ら、窓から離れて……!」

「ブオアアッ!」

「はあっ⁉」

 俺は驚く、割れた窓から大きい火の玉のようなものが現れたからだ。こんな生物は見たことがない。その火の玉のようなものが再び咆哮する。

「ブオアアアッ!」

「な、なんだ⁉ 『怪奇現象』ってやつか⁉」

「……それでも良いですが、我々は『怪異』と呼んでおります……」

 暗がりから疾風が眼鏡を抑えながら現れる。

「は、疾風! お前もいたのか⁉」

「ええ、こういうのは私の担当なものですから……『変化』!」

「!」

「シャアアッ!」

「ええっ⁉」

 疾風が目の前で鎌のような爪をしたイタチに変化したので、俺は度肝を抜かれてしまう。
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