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帰還

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「……本当だったんだ…」

「ルーク、その話を誰に…」

「じゃあ、僕の母さんは…本当の母さんはケイトさんなんだね!
トレルおじさんの幼馴染だったっていうケイトさんなんだね…!」

ランディは黙って頷いた…



「……ひ……酷い!!
じゃあ、父さん達が……」

そのままルークは、子供のように声を上げて泣き崩れた。



「ルーク…」

「…さ…触るな!!」

ランディの伸ばした手をルークは乱暴に払い退けた。



「……僕はずっと騙されてたんだね…
聞いたよ…イアンさんも悪魔なんだってね…
オルジェスの母親も悪魔…
僕もオルジェスも、ずっと騙されてたんだ…!!」

「ルーク、俺達は騙してなんかいない…
確かにイアンさんは悪魔だが…オルジェスの母親が悪魔だというのも本当だがそれは…」

「もう良いよ!!」

ルークは、その場から駆け出した。



「待て!ルーク!!」

追いかけようと立ちあがったランディの瞳の中で、ルークの姿がみるみるうちに小さくなっていく。



「ルーク…」

追いかけるのを諦めたランディは、とぼとぼと家路に着いた。









「なんですって!!
一体、誰がルークにそんなことを…」

家に戻ったランディはキャシーに事の顛末を話した。



「今はルークも混乱していると思う。
だが、しばらくすれば、頭も冷えて戻って来るさ。
そしたら、もっとじっくりと話そうと思う…」

「放っておいて大丈夫かしら?」

「あぁ、大丈夫だ。
俺達は、ルークのことを実の子として育てて来たじゃないか。
そのことは、ルークにも通じているさ。
心配するな…」

そう言って、ランディはキャシーの身体を抱き締めた。
ルークの身近に最悪の者が忍び寄っていることを、この時のランディはまだ知る由もなかった… 
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