上 下
107 / 355
ゲームの始まり

17

しおりを挟む
ランディは大まかなことを父親に話すと、そのまま家を離れた。



(どうもおかしい…
いくら、出生の秘密を知ったからと言って、あのルークがあんなことをするはずがない…
しかも、オルジェスまでが関わっているとは…
まさか…またルシファーが…!!)

抑え切れない程のいやな胸騒ぎを感じながら、ランディはトレルの住む町を目指した。







「おかえり。
どうだ、昨夜は楽しめたか?」

「あぁ、思いっきり遊んだおかげで、いやな気分もすっかり吹っ飛んだぜ!
金もずいぶん使っちまったけど、良かったのか?」

「あぁ、構わん。
あれはおまえ達の金だ。
足りなけりゃまだ渡すぞ…」

上機嫌のオルジェスとは裏腹に、ルークは部屋へ入るなりベッドに倒れこみ、そのまま動かない。
そんなルークを横目で見ながら、オルジェスが声を潜めて囁いた。



「あいつはやっぱりショックが大きかったみたいだ。
酒なんか今までほとんど飲んだこともないと思うけど、昨夜はまるで自分を痛めつけるみたいに無茶な飲み方して…」

「そうか…
しばらくゆっくり眠らせてやろう…」

「トレルの所に行くんじゃないのか?」

「そう急ぐことはないさ。
ここからはすぐなのだろう?
しばらくこの町でゆっくりしてから行けば良いさ。
なんせ、トレルやイアンは今までみたいな手緩い復讐とは違うのだからな。
覚悟は出来ているのか?」

「……あぁ…俺なら今すぐにでも大丈夫さ。
そんなことより、今夜は、あんたも一緒に遊ばないか?
けっこう良い女もいたぜ。」

「そうか…
では、そうするか…」

ルークは結局夕方過ぎまで起きなかった。
目を覚ましてからも、彼は塞ぎこんだまま、口数も少ない。



「ルーク…えらく元気がないな。
やはり、妹のことがショックだったか…」

「あんなこと!…なんとも思っちゃいないさ!
さぁ、行こう!
今夜も思いっきり楽しんでやるぞ!」

口ではそう言いながらも、彼が少しも楽しんでいないことは誰の目にも明らかだった。
夜も更け、三人が宿を出てすぐ、背後から低い声が聞こえた。



「やっとみつけたぞ…」
しおりを挟む

処理中です...