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復讐の連鎖
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「おうっ!誰かと思ったらアズラエルじゃないか、久しぶりだなぁ!」
トレルは、少し戸惑った様子のアズラエルにはかまわず、その身体を抱き締めた。
「お…おいっ、トレル!
一体、どうしたんだ?」
アズラエルはトレルの身体を押し戻した。
トレルは肩をすくめ、おかしそうに笑う。
「トレル……何か、良い事でもあったのか?」
「……俺、そんなにおかしいか?」
「あぁ……明らかにおかしい。」
「酷いこと言うなぁ…まぁ、かけろよ。」
トレルは、相変わらず浮かれた様子で、アズラエルの向かい側に腰掛けた。
「……アズラエル…実は、俺……
女が出来たんだ。」
「女が…?なんだ、そんなことか…
しかし、君は常に女に不自由はしていないと思ったが…」
「ただの女じゃない…あんたも会ったらきっと驚くぜ!
今、買い物に出掛けてるが、じき戻るから、ぜひ会って行ってくれ。
運命の出会いっていうのは本当にあるんだなぁ…
まさか、こんなことになるなんて、ちょっと前までは予想もしていなかった…」
夢見がちに話すトレルに、アズラエルは冷やかな視線を送った。
「トレル…オルジェス達のことは気にならないのか?
君は、女に現を抜かして彼らのことを忘れたとでも言うのか…」
にこやかな笑みの宿っていたトレルの顔から、一瞬でその笑みが消えた。
「……もちろん、忘れたわけじゃないさ。
だが…ここの所は、彼女のおかげで忘れることが出来た。
いつも心の底にわだかまってた奴らに対する重い気持ちを、彼女はすっかり忘れさせてくれたんだ。」
満足げに話すトレルに、アズラエルは大きな音を立てテーブルに両手を付いた。
「君って奴は……!
君には父親としての自覚はないのか!?
こんな大事な時に、オルジェスやルークのことをすっかり忘れていただと…?
私には理解出来ん!」
「あんたは、本気で女を愛したことがないからそんな風なんだ!
もちろん、俺だって奴らのことを考えてるさ。
だが、俺は奴らのためだけに生きてるわけじゃない!
父親であると同時に、俺は俺という一人の男なんだ!
あんたみたいに、すべてを捨ててそれだけに生きるなんて出来ないね!」
アズラエルは、興奮を押さえるかのように大きく息を吸いこむ。
「……そうか…君の気持ちはよくわかった…
君は君の人生を好きに生きれば良いだろう。
オルジェスとルークのことは、私が何とかする…!」
トレルを睨みつけるようにして、アズラエルの姿はその場からかき消えた。
「おうっ!誰かと思ったらアズラエルじゃないか、久しぶりだなぁ!」
トレルは、少し戸惑った様子のアズラエルにはかまわず、その身体を抱き締めた。
「お…おいっ、トレル!
一体、どうしたんだ?」
アズラエルはトレルの身体を押し戻した。
トレルは肩をすくめ、おかしそうに笑う。
「トレル……何か、良い事でもあったのか?」
「……俺、そんなにおかしいか?」
「あぁ……明らかにおかしい。」
「酷いこと言うなぁ…まぁ、かけろよ。」
トレルは、相変わらず浮かれた様子で、アズラエルの向かい側に腰掛けた。
「……アズラエル…実は、俺……
女が出来たんだ。」
「女が…?なんだ、そんなことか…
しかし、君は常に女に不自由はしていないと思ったが…」
「ただの女じゃない…あんたも会ったらきっと驚くぜ!
今、買い物に出掛けてるが、じき戻るから、ぜひ会って行ってくれ。
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まさか、こんなことになるなんて、ちょっと前までは予想もしていなかった…」
夢見がちに話すトレルに、アズラエルは冷やかな視線を送った。
「トレル…オルジェス達のことは気にならないのか?
君は、女に現を抜かして彼らのことを忘れたとでも言うのか…」
にこやかな笑みの宿っていたトレルの顔から、一瞬でその笑みが消えた。
「……もちろん、忘れたわけじゃないさ。
だが…ここの所は、彼女のおかげで忘れることが出来た。
いつも心の底にわだかまってた奴らに対する重い気持ちを、彼女はすっかり忘れさせてくれたんだ。」
満足げに話すトレルに、アズラエルは大きな音を立てテーブルに両手を付いた。
「君って奴は……!
君には父親としての自覚はないのか!?
こんな大事な時に、オルジェスやルークのことをすっかり忘れていただと…?
私には理解出来ん!」
「あんたは、本気で女を愛したことがないからそんな風なんだ!
もちろん、俺だって奴らのことを考えてるさ。
だが、俺は奴らのためだけに生きてるわけじゃない!
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あんたみたいに、すべてを捨ててそれだけに生きるなんて出来ないね!」
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「……そうか…君の気持ちはよくわかった…
君は君の人生を好きに生きれば良いだろう。
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