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決意

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 「やっぱり来たのね!?
それで父さんは?
 父さんはどこに行ったの?」

 「どうしたんだ、サマンサ!
ランディがどうかしたのか!?」

 「実は……」

サマンサは、ランディの父親に、最近ランディの身に起こったことを話して聞かせた。
そして、手紙とは呼べない程の短いメッセージを残して病院から姿を消したことを…



「そんな大切なことをなぜ知らせてくれなかったんだ!」

 「ごめんなさい。
でも、父さんがおじいちゃんに心配をかけてはいけないって言って…口止めされていたの…」

 「馬鹿なことを…
それで…ランディはなぜ家には帰らず旅に出たんだ?
 家族となにかあったのか?」

サマンサは俯いたまま首を振る。



 「皆、仲良くやってるわ。
……でも…」

 呟くと同時に、サマンサの顔に暗い影が差す。



 「でも…?何か問題でもあるのか?」

サマンサは何かを考えるように束の間沈黙し、やがてゆっくりと口を開いた。



 「……おじいちゃん、このことは絶対に母さんには言わないと約束してくれる?」

 「あぁ、言わないよ。
どうしたんだ?」

 「父さんは、本当に命に関わるような酷い傷を負っていて…
なのに、そんな目に遭わせた犯人は見知らぬ男だったとしか言わなかった…
どんなに尋ねられても、覚えてない、よく見てない…そんなことしか言わないのよ。
でもね……私……もしかしたら、父さんは誰かをかばってるんじゃないかと思うの…」

 「かばう?
そんな酷い傷を負わせられてまで誰をかばうと……あ……
まさか…まさか、おまえ……」

 祖父が自分の推測に気付いたことを悟り、サマンサは深く頷いた。



 「……父さんが突然姿を消して旅に出たことを考えると…私、あれはルークがやったんじゃないかって思ったの。」

 「な、なんと!
……確かに、ルークはおまえに酷いことをした…そしてローリーにも…
しかし、ランディにまでそんな酷いことをしたというのか…
ルークが…あのルークが…」

ランディの父は、口許を押さえ、込みあがる感情に懸命に耐えた。
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