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決意

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 「ルーク!」

オルジェスは、頭から鮮血を滴らせるルークに駆け寄った。



 「……また喧嘩したのか?」

そう言いながら、オルジェスは、心配そうにルークの頭の傷の様子を見る。



 「たいしたことないって。
ちょっと油断した時に後ろから殴られたんだ。
……もちろん、こっちは倍にして返してやったけどね。」

オルジェスの手をうるさそうに払い除け、ルークはそのまま浴室に向かった。



 (ルーク…)

ルキティアの事件以来、ルークの荒れ方は酷くなる一方だった。
 直後の数日間は気分が高揚していたのか機嫌良く過ごしているように感じられたが、それ以後は塞ぎこむ様子が多く見られ、オルジェスはそのことをとても案じていた。




 *



 「大袈裟だな…このくらいなんでもないって言ってるのに…」

ルークが不満げな声を漏らす。



 「そんなわけにいくかよ。
 頭は怪我によったら大事になるからな。
おまえの身に何かあったら大変だ。
もしも、なにか具合の悪いことがあったらすぐに言うんだぞ。」

オルジェスは慣れた手付きでルークの傷の手当てをし、白い包帯を巻き付けた。



 「……ありがとう、オルジェス…
 ……ところで、ベルナールはどうしたの?」

ルークはあらためて部屋の様子を見渡した。



 「あぁ、どこに行ったのかは知らないけど、昨日から帰って来ない。
でも、心配はいらないぞ。
 何日かは戻らないって言ってたから…」

 「また狩りの相手でも物色してるのかな?」

 「そうかもしれないな…
ベルナールは、いつもあんまり詳しいことは話さないからな。
なんでも、決まってから話すんだ。」

 「……そうだね。
ま、彼に任せとけば問題はないだろう。
 彼は僕らとは違って頭が良いからね。
……ねぇ、オルジェス、酒はある?」

 「飲みたいのか?でも、その傷…」

 「こんなの大丈夫だって言ってるだろ。」

ルークの険しい表情に、オルジェスはそれ以上反対するのを諦め、酒瓶をテーブルの上に置いた。

 
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