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微笑みに潜む悪意

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 「トラニキアに行けるとは思ってもみなかったなぁ!」

マウリッツは、少し興奮気味に明るい声で呟いた。



 「君はそんなにトラニキアに興味があったの?」

 「当たり前だろ。
トラニキアは伝説の山なんだぜ。
それに、麓のあたりには誰だって行けるけど、今回は結界の中に入れるんだからな!
 結界の中だぜ、ディオ、わかってるのか?」

 「でも、探索隊でなくてもトレジャー・ハンターなら他国の者だって入れるんだろ?」

マウリッツは、その質問に呆れたような表情を向ける。



 「ディオニシス様、トレジャー・ハンターなら誰でも入れるというわけではありません。
 長い間、トレジャー・ハンターを続けていたという実績、今までにみつけた宝物などから審査を受け、その審査を通ったものだけが入山を許されるのです。」

 「しかも、その入山料は一般市民には手が届かない程、高額と来ている。」

マウリッツはそう言うと、意味ありげに微笑んだ。



 「マウリッツ様!それはそのトレジャー・ハンターの実績に繋がるものだからです。
トラニキアは山に慣れた者にとっても危険極まりない山です。
だからこそ、たくさんの修羅場をかいくぐり、数多くのお宝を発見した名うてのトレジャー・ハンターにしか出せない金額にしてあるのです。
つまりは彼らを守るためです。
しかも、下山の時にはそれはそっくりそのまま返されます。」

 「そんなこと、わかってるよ。
……おまえは冗談というものがまるでわかってないんだな。」

 「も、申し訳ありません!」

 焦って深く頭を下げるラビスに、マウリッツは小さく肩をすくめた。



 「そういえば、結界のことだけど…
それはどういう仕組みのものなの?」

ディオニシスの質問に、マウリッツとラビスは目を大きく見開いた。



 「ディオ…そういうこともすっかり忘れてるのか?」

ディオニシスは、苦笑いを浮かべながらゆっくりと頷く。
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