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崩れる塔

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「へぇ、魔導師にねぇ…
痛めつけられてたのはどんな男だったんだい?」

 「えっと、身長は俺より頭一つくらい小さく…そう、ダモンと同じくらいです。
 年齢は俺と同じくらいですが、俺より幼く見えました。
それから、髪は茶色、瞳も同じ色です。
トレジャーハンターとは思えないような上質な布を使った紫色のチュニック風の服を着ていました。」

マウリッツは、ディオニシスの容姿についてすらすらと話す。



 「あぁ…それなら聞いたよ!
なんでも魔導師の術に痛めつけられて死にかけてた若い男がいたけど、なんとか命を取りとめて、確かラーフィンに向かったって話だったよ。」

 「ラルフィン!?」

 突然耳にした自国の名に、マウリッツは驚いて声を上げた。



 「そうじゃない、ラルフィンじゃなくてラーフィンだよ。
あんたら知らないか?
 西の最果てにある小島の国だ。
 聞いたことないか?
 西側で最高齢の国王がいるあの国のことを…」

ダモンが横からマウリッツの間違いを指摘した。



 「あ、あぁ…思い出したよ。
ラーフィンだね。
そうか、彼は助かったんですか…
これで私達も胸のつかえが降りました。
アドニアさん…でしたっけ?どうもありがとうございました。」

 「ウォルト、旅行ついでにそのラーフィンって国に行ってみないか?」

 「え…あ…あぁ、そうだな。」

 「あんた達、ラーフィンに行きたいなら、もうじき西側へ行く馬車が来るよ。
セモリュナまでだけど、そこまで歩いて行くよりはずっと早いだろう。
 店を出て、通りをずーーっと歩いて行くと街道に出る。
そこで待ってたらすぐに馬車がやってくるよ。」

 「そうなんですか!ありがとうございます!
じゃあ、俺達、早速…!」

ウォルトとマウリッツは、慌しく席を立ち、そのまま店を後にした。
 二人の後ろ姿を見送るアドニアの口端がわずかに上がった。



 「ダモン、奴らはトラニキアでみつけたのかい?」

 「あぁ、そうだよ。」

 「どこから来たって言ってた?」

 「さぁ…田舎だとは言ってたけど、はっきりとは言わなかったな。」

 「そうかい…」



 店を出た二人は、道具屋で宝石を売って金に替え、さらに地図を買い求めると、すぐさま教えられた街道へ走った。
 程なくして馬車が到着し、ディオニシスの無事を知った二人は意気揚揚と馬車に乗りこんだ。
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